CATCH THE RISING STAR #36

カンロ若手マーケターが「ピュレグミ」に落とし込むインサイト 文化人類学で鍛えた「とことん突き詰める力」が武器

前回の記事:
「万博レガシービジネス」に取り組むBIPROGYの若き事業開発担当が目指す、Slerがエンドユーザーに直接貢献する未来
 企業におけるマーケティングの役割と重要性が増す一方、「マーケターの仕事はAIに奪われるのでは」とも囁かれる昨今。そんな変革期にマーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。

 次世代を担う「ライジングスター」にフォーカスし、彼らの多彩な思考や行動を探ることでマーケティングの近未来を照射するAGENDA Note.の本連載。36回目となる今回は、カンロに入社して5年目のマーケター・嶋田朱里氏に取材。激戦化するグミ市場で、文化人類学のフィールドワークで培った「とことん突き詰める力」を武器に、嶋田氏が追い求めるインサイトと「トキメキ」とは。
 

受験生の「お守りがわり」に


―― カンロに入社した理由や、これまでの業務内容を教えてください。

 私が就職活動をしたのはコロナ禍の真っ只中で、緊急事態宣言が出るなどして社会が暗く、「なんとなくしんどいな」と感じていました。ただ、昔からすごく好きだったお菓子は、どんな時も人を前向きに、楽しい気持ちにさせてくれます。自分もそこに携わりたいという思いを軸として就活を続け、最終的に決め手になったのは、母がずっと食べていた「ピュレグミ」でした。私自身も遠足に持って行ったりして、すごく親しい印象を持っていた企業だったので、カンロに入社を決めました。

 入社後は町田にある支店で営業を3年半経験し、小売業さんとの商談や、店舗での販促提案・売り場づくりをしました。希望していたマーケティング本部に配属されたのは2024年秋のことです。ピュレグミとマロッシュのブランドチームに入り、市場分析やプロモーションなどの施策立案のほか、インスタグラムなどブランドのSNS運営も担っています。
  
カンロ マーケティング本部 マーケティング戦略部
嶋田 朱里 氏

―― マーケティング本部を希望したのは、なぜでしょうか。

 大学の頃に文化人類学を専攻していたこともあって、フィールドワークをして「いろんなものを見て、深く知りたい」という思いが強いんです。営業をしていて、「売れる商品と売れない商品の違いはなんだろう」「そもそもどうしてこの商品はつくられたんだろう」「このブランドが長く愛されているのはなぜなんだろう」といった疑問が次々と湧いてきました。買い手の目線に加えて、つくり手の思いや考え方も知りたくなったのです。商品の源流をたどりたいという思いからマーケティングに手を挙げました。 

―― 主力ブランド「ピュレグミ」のマーケティングでは、どのようなことを心がけ、具体的にどんな施策を展開されていますか。 

 ターゲット層が自分に近いブランドなので、やはり自分を含めて同年代の人々がどんなことに関心を持ち、どんな考え方をしているか、常に把握するようにしています。友人の会話や街中の広告を観察し、ショッピングはネットだけでなく実店舗に行くことで最新のトレンドや売場の構成を見たりします。あらゆるジャンルの口コミをチェックするのも癖になっているかもしれません。もちろん、市場調査やデータから消費者動向を定量的に分析し、グループインタビューなどを通して直接的な声をいただくこともあります。 

 商品開発やプロモーションに際しては、社会情勢を踏まえて、ターゲットの心の中にどんなインサイトがあって、ピュレグミとしてそこに何をできるかということを、チームみんなで議論したり、考えたりしています。 

 たとえば、ピュレグミは主に20~30代の女性をターゲットに想定していますが、私が関わった冬限定の「おまもり梅」は、受験生を応援する文脈を持った商品です。発売開始からすでに5年ほど経つ恒例商品になっていますが、最新のインサイトを踏まえて、デザインや施策を練り直しています。 

 頑張る受験生を励ますなら、普通はエナジードリンクや栄養価の高い食べ物が思い浮かぶかもしれませんが、最近の受験生には「寄り添ってほしい」「気持ちを前向きにしてほしい」というインサイトがあります。ピュレグミに何ができるかを考えた時に、今回は運気を上げるラッキーモチーフを「隠し味」としてデザインに盛り込みました。よく見ると、水引が描かれていたり、他にもメッセージが隠されていたりして、ピュレグミらしい遊び心があふれた商品です。 

 スマホやタブレット用の壁紙を特設サイトから無料でダウンロードできるようにもしています。これなら「お守りがわり」に持ち歩けるし、友達とシェアしたりして「頑張っているのは私だけじゃない」と、孤独感を和らげることができるかもしれません。特設サイトはおみくじが引けるようにもなっていて、受験生に息抜きしてもらえる設計になっています。
 
―― グミ市場はここ数年で急激に激戦化しています。すでにブランドとして浸透しているピュレグミですが、課題を感じることはありますか。 

 ピュレグミは「トキメキ」をコアのメッセージにしています。美味しさだけなら他のお菓子やグミでも代用できるかもしれないけれど、「トキメキ」や「前向きな気持ちになれる」というところはピュレグミにしか出せない情緒的な価値だと思うので、そこがしっかり伝わるようでなければいけないという考えは、どんな施策でも一貫しています。 

 グミ市場が活性化しているのは嬉しい面もありますが、本当にいろいろな商品が出てくる中で、若年層の購入頻度をもう少し伸ばしていきたいという目標はあります。若い方は新しい商品が出ると試してみる傾向が強いので、「おまもり梅」のような限定商品も手に取っていただいて、ブランドを長く愛してくれるきっかけになればいいなと思っています。 

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