マーケティングにおけるスポーツコンテンツの価値 #02

「消費者の時間を奪え」バイエルン・ミュンヘンに学ぶ価値の伝え方【アビームコンサルティング 久保田圭一】

時間の奪い方は2通りに分かれる

 奪い方には2通りある。時間を奪っている何かを「代替するか」もしくは「便乗するか」である。

 通勤時間について考えてみよう。まず「代替する」とはどういうことか。

 電車で通勤している場合、多くの人がスマホを見ている状況が想像できる。でも、みんな本当にスマホを見たいのだろうか。他にすることがないから、見ているだけかもしれない。

 実は通勤と同等の時間があれば、運動がしたいと思っている人もいるかもしれない。そのように考えると、フィットネス器具メーカーが、鉄道会社に提案して、つり革を伸縮性のあるゴムに変更し、上腕二頭筋を鍛えられるサービスを提供する、というアイデアが浮かぶ。あるいは輪の部分を、握力を鍛えられるようにしてみるのも有効かもしれない。




 もしかしたら、運動不足のサラリーマンから人気が爆発し、鉄道会社のブランドイメージ向上に繋がるかもしれない。他の鉄道会社も取り入れ始めて、メーカーは利益を得ることができる。

 通勤時間を奪っているスマホから、通勤時間にも運動したいという気持ちに共感する新たなサービスの提供により、「代替」するということだ。   

 一方で、便乗するとは、通勤時間のスマホの例でいえば、通勤時間でよく使われるようなアプリ(情報アプリ、ゲームアプリなど)を開発したり、よく使われているアプリ内で広告を出す、ということである。便乗は既に広告として十分に行われている考え方ではあるが、時間という観点で考えれば、まだまだ便乗の余地は大きい。

 東急スポーツオアシスは、電車で行えるエクササイズ「コソ・トレ・イン」というプログラムを開発し、東急線に搭載されているTOQビジョンで放映している。乗客の時間を奪っているビジョンへの便乗により、広告を掲出しながら、観ている人にさらに同社の思いを伝えるため、電車でのエクササイズという代替により時間を奪おうと試みている。

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