2026年マーケティング業界の展望 #02

トップマーケターが語る2026年の展望【山口有希子氏、西井敏恭氏】

前回の記事:
トップマーケターが語る2026年の展望【富永朋信氏、音部大輔氏】
 

AI時代だからこそ、意志ある人とのつながりが意味をもつ


山口 有希子 氏
パナソニック コネクト 取締役 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)(兼)デザイン&マーケティング本部 マネージングダイレクター DEI推進担当、カルチャー&マインド改革推進担当

 2025年はAIがマーケティング業務を大きく変えることを実感する1年でした。 当社でもAIに「聞く」だけではなく、AIエージェントを利用して仕事をAIに「頼む」ことがスタートしました。 これから本格的なAIエージェントの時代が来ます。

 かたや、AIに代表されるテクノロジーの進化による問題は、引き続きの大きな課題となっています。 広告詐欺やフェイクニュースを含むデジタル空間の健全性の問題に対して、オーストラリアでは16歳未満のSNS利用を禁止するなど、国が対策に取り組む事例も出てきました。

 日本では、総務省が「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」を6月に発行し、現場担当者の努力で対応するのではなく、企業経営者の責任を明確に訴え、レベルアップした取り組みが必要だと指摘しています。

 2026年には、アカデミア、メディア、ジャーナリスト、企業なども連携し、メディアの健全性を考える「Beyond Clicks! Media Trust Forum」が立ち上がります。

 AIの時代だからこそ、意志をもった人がつながることに大きな意味がある。 技術の進化の渦にただ巻き込まれるだけでなく、私たちがつくりたい社会に向けて、学び、議論し、行動していくことが、今こそ重要になっていると感じます。

 パナソニック コネクトのパーパスは 「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」。 AIが進化するこのマーケティングの現場から、いろいろな人とつながることで、社会を動かし、より良い未来へつなげていきたいと考えます。
 

AIを超える「意味」をつくる


西井 敏恭 氏
シンクロ 代表取締役社長

 2026年、消費者の購買行動は「検索」から、AIの推奨による「考えない消費」へとシフトするでしょう。拙著でも触れた「エフォートレス」や「ルーチン購入」は、ますます一般化していきます。こうしたAI化が進む一方で、私は対照的な「人間の熱量」を感じる企業の動向にも注目しています。

 象徴的なのが、ベトナム発の「Pizza 4P's」と栃木県那須発の「バターのいとこ」です。両ブランドは、地域課題や生産者と驚くほどストイックに、かつ泥臭く向き合い、本気のものづくりで熱狂的な支持を得ています。

 通常、これほどのこだわりは非効率であり、追求するほどコストは増大します。しかし、両社は中間流通を排除することで、生産者・製造者・消費者の「三方良し」を実現する、真のDtoCを体現しています。

 今後はAIが煩雑なオペレーションコストを劇的に下げることで、情熱あるつくり手がその純度を保ったまま、直接価値を届けられる時代が来るはずです。利便性を担うAIと、人間が介在する「情緒的価値」。これからのマーケターには、AIという強力な「脳」で利便性を極めつつ、自らは「目・耳・手足」となってデータに表れない「偏愛」や「こだわり」を拾い上げ、物語へと昇華させる力が求められます。
 

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