マーケティング・ビジネス課題を解決する学術研究 #09

巨大プラットフォームに乗ってしまっていいのか? 経営学者たちの「6つの提言」から採るべき方向を見定める

 

「プラットフォーマーとどう向き合うべきか」提言①~③


 「プラットフォームとどう向き合うか」について、経営学者たちによる6つの提言を紹介しましょう。

提言① (Van Alystyne et al. 2016)

 1つ目の提言は、ボストン大学のマーシャル・W・ヴァン・アルスタイン教授とテュレーン大学のジェフリー・G・パーカー教授、プラットフォーム・シンキング・ラボ創業者CEOのサンギート・ポール・チョーダリ氏らのものです。

 彼らは、従来型の市場にプラットフォームが参入した場合、「プラットフォームがほぼ確実に勝利する」と断言しています。したがって、従来型企業は正面から対抗するのではなく、自らプラットフォーム戦略を取り入れ、(1)資源の「管理」から「統合」へ、(2)内部の「最適化」から外部との「相互作用」へ、(3)「顧客価値」から「エコシステム価値」へ、の3つの根本的な転換を行うべきだと主張しています(Van Alystyne et al. 2016)。
 
  1. 資源の「管理」から「統合」へ

    従来の競争戦略(リソース・ベースド・ビュー)が、不動産や知的財産といった希少で模倣困難な資産を自社で所有し、「管理」することを優位性の源泉としたのに対し、プラットフォームにおいては、「コミュニティ」とメンバーが保有する資源が最大の資産となる。そのため、企業は自ら資産を抱え込むのではなく、外部の部屋や車、アイデアといった資源をつなぎ合わせ、それらを「統合(オーケストレーション)」する役割へ転換する必要がある。

  2. 内部の「最適化」から外部との「相互作用」へ

    従来型の企業が、調達から販売に至る内部のバリューチェーン全体を効率化し、「最適化」することに注力してきたのに対し、プラットフォームは、外部の生産者と消費者の間で生じる「相互作用」を促進することで価値を創出する。ここでは内部プロセスの管理よりも、外部の参加者をプラットフォームに惹きつけ、円滑な取引ができるよう統治(ガバナンス)する能力が不可欠となる。

  3. 「顧客価値」から「エコシステム価値」へ

    従来型ビジネスは、直線的なプロセスの終点にいる個々の「顧客」に対する製品・サービスの価値最大化を追求するが、プラットフォームは、円環的でフィードバック主導のプロセスを通じて、拡大し続ける「エコシステム全体」の総価値を最大化することを目指す。時にはネットワーク効果を高めるために、一方の利用者層を補助して、もう一方を誘引するなど、全体最適の視点が求められる。

 また、従来のように参入障壁(moat)を築く防御策は、見直す必要があるとも論じています。障壁を取り除き、外部ネットワークを資産として活用しつつ、アクセス権限やルールを適切に管理する新たなリーダーシップが不可欠です。この新ルールを学ばなければ、企業は市場からの退場(exit)を余儀なくされると警告しています。

提言② (Wade et al. 2018)

 2つ目の提言は、IMDビジネススクールのマイケル・ウェイド教授、シスコ・デジタイゼーション・オフィスのディレクターを務めるジェフ・ルークス氏、ジェイムズ・マコーレー氏、アンディ・ノロニャ氏らのものです。

 彼らは、従来型企業はプラットフォームがもたらす脅威に対し、以下の4つの戦略を駆使して向き合うべきだと主張しています(Wade et al. 2018)。
 
  1. 収穫戦略

    防衛的な戦略であり、破壊的脅威にさらされた事業から最大限の価値を引き出すことを目的とする。破壊者の動きを鈍らせる法的措置やマーケティングなどの「遮断戦術」を用いつつ、組織再編や業務効率化、コスト最適化を行う。デジタル技術は変革のためではなく、既存事業の延命や利益率維持のために活用する。事業の衰退を認識し、撤退や転換までの期間、残存する利益を確保し続けるためのアプローチである。

  2. 撤退戦略

    防衛的な戦略であり、事業維持コストが利益を上回る場合、その市場から離脱し、破壊者が参入しにくいニッチ市場へ避難するアプローチ。特定の顧客ニーズに集中し、高度なカスタマイズなどを提供することで収益を確保する。これは敗北ではなく、戦略的な選択であり、衰退する中核事業からリソースを引き揚げ、新たな成長機会であるバリュー・ベイカンシー(価値の空白地帯)へ投資するための準備段階としても機能する。

  3. 破壊戦略

    攻撃的な戦略であり、デジタル技術を駆使して「コスト・体験・プラットフォーム」の新たな価値を創出し、市場に変革を起こすアプローチ。既存企業が自らの中核事業を破壊する(カニバリゼーション)リスクを冒してでも、顧客にとっての価値を再定義する。従来のバリューチェーンに固執せず、顧客が真に求める成果(バリュー)を提供することに注力し、自らが破壊者となって市場のルールを変えることを目指す。

  4. 拠点戦略

    攻撃的な戦略であり、破壊によって生じた市場のバリュー・ベイカンシーを占領し、競争優位を維持することを目的とする。単に破壊するだけでなく、その成果を持続させるため、「新設(自社開発)」「買収」「提携」といった手段を用いて、コスト・体験・プラットフォームの価値を複合的に提供する。これにより参入障壁を築き、新たな破壊者が現れるまでの期間、市場利益を最大化する。

 そして、企業はこれらの戦略を固定的なものではなく、市場の変化に応じて柔軟に使い分ける「デジタルビジネス・アジリティ(俊敏性)」を持つべきだと論じています。

提言③ (Cusumano et al. 2019)

 3つ目の提言は、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院のマイケル・A・クスマノ教授と英サリー大学デジタルエコノミーセンターのアナベル・ガワー教授、ハーバード・ビジネス・スクールのデビッド・B・ヨッフィー教授らのものです。

 彼らは、既存企業がプラットフォームに向き合う選択肢として、「競合プラットフォームへの所属」「プラットフォームの買収」「プラットフォームの自社構築」の3つを提言しています(Cusumano et al. 2019)。
 
  1. 競合プラットフォームへの所属

    Amazonのような巨大プラットフォームに参加することにより、その集客力や物流網が活用できる一方で、プラットフォーム自体が競合化し、利益を奪われるリスク(ホールドアップ問題)がある。これに対し、タクシー業界がUberに対抗して別の配車アプリを支援したように、競合プラットフォームと組んで支配的プラットフォームの独占を防ぐ戦い方も有効である。

  2. プラットフォームの買収

    自社開発の時間やスキルがない場合、ウォルマートがJet.comを買収したように、外部のプラットフォームを買収して技術や人材を取り込むことが有効な選択肢となる。これは「時間を買う」戦略である。

  3. プラットフォームの自社構築

    最も困難だが、最大の利益を得られる可能性がある。GEの事例のように、既存の組織文化の壁や「鶏か卵か」問題に直面するが、自社需要の活用や外部開発者の誘致によってエコシステムを育てる努力が求められる。

 結論として、変革は痛みを伴いますが、何もしないよりは実験と戦略修正を繰り返し、挑戦し続けるべきだと主張されています。

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