顧客満足を探究する~データと戦略の森から~ #06

Netflix、DAZN…激化するSVOD(動画配信)市場で「顧客満足」をつくる要因とは? JCSI(日本版顧客満足度指数)初調査を読み解く【青学・小野譲司】

前回の記事:
コストコは何を売っている? マーケターの手腕問われる「体験価値」デザイン【青学・小野譲司】
 マーケティングにおいて「顧客満足」が重視されるようになって久しい。顧客ニーズの複雑化と商品サービスの均質化に呼応するように多様化するデータ、戦略があふれかえるマーケティングの森から、企業やマーケターは目指すべき顧客満足をどう探し当て、推進すればいいのか。

 青山学院大学経営学部の小野譲司教授が、顧客満足度を業界横断的・継続的に調査するJCSI(日本版顧客満足度指数)調査のデータやさまざまな事例から顧客満足を学術的に紐解き、マーケターに科学的な視座と知見を提示する本連載。今回は激戦化するSVOD(動画配信)市場における「顧客満足」がどうつくられるか、JCSIによる初調査結果をもとに「顧客基盤」から分析し、LTV向上のヒントを探る。
 

競争が激化するSVOD市場と顧客体験の新しい競争軸


 2026年春に開催予定のWBC(World Baseball Classics)の試合が、Netflixで独占放映されるという報道は、エンタテインメント市場の変革を象徴している。かつて地上波で無料視聴できたスポーツコンテンツが、映画や海外ドラマと同様に、有料の動画配信サービス(SVOD:Subscription Video On Demand)の契約なしには観られなくなる時代が到来しつつある。

 現在、SVOD市場は、NetflixやAmazonプライム・ビデオといった巨大プレイヤーに加え、U-NEXT、Hulu、ディズニープラス、DAZNなど、独自の強みを持つプラットフォームが競い合う、多様な選択肢を持つ市場へと成長している。これらのサービスは、一本ごとの料金を気にすることなく、映画、海外ドラマ、アニメ、スポーツといったコンテンツを、スマートフォン、PC、テレビなどマルチデバイスで「いつでも、どこでも」視聴可能にし、顧客体験を急速に普及させている。

このSVOD市場に関して、日本のサービス産業に関する国内最大級の顧客満足度調査であるJCSI(日本版顧客満足度指数)調査が、初めて特別調査(動画配信サービス)として実施した調査結果が公開された。¹

図表1 動画配信サービスの顧客満足度指数:JCSI調査2025年の結果
※出所:サービス産業生産性協議会プレスリリース(2025年9月24日)

 JCSI調査は、3ヵ月以上の利用経験などのスクリーニング条件を満たした回答者を、調査会社のモニターからサンプリングし、各社300件以上の有効回答を得た調査結果をもとに、顧客期待から感動指数までのスコアを100点満点で算出している。JCSI調査は、サービス産業を広く調査対象としており、他業種と同じ計算方法でスコアを出している。顧客満足で1位のNetflixのスコアは74.1であるが、エンタテインメント分野の宝塚歌劇団は82.5、劇団四季は81.4、東京ディズニーリゾートは78.3である。「楽しい」「嬉しい」「感動した」「興奮した」などといった感情体験がどれくらいあったかをスコア化した感動指数については、Netflixは60.7であるが、上記3つのエンタテインメント上位は75~76点であり、スマホなどの画面上でコンテンツを体験する動画配信サービスは、劇場やテーマパークでの実体験の顧客満足度に比べると、カテゴリー全体としてやや低い傾向があることがわかる。

 SVODの競争相手は、この表に挙げられたような同業他社だけではない。動画を視聴するという意味では地上波テレビのほか、家庭用ゲーム、漫画、YouTube、TikTok、Instagramなど、あらゆる「スクリーン時間」を奪い合っている。さらに視野を広げてみると、劇場、コンサート、テーマパークなど、リアルなエンタテインメント市場とも競争または共存する関係にある。

 こうした複合的な競争環境において、各SVOD事業者がLTV(顧客生涯価値)の高い顧客をいかに獲得・維持するかが、市場における競争優位性を左右する。そのヒントを探るため、「顧客基盤」の観点から、顧客満足度や利用実態にどのような特徴が見られるかを探求することが、今回のテーマである。

 先述した顧客満足度指数をはじめ、定量データの分析では、性別、年代、居住地域などのデモグラフィックスによる分析が行われる。各層の違いを発見し、都内在住の20代女性をターゲットとした施策への示唆を得る、といった分析フローである。こうした顧客属性に基づいた分析は、大まかな傾向を探る上では有効な分析であるが、ライトユーザーをミドルユーザーやヘビーユーザーにどう転換するかといった顧客維持戦略の指針を導くためには、顧客の購買履歴や行動に注目する必要がある。それが顧客基盤の分析である。
 
¹JCSI調査の調査方法と調査結果の詳細は、サービス産業生産性協議会のプレスリリースを参照。https://www.jpc-net.jp/research/detail/007724.html
 

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