TOP PLAYER INTERVIEW #98

日清食品ダイレクトマーケティング 佐藤真有美社長が語る分社化の背景と年商100億円への成長戦略

 

「全ブランドを諦めない」


――「数年以内に年商100億円を目指す」としていますが、具体的な道筋を教えてください。

 一般的に通販事業では、主力となる商品を軸に事業を拡大していくケースが多いと思います。一方で当社は、特定のヒット商品に頼るのではなく、多くのブランドを着実に成長させていく方針を明確にしています。年商100億へのロードマップも、各ブランドが何%ずつ伸びれば達成できるのかを積み上げて設計しています。

 通販のマーケティングでは、「新規獲得」「F2転換」「リピーター育成」「CRM」など、機能ごとにチームを編成し、全ブランドを横断して担当する体制をとることが一般的だと思います。そうすることで売れる商品にリソースを集中でき、専門スキルが育ちやすいというメリットがありますが、どうしても売上が一部の商品に偏ってしまうデメリットもあります。

 当社では、あえてブランドごとにチームを縦割りし、担当者は「自分のブランドをどう伸ばすか」を考える体制をとっています。これは、多くのブランドを着実に成長させていくための方針であり、ブランドオーナーシップを重視する日清食品の企業文化を受け継いでいるからです。

 実際、通販業界からキャリア採用で入社した社員からは、売上が伸び悩む局面になると「機能で役割を分けたほうが良いのではないか」と提案されることもあります。それでも私たちはブランドオーナーシップを尊重し、伸び悩みの背景にある原因を徹底的に突き詰めるようにしています。

 もちろん、個々の努力だけではどうにもならない外部環境の要因もあります。その場合は目標を調整することもありますが、不公平感やモチベーション低下につながらないよう、組織内のコミュニケーションには気を配っています。
  

――「売上が伸びない原因を徹底的に突き詰める」とのことですが、挽回や成長につながるフレームワークのようなものはあるのですか。

 正直なところ、決まったフレームワークはありません。大きな期待を背負って分社化した分、理想も高く、思うように数字が伸びないと、やはり落ち込むこともあります。ただ、良かった時と悪くなった時を比べても、必ずしも明確な法則が見えてくるわけではありません。たとえば、セールを実施する、割引率を上げる、広告費を増やすといった施策は、売上が伸び悩んでいる時につい選びがちな打ち手です。しかし、それが本当に本質的な原因への対策になっているかどうか、常に冷静に見極める必要があります。

 ダイレクト通販事業はデータの宝庫です。「どこまでクリックされ、どこで離脱しているか」を徹底的に洗い出すこともありますし、ユーザー単位、ブランド単位、商品単位、施策単位でデータから分析し、わずかな変化に気づくことを重視しています。小さな要因を見つけたら、そこに狙いを定め、小規模で仮説検証を繰り返していくイメージです。

―― 2023年にライオンから「ラクトフェリン」事業を譲受された狙いは何でしょうか。

 「ラクトフェリン」のお話をいただいた当時、当社では「完全メシ」をはじめとする健康志向の商品群に力を入れていました。「ラクトフェリン」には、質の高い健康商品に対する意識が高い顧客基盤があり、そうした顧客に対して広告などを経由せずに直接アプローチできる点は、大きな魅力でした。

 さらに、「ラクトフェリン」は、通販専業ではないメーカーが、何十年にもわたって堅実に自社通販を続け、成果を上げてきた成功事例で、私たちにとってライオンさんは「憧れの存在」でもありました。その事業が譲渡されると聞き、ぜひ当社で引き継ぎたいと考えました。

――「全ブランドを諦めない」方針とのことですが、マーケティング戦略上、特に重要なブランドは何でしょうか。

 すべて重要ですが、特に重視しているのは成長率と利益率の前年比です。売上が伸びていても、利益率が低い商品もあります。ただ、幸いなことに「成長していなくて、かつ利益も出ていない商品」はありません。

 「完全メシ」シリーズは、成長率が大きいブランドのひとつです。食品メーカーとして長年培ってきた技術力や開発力をベースに、栄養バランスが整っているだけでなく、普段の食事と変わらないおいしさを実現しています。忙しい方々に愛用いただいており、今後もさらなる成長が期待できます。

 もうひとつ、「ヒアルモイスト」も通販限定の美容商品として急成長しています。特許を取得した日清食品グループ独自の乳酸菌を配合したサプリメントで、私自身が愛用した実感をもとに商品化しました。本格派のインナーケア商品で、美容業界の方や美容ジャーナリストの目に留まったことでヒットしました。美容商品の成功は、日清食品にとっては全く新しい市場の開拓でもあり、非常に嬉しく思います。

 商品改善については、お客さまの声をダイレクトにいただけるのがDtoCの強みです。顧客アンケートを匿名制で実施し、お客さまの本音を引き出す工夫をしています。そうして得られた意見を、商品やサービスの改善に生かしています。

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