新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #25
欧米でも熱狂を生むLDH 世界への爆発的な広がりのカギになったのは“ファン”
2025/12/24
楽曲の世界的なバズから、ファンを定着させるためにやったこと
徳力 TikTokでのバズを一過性のものにせず、PSYCHIC FEVERのファンとして定着させていくために、どのようなことに注力されましたか。

note株式会社
noteプロデューサー/ブロガー
徳力 基彦 氏
noteプロデューサー/ブロガー
徳力 基彦 氏
石井 やはり、データを見て、盛り上がっているところには実際に行くということですね。それによって、TikTokの盛り上がりをリアルなものに変換していくことが重要だと思いました。
実は、パリでの大熱狂をスペインのジャパンカルチャーイベント「サロン・デル・マンガ・バルセロナ」の主催者が見に来ていて、今度はそのイベントからオファーがあり、2024年12月に出演しました。そうしたら、今度はそれをロンドンのプロモーターが見に来ていて、「ロンドンに来ることがあれば、ロンドンでファンミーティングを開催しませんか」と言われて。
徳力 すごい、そうやって業界内でいろいろつながっていくんですね。
石井 パリのJAPAN EXPOによって、PSYCHIC FEVERの評判が広がったことも大きかったようです。ロンドンでは、トランジットで1日滞在することになったタイミングでファンミーティングを開きました。決まったのは前日で、SNSによる告知が1時間前。急遽開催されたイベントだったのですが、約400人のファンが集まりました。
場所は、K-POPのCDを販売しているショップでしたが、これまた外で大合唱が起きて。ロンドンは敷居が高いと思っていたのですが、ロンドンでもこんなに人が集まるんだと驚きましたね。
徳力 サプライズでファンを集めるということが、世界中でできちゃうんですね。
石井 はい。Chartmetric社が発表している「トリガーシティ」をご存知ですか。音楽データ分析会社が、TikTokなどのSNSやSpotifyなどを分析して、「その都市でバズると世界に広がっていきやすい」とする場所をトリガーシティと呼んでいるのですが、その中で、東南アジアはトリガーシティが密集しているエリアで影響力が高いとされているんです。振り返ってみると、そこでファンダムをつくれて、楽曲がヒットしたからこそ、欧米に飛び火したのだなと思いますね。
徳力 今年2月に米国で回ったツアーはいかがでしたか。
石井 どの会場も現地のオーディエンスが非常に多くて、どこの会場のスタッフ方々も初めてアメリカでライブをするアーティストなのに日本人がほとんどいないことに驚いてました。それと、お客さんの約7~8割が黒人女性であることもすごいなと思いましたね。
徳力 しっかりヒップホップ文脈に刺さっているんですね。
ローカルに定着している日本企業とコラボしたい
徳力 日本の企業には、PSYCHIC FEVERのような海外に挑戦するアーティストとどのような協業やコラボレーションを期待されますか。石井 視線を世界に向けて、アーティストを目指してチャレンジする子どもたちを応援したり、夢をもってチャレンジすることを伝えたりするような機会を提供できたらいいなと思います。PSYCHIC FEVERのメンバーたちは、2013年にLDHが開催した「GLOBAL JAPAN CHALLENGE」という世界で活躍するアーティスト育成プロジェクトのオーディションに小学生のころ参加した子どもたちなんです。その時は3年間のニューヨーク留学メンバーには選ばれなかったのですが、夢を諦めずに日本で頑張って、今は世界を飛び回っています。ですので、日本から世界に挑戦するという夢や志を共感し合えるような取り組みができたらいいなと思っています。
徳力 そうですね。個人的には、アジアで活躍している日本人グループが、うまく企業とコラボしてくれると面白いなと思っています。今後そういう事例が増えるといいなと思いました。
石井 そうですね。日本のメーカーや総合商社は、何十年も前から世界中の国々で現地に入り込み最適化させることで成功していますから。そうした日本の企業から僕らが学ぶべきことは多いと思いますし、何かしらの協業ができればうれしいですね。LDHも、これからもっと挑戦を続けていきたいと思います。
対談後記
日本のアーティストの海外進出というと、日本での成功を足がかりに実施するものと思い込みがちですが、BALLISTIK BOYZやPSYCHIC FEVERの成功は、本気で海外のファンを増やしたければ、本気で海外に軸足をうつして活動することが重要である、という真実を改めて教えてくれる事例と言えます。
特に、LDHが当初予定していた欧米からの海外進出を一度断念し、東南アジアにターゲットを切り替えたことで、結果的に東南アジア経由でのフランスでのJAPAN EXPO出演や、USツアーなどの欧米進出に成功したことは、様々な示唆に富んでいると感じました。
LDHや石井さんが築いている海外でのネットワークや、成功体験は、間違いなく他の日本のアーティストの参考になるはずです。
今後のLDHの海外展開に引き続き注目したいと思います。(徳力基彦)
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