TOP PLAYER INTERVIEW #98

日清食品ダイレクトマーケティング 佐藤真有美社長が語る分社化の背景と年商100億円への成長戦略

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 マス広告や量販店流通を主軸に、即席麺市場で圧倒的なシェアを誇る日清食品から2025年4月、DtoC専門企業として分社化した「日清食品ダイレクトマーケティング」。EC専用商品の開発から、こだわり抜いたクリエイティブ制作まで、日清食品内の独立子会社としての自由度の高さと大企業の強みを掛け合わせながら、数年以内の年商100億円達成を目指して成長を加速させている。

 かつてはごく小規模だった日清食品のEC事業。それが、売上が前年比800倍を記録するヒット商品が生まれるなど、分社化するほどに成長した背景には、日本マイクロソフト出身でECマーケティングの専門家として2014年に入社した佐藤真有美氏の存在があった。本稿では日清食品ダイレクトマーケティング 代表取締役社長に就任した佐藤氏にインタビューし、「世界一面白いダイレクトマーケティング」をスローガンに掲げる同社の事業戦略に迫った。
 

「話題づくり」の部署が売上26倍に


―― 佐藤社長は、日清食品ダイレクトマーケティングの前身である日清食品のダイレクトマーケティング部の部長を務めておられました。DtoC専門企業として分社化した経緯を教えてください。

 当社はもともと、日清食品内の一部署として2016年にスタートしました。事業内容や目的自体は、立ち上げ当初から現在までほとんど変わっていません。ただ、商社や流通に卸すメーカーとしてのビジネスと、お客さま一人ひとりに直接販売するダイレクトマーケティングでは、会計の考え方や活動内容も大きく異なります。これまでは日清食品の社内規程や基幹システムの枠組みの中で事業を進めてきましたが、事業の成長に比例して、メーカーとしてのビジネスモデルに合わせるための調整も年々大きくなっていきました。そうした状況を踏まえ、メーカーの一部署として運営し続けるより、通販事業に適した会計管理や運営体制のもと、成長戦略を描いていくべきという考え、分社化を決断しました。

――当初、DtoC部門は社内ではどんな位置づけだったのですか。

 私が通販事業を担当しはじめた当時は、「お客さまが全国どこでも買える即席麺を、あえてECで購入する意味は何か」を模索していました。地方限定商品や販路限定商品も含め、すべての商品を購入できるようにするなど、さまざまな取り組みを行っていましたが、なかなか思うような成果にはつながりませんでした。企画が成功してSNSで話題になったとしても、一般流通で生まれるモンスター級の売上と比べると、まったく目立たないのです。社内でも「話題化のために頑張ってね」という感じで、会社の利益に貢献できていないのではないかと、肩身の狭い思いをしていました(笑)。
 
日清食品ダイレクトマーケティング 代表取締役社長
佐藤 真有美 氏

大学卒業後、出版ベンチャー、外資系紙メーカーを経て、25歳で日本マイクロソフトに入社。社内向けのイベント、リサーチ、プロダクトマーケティングを経て、インターネット黎明期にEC担当になる。2014年、日清食品に入社し、米国向けECの立ち上げを担当。2016年3月より日本向けECをリードし、2023年3月ダイレクトマーケティング部部長。主力商品に加え新ブランドのEC戦略を統括し、2025年4月より現職。

―― 転機はいつ訪れたのでしょうか。

 2019年から、日清食品グループの基礎研究の成果を生かした健康食品や美容商品を、通販限定商品として発売したことが大きな転機になりました。さらに2020年からは、コロナ禍を背景に通販の利用が拡大し、即席麺の売上も伸びたことで、事業全体が成長軌道に乗り始めたと感じていました。

 なかでも、2020年に発売したサプリメント「トリプルバリア」は非常に象徴的な存在になりました。それまでは全く別のブランドとして販売していた商品を、研究開発からリスタートし、「トリプルバリア」として生まれ変わらせた結果、売上は前年比で約800倍にまで成長しました。新商品がようやく花開き、「売上の柱が1本立ってきた」と実感した瞬間でした。

―― 「トリプルバリア」はなぜそれほど成功したのですか。

 「トリプルバリア」は、商品設計から競合との差別化、コピー開発、世界観づくりまでを徹底的に考え抜き、2020年11月に発売した商品です。既存の商品と成分は似ていても、機能の打ち出し方を大きく変えました。食事前に飲むことで、脂肪・糖・塩分という「三大悪」を吸着し、便として排出するという特長があり、それまで世の中になかった価値や機能を訴求しました。プロモーションについては、お笑いタレントを起用したテレビCMを展開することで、明るいイメージを打ち出しました。商品を手に取る心理的なハードルを下げたかったのです。

 発売告知のリリースを出してすぐに計画を上回る注文が入り、わずか3日で欠品するアイテムが出るほどの反響でした。予想を超える勢いに、「これはターニングポイントになる」と確信しました。

 その後、事業買収などを経て他ブランドの商品も拡充し、分社化する時点では、2016年と比べて売上規模は約26倍にまで成長していました。

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