TOP PLAYER INTERVIEW #99

「ALOBABY」「AMBiQUE」など急成長のSOLIA西口征郎社長に、Amazonで売るための極意を聞いた

前回の記事:
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 P&Gのマーケティング部門を経て、2013年に西口征郎氏が創業したSOLIAは、ベビー向けのスキンケアや男性向けのボディメイク、若い女性向けのヘアケアなど幅広い分野でブランドを創出し、DtoC業界で存在感を増している。

 いずれのブランドにも共通するのは、まだ満たされていないニーズを見出し、着実に顧客をつかんでいることだ。日本を代表する消費財ベンチャー企業を目指して急成長するSOLIA。西口氏に、市場創造やECモール活用の極意を聞いた。
 

自分の好きな分野で勝負、消費財ビジネスで起業


――SOLIAを起業されたきっかけをお聞かせください。

 大学生のころ、ちょうど堀江(貴文)さんや藤田(晋)さんが華々しく活躍されていて、それを見て起業家に漠然とした憧れを抱きました。ただ、起業するにしても、まずはスキルを身につけたいと思い、P&Gのマーケティング部門に入りました。

 P&Gに在籍して5年ほど経ったころ、大学時代の友人がリクルートの出資を受けてITベンチャーを起業し、そこに誘われて転職しました。当時は「ベンチャー=IT」という固定観念があったのですが、ITにはあまり情熱が持てず、どうせ大変なベンチャー経営に挑むのであれば、自分の好きな分野で勝負したいと考えました。P&Gで経験した消費財ビジネスは好きだから、それを自分でやろうと決め、2013年にSOLIAを創業しました。
 
株式会社SOLIA 代表取締役
西口 征郎氏

1982年生まれ。2007年京都大学大学院工学研究科を修了。P&Gマーケティング本部に入社。ファブリーズやジョイのマーケティングに従事。2013年、株式会社SOLIA創業、ベビー向けスキンケア「ALOBABY」を発売しAmazon・楽天でNo.1に。その後、「消費財ベンチャー企業」を掲げ、ボディメイク「AMBiQUE」、ヘアケア「Linon」など、複数のブランドを展開。2025年は年商88億。

――最初に立ち上げたブランドは、赤ちゃん用の国産オーガニックスキンケア「ALOBABY(アロベビー)」でしたが、消費財の中でもその分野を選んだ理由は何でしょうか。

 2013年は、ちょうど私に子どもが生まれたタイミングで、私生活で赤ちゃん向けの売り場に行く機会がありました。その棚を見たときに、ベビーのスキンケアにはチャンスがあるかもしれないと思ったんです。

 赤ちゃん向けの商品には国産にこだわる消費者が多いですが、大衆的な国産ブランドはあっても、2000円以上のプレミアム帯に位置するものがなく、あるのは海外製のオーガニック系ブランドばかりだったのです。こだわりたいからこそプレミアム帯を選ぶ人も多いはずなのに、国産がない。そこには絶対にニーズがあるだろうと考えました。

 自分の周りにもターゲットユーザーとなるような年代の人が多かったので、そうした人たちにインタビューをさせてもらいながら、国産オーガニックのコンセプトが受け入れられることを確認して進めていきました。こうして生まれたのが、ALOBABYです。

――一発目から看板ブランドが生まれたわけですね。

 当時は、ベビーのスキンケア分野でECにすごく真面目に取り組んでいるブランドが他になかったのが追い風になりました。とはいえ、今ではECが我々の強みとなっていますが、実はもともとオフラインでもしっかり展開していこうと考えていました。発売して早々にロフトさんなどに営業して置いてもらったのですが、ECはSEOによって知名度が上がったこともあって数字の伸びが早く、結果的にどんどんECにシフトしていきました。

