マーケティングにおけるスポーツコンテンツの価値 #02
「消費者の時間を奪え」バイエルン・ミュンヘンに学ぶ価値の伝え方【アビームコンサルティング 久保田圭一】
スポーツが奪っている時間を活用せよ
時間を奪うことの重要性を説明したが、ここでスポーツに注目していきたい。みなさんはスポーツをする、あるいは観るために、どのくらいの時間を使うだろうか。少なくとも半日は使うだろうし、スポーツの種類や場所によっては丸1日使うかもしれない。
スポーツというのは、それだけの時間を奪えている。Jリーグであれば、毎週概ね20万人がスタジアムに足を運んでいるが、それだけの人数の時間を毎週奪っているのだ。
たとえば、サッカーの試合を観にいく当日に、我々が奪われている時間を場面別に分類してみよう。
- 気合をいれて準備する時間(ユニフォームを着たり、時間を確認したり、友達と連絡しあったり)
- 自宅から駅までの移動時間
- 電車でスタジアムのある駅までの移動時間
- 駅からスタジアムまでの移動時間
- スタジアムに到着して試合が始まるまでの時間
- 試合前半
- ハーフタイム
- 試合後半
- 試合が終わりスタジアムから駅までの移動時間
- 電車で自宅のある駅までの移動時間
- 駅から自宅までの移動時間
これだけの時間をスポーツは奪っている。さらに、この時間は、ファンの意識がチームに向いていて、ロイヤリティが高まっている瞬間でもある。
プロのリーグやチームはこのロイヤリティの高い時間をフル活用して、さらにロイヤリティを高める、あるいはお金を使ってもらう努力をすべきだろう。しかし、リーグやチームだけでどうにかなるものでもない。活用にあたって、企業との連携を考えた方がより良いサービスが提供できるはずだ。
一方で、企業の立場に立ってみれば、スポーツがそれだけの時間を奪えているなら、そこに代替するものを提供するか、便乗した方がいいということになる。
こう考えると、企業にとってスポーツの活用の幅は一気に広がるのではないだろうか。スポーツが奪っている時間とは、スポーツコンテンツの一つであり、活用の余地は大きい。