日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #64

初恋の相手が犬に。広瀬すず主演 マネードクターのCMに見る「意味不明」のパワー

 

元祖「意味不明」パワー:「ゴリラがひたすらドラムを叩くだけ」英国のチョコレートのCM


 “意味不明“パワーで話題を呼び、売上アップにも貢献したとされるテレビCMの元祖とも言うべき事例が、カンヌライオンズ2008の超話題作である「Gorilla」(デイリーミルク・チョコレート)by キャドバリーです。このテレビCMは、フィルム部門グランプリ等を受賞しました。

 ごくごく簡単に言うと、ゴリラがドラムを叩いているだけ、の90秒のテレビCMです。商品は、キャドバリー・デイリーミルクというチョコレート。CMのメイン・メッセージは、商品スローガンでもある「一杯半たっぷりの楽しさ(a glass and a half full of joy)だけで、CMの最後の最後に商品パッケージと一緒に出てきます。後は、ひたすらゴリラがドラムを叩いている姿が映し出されるのです。

 CMは、ドラマー兼シンガーとして有名なフィル・コリンズの名曲に乗って始まります。最初に「a glass and a half full production」の文字が出て、商品スローガンをもじった架空の制作会社によるショートフィルムのような作り。その後、ドラムセットに陣取ったゴリラが映し出され、瞑想するように息を吸い込みます。曲が最初の盛り上がりを見せ、ドラム演奏が始まるちょうどそのタイミングで、おもむろにドラムを叩き出すゴリラ。カメラは、気持ちよさそうにドラムを叩くゴリラを捉えたまま、エンディングの商品パッケージへと続きます。それだけ、です。何がどうしてチョコレートのテレビCMになっているのか、まったく”意味不明“です。

 それでも、このテレビCMは、イギリスで大ヒットしました。キャドバリー・デイリーミルクは、何十年も売られている製品。日本で言えば明治ミルクチョコレートや森永ミルクチョコレートのような存在で、売上の劇的変化は期待できない状況でした。それにもかかわらず、1割近い売上アップを記録し、キャドバリーへの好意度も大幅にアップしたといいます。

 当時の広告エージェンシー側でプランニングをした人の記事を読んだことがあるのですが、「製品のメッセージは、『通常より多い、1杯半分たっぷりのミルク=Joy』なので、そのメッセージをこうした形、『通常より多い、たっぷりのJoy』で表現した」という趣旨の発言をしていました。

 一見”意味不明“でも、見る人がどこかで商品・サービスとの繋がりを感じてくれるようにできれば、かえって成果に結びつく、という例だといえます。
 

キャドバリー デイリーミルク・チョコレート「Gorilla」


 ご自身が担当する商品・サービスのコミュニケーション課題においても、「とにかく分かりやすく」ということを唯一で最上の解決策と決めつけずに、時に“意味不明”のパワーを上手に活用してみようとしてみては、いかがでしょうか。
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