――SOLIAは複数のブランドを運営していますが、売上構成はどのようになっているのでしょうか。

 全ブランドの合計の売上が約88億円で、そのうちALOBABYが40億円、2021年に発売したメンズ向けセルフケアブランド「AMBiQUE(アンビーク)」が同じく40億円、それ以外を2024年に発売したヘアケアブランド「Linon(リノン)」やその他のブランドが占めています。AMBiQUEは発売4年で40億円に到達し、ここ数年のSOLIAの成長を支えています。
 

テレビCM中心の売り方とは異なる、ECで求められるHowがあった


――最初のブランドからうまくいったとはいえ、やはりこれまでには苦労もあったのではないですか。

 第2のブランドとして女性向けのブランドをいくつか出したのですが、それは大苦戦しました。P&Gのときと同様にコンセプトをしっかりつくって、それが消費者に受け入れてもらえることを調査で確認した上で出したものの、「WHAT」がECで求められる「How」に合わなかったのが原因でした。

 P&Gでは、Who(誰に)、What(何を)、How(どのように伝えるか)を設定し、それに一本筋が通っていることを大事にします。その本質は何も変わらないのですが、ECの世界のHowに合わせたWhoとWhatがあることを身をもって感じました。

 P&Gの場合は、テレビCMを大量投下し、店頭で売るというHowが決まっていました。一方で、当時ECで流行していたのはアフィリエイターを活用し、衝動買いをさせるような記事をつくって売っていくという手法でした。そうすると、クレンジングであれば「毛穴汚れがドロドロ落ちる」といった訴求の強さが求められるのですが、我々の商品のベネフィットはそうしたものではなく、アフィリエイターにとっては紹介しにくいものでした。

 消費者をしっかり見てさえいればいいと思っていましたが、それだけでは売れない。ECの世界のHowをきちんと理解しないまま商品のコンセプトをつくっていたので、非常に苦戦したんです。

 その経験を経て、新しい商品をつくるときは消費者を見るだけでなく、売り場やどのようなプロモーションを中心にやっていくかをある程度考え、それに即した形でコンセプトをつくるようにしています。

ーーAMBiQUEは、その経験も踏まえて設計されたのでしょうか。

 そうですね。AMBiQUEは、筋トレに効果的な成分をまとめて取れる「アンビーク オールインワンEAA」(以下「EAA」)という商品の発売をきっかけに伸びていったブランドなのですが、「EAA」はAmazonで売れるものにしようと決めきって設計していきました。というのも、男性のボディメイク商材の50%がECで購入されており、さらにECの大部分をAmazonが占めていることが分かっていたからです。

 具体的には、Amazonで商品を検索したときに、検索結果の一覧に並ぶサムネイル画像のサイズにぴったりはまるよう、パッケージの形を考えました。仮にパッケージを縦長にすると、サムネの中の商品が小さくなってしまうので、サムネの時点できれいに商品が見えるようにしています。

 ほかにも、Amazonではとにかく商品をクリックされることが重要なので、パッケージを見た瞬間にベネフィットが伝わるようにしようと考えました。そのためには、分かりやすい商品コンセプトにすることも重要です。そこで消費者調査を行い、筋トレを健康のために週1~2回やっている人が、「プロテインやサプリにはたくさんの種類があって何を飲めばいいのか分からない」という悩みを持っていることを踏まえ、「オールインワン=これ一つを飲めばOK」というコンセプトの商品をつくり、パッケージも見た瞬間にそれが理解できるデザインにしました。

 また、カスタマーレビューのスコアも売上に非常に大きく影響するので、悪いレビューがあればそれをもとに商品をメンテナンスしたり、コミュニケーションを見直したりしてPDCAを回し、ユーザーの期待値に合うように調整しています。
  
Amazon公式サイトより
 

Amazonでのコンセプトの伝え方とは?


――商品コンセプトの考え方は、P&Gのときと比べてどのように異なるのでしょうか。

 たとえばP&Gでは、最初に「筋トレに良い成分ってたくさんあるけど、何を取ればいいか分からなくないですか?」とインサイトを突くような一言があって、「そこで、こういう商品はどうですか?」と、自分たちの商品が最も魅力的に見える一言を入れます。テレビCMであれば、これがすべて描けるわけです。

 しかしAmazonでは、もっと端的にコンセプトを伝える必要があります。そこで、インサイトを訴求しなくても伝わるシンプルで強力なベネフィットを考えています。

 たとえば「EAA」の場合は、「オールインワン」がメインのベネフィットで、あとはサブベネフィットとして、「ゴクゴク飲める」「ダマができない」といったことを設定しています。

 また、ヘアケアブランドのLinonでは、ブランドコンセプトを「かわいいを仕込む」としています。「ロックオイル(ヘアスタイリングオイル)」という新しい市場において、まだニーズが満たされていない領域を狙いました。

 既存のブランドはやや高級感が強く、その分やや高めの年齢がメイン購買層だと思ったので、価格がちょっと高くて手が出せない若い層をターゲットにしたんです。

 その結果、Amazonでは既存ブランドを抜き、ロフトとPLAZAでも取り扱いが始まって、PLAZAでは昨年のベスコス(THE BEST HIT COSMETICS 2025)も受賞できました。ニーズの満たされていないところに早期に参入できたことが、成功した理由だと思います。

――次に成長する市場の目利き力も重要ですね。

 そう思います。でも、定まった方法論は全くなくて、日々いろいろな人の話を聞いたり、店頭に出掛けていって何が売れているのかを見たりして、考えています。ただ、いろいろなところで耳にする「この市場が成長している」という話を、一つひとつきちんと調べるということは大切にしています。調べてみたけれど何か違うと思ったもの、面白そうだと思ったけれど勝ち筋を見いだせなかったものもたくさんあります。
  
 

「日本を代表する消費財ベンチャーになりたい」


――SOLIAのブランドはそれぞれカテゴリやターゲットが異なりますが、そうした複数のブランドを展開することによる相乗効果はありますか。

 売上に相乗効果はありませんが、ビジネス上のラーニング(学び)は共有できます。複数のブランドを持っていればそれだけいろいろなラーニングが得られますし、それを仕組み化すれば我々の強みにできると考えています。

 先ほどからお話ししているHowについても、ALOBABY、AMBiQUE、Linonの3ブランドでそれぞれ重要なHowが異なるので、それが強みにつながっていると思っています。SNSを例に挙げれば、ALOBABYはInstagramやXと相性がよく、AMBiQUEはYouTubeで筋トレYouTuberさんとコラボすることが非常に効果的で、若い女性向けのLinonはTikTokとの相性がいい。ブランドごとに異なるSNSに注力することで、このやり方は別のブランドにも応用できるかもしれないといったラーニングがいろいろ出てくるので、別のブランドでもそれを試してみることができています。最適なHowは、試行錯誤して成功と失敗を繰り返さなければ見えてこないので、SOLIAはその手数を打ち続ける仕組みがつくれているところが強いのではないかと思います。

――ブランド間でラーニングを共有するには、組織構造も重要になるのではと思いますが、どのような組織体制になっているのですか。

 ブランドに関しては、いわゆるブランドマネジメント制になっていて、それぞれのブランドにブランドマネージャーが付いています。その全ブランドを私を含め2人で統括していて、各ブランドのラーニングを共有しています。

 一方、ブランド以外の部署は、横串で全ブランドに携わるようにしています。たとえば、セールスという大きなチームの中で、公式サイトやAmazon、楽天と、チャネル別にチームが分かれており、各チームが全ブランドに携わっています。そうすると、Amazonの運用チームではAmazonのラーニングがどんどん蓄積されていくので、その上澄みをブランドマネージャーにもどんどん共有・還元していくといったイメージです。

――SOLIAの今後の展開についてお聞かせください。

 SOLIAの売上はオンラインが8~9割を占めているのですが、我々が主戦場としている化粧品やプロテインといったカテゴリーはEC化率が多くて50%です。市場の半分以上はオフラインなわけですから、オフラインにