2026年マーケティング業界の展望 #09

トップマーケターが語る2026年の展望【藤原義昭氏、石戸亮氏】

前回の記事:
トップマーケターが語る2026年の展望【林直孝氏、島川基氏】
 

検索の終わり、指名買いの復権


藤原 義昭 氏
300Bridge 代表取締役

 2026年は、「自動化」から「自律化」への構造転換、すなわち「エージェンティック・エコノミー」の元年となるでしょう 。生成AIは単なるツールから、意思決定と実行を担う「自律型AI」へと進化し、商流はAI同士が交渉・取引する「機械対機械(Agent-to-Agent)」へと移行してゆきます。

 消費者は自ら検索する「認知負荷」をAIに委譲し、AIが購買代理人となり、この環境下では、SEOに代わり、AIに選ばれるための「GEO(生成エンジン最適化)」がマーケターの必須スキルとなりそうです 。AIは情緒ではなく、構造化データやリアルタイム在庫などの「ロジックとファクト」を読み取るため、企業は「AIが読めるデータ基盤」への刷新とシンプル化が急務です。

 一方で、機能比較がAIによって完結するからこそ、人間に「指名買い」されるためのブランドストーリーや熱量といった情緒的価値も逆説的に高まります 。 「AIのためのロジック」と「人間のための情緒」の高度な両立。これこそが、2026年を勝ち抜くためのアジェンダになるのではないでしょうか。
 

「本質を見極める眼」と「戦略的なフォーカス力」を


石戸 亮 氏
小林製薬 執行役員 DX本部長

 ここ数年、マーケティング実務から距離を置いておりましたが、2024年、私は近年稀に見る深刻な企業不祥事の渦中に身を置きました。危機管理事務局の再構築に加え、100年以上続く創業家依存体制からの新体制移行という歴史的局面で経営企画を管掌しました。2025年には60に及ぶ新規事業や10年で7倍に増えた社内システムの抜本的見直し(選択と集中)を推進し、真に必要な領域へリソースを再配分する構造改革に着手しました。

 平時とは異なる組織力学や社会からの厳しい視線に直面する中で、物事の「深い本質」に触れる強烈な体験をしました。現代はリスクもチャンスも常識も無限に広がり、従来の枠組みを超えた判断が求められる時代であると実感しています。

 特にマーケティングはデジタルや生成AIの飛躍的な進化で、「やること」が無限に広がっています。しかし手段が民主化され何でもできるからこそ、2026年に重要なのは無自覚な拡散ではありません。

 これからのマーケターやビジネスパーソンに真に求められるのは、膨大な選択肢から「本質を見極める眼」と、最大成果のためにあえて「やらない」を決断する「戦略的なフォーカス力」ではないでしょうか。テクノロジーの大波に流されず、主体的に選び取り使いこなす意志こそが、次代を拓く鍵になると強く感じています。
 

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