新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #26
Netflixは日本の映像業界の何を変えたのか?『シティーハンター』 『地面師たち』『イクサガミ』のプロデューサーが語る「挑戦への覚悟」
2026/02/24
「縮小再生産」を防ぎ、「統計学を更新」していく
徳力 予算についてはどのように獲得されるんでしょうか?日本作品は、アニメは早くから世界的な評価を得ていましたが、実写については「本当に必要なのか」という議論も初期にはあったと聞いています。米国本社はリスクをとった投資をなかなかしてくれなそうですが、どう捻出するんでしょう。
髙橋 難しいご質問です(笑)。当然、ビジネスなので、坂本も言うように、一つひとつ実績を積み上げることが重要です。『全裸監督』『今際の国のアリス』『浅草キッド』…。それぞれが日本と世界のお客さまにちゃんと届いて、しかもクオリティ含めて大きな反響を生み出す。そのことを社内はもちろん、ユーザー、業界の方々に認めていただいた。その積み重ねが、次の大きなチャレンジにつながっているのは間違いないです。
「このジャンル・このキャスト・この制作費でつくればリクープできる」という算段が、プロデューサーであれば過去のトラックレコードからある程度、弾き出せます。でも、「じゃあその範囲でできるものをつくり続ければ盤石か」というと、それでは「縮小再生産」になってしまいます。
徳力 過去をもとに予想するだけでは、その水準を超えられないということですよね。

note noteプロデューサー/ブロガー
徳力 基彦 氏
NTTやアジャイルメディア・ネットワーク等を経て、現在はnoteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNS活用のサポートを行っている。個人でも、日経MJやYahooニュース!個人のコラム連載等、幅広い活動を行っており、著書に「普通の人のためのSNSの教科書」、「アルファブロガー」等がある。
徳力 基彦 氏
NTTやアジャイルメディア・ネットワーク等を経て、現在はnoteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNS活用のサポートを行っている。個人でも、日経MJやYahooニュース!個人のコラム連載等、幅広い活動を行っており、著書に「普通の人のためのSNSの教科書」、「アルファブロガー」等がある。
髙橋 たとえば『全裸監督』のような題材を、従来の日本映画の実績の数字に準じてやろうとしたら、たぶん「上映時間2時間の作品に対して、制作予算は数千万円でつくってください」ということになります。しかし、それではあのクオリティは出せない。難しい題材だったとしても、そこに高いクリエイティブビジョンが伴った時、どれほどのクオリティまでチャレンジし、過去を超える挑戦をするか。そこにはプロデューサーの実績と覚悟が重要になります。私や坂本は「統計学を更新していく」という言い方をしています。実績を踏まえて更なる高みへの階段を登る後押しをしてくれる。新しい挑戦とそのリスクを許容してくれるのがNetflixです。その意味では本当に自由な気風があると思います。
徳力 私は、Netflixが「日本作品はグローバルでも通用する」と証明してくれたおかげで、日本の映画業界全体が良い刺激を受けたと考えています。『今際の国のアリス』を手がけたROBOTさんの映画『ゴジラ-1.0』は米国でもヒットしましたし、歌舞伎という日本ですらニッチなジャンルを扱った映画『国宝』は、トム・クルーズが絶賛するほど海外で話題になりました。ドラマシリーズ『極悪女王』のプロレスシーンの迫力は、『国宝』の歌舞伎シーンのリアリズムに通じると思います。予算をしっかりとって、役者の方々にもしっかり稽古の期間をとってもらうのは、一種のNetflix方式と呼べるのではないでしょうか。「やればできる」と証明してくれたのがNetflixさんだと、私は勝手に認識しています。
髙橋 日本の映画業界の躍進、素晴らしいですよね。『国宝』の李相日監督は、私も一緒に仕事をしたことがあります。あのように信念を持つ監督、日本のクリエイターや技術が、作品を通して海外でも評価されるのは、映画界出身者としてすごく嬉しいです。
クリエイティブ先行で生まれた企業コラボ
徳力 予算と関連して、広告についても少しお伺いしたいです。髙橋さんが手がけた映画『シティーハンター』で、Uber Eatsとコラボしていたのには驚きました。劇中で主人公の冴羽獠が配達パートナーに扮し、Uber Eatsも「シティーハンター観るなら、Uber Eatsで、いーんじゃない?」とCMを展開しました。あれは、どういう経緯で?
髙橋 『シティーハンター』は「現代の新宿にシティーハンターがいたら」というコンセプトで実写化した作品です。その中で、「冴羽獠というキャラクターが敵陣でどうおちゃらけたら一番面白いか」をクリエイティブ的に追求した時に、主演の鈴木亮平さんから出たアイデア「ウーバーイーツでーす!」がハマったんです。編集でも生き残り、Uber Eatsさんとのやりとりが生まれ、「こんなに面白く取り上げていただけるなら」とコラボが実現しました。
徳力 現場から生まれたアイデアだったんですね。あれを見て「同じことをやりたい」と考える企業はありそうですが、いわゆるプロダクトプレイスメント的なことはされない方針ですか?
髙橋 あくまでもクリエイティブファーストです。クリエイティブ的に作品を高められるのであれば、協業も生まれるかもしれませんが、もちろん広告ありきではなく、「まずはその世界観を視聴者に楽しんでいただけるか」を重視します。
徳力 なるほど。劇中の展開は広告ではなく、あくまでクリエイティブの一部ですが、私は個人的に、一種の新しい広告の形を見た気がしました。JR東日本が特別協力した映画『新幹線大爆破』も広告ではないですが、間違いなく鉄道ファンが増えそうですよね。
※後編に続く:Netflix『イクサガミ』プロデューサーが目指す「時代劇のアップデート」とは?「挑戦」がつないだ数奇な縁」
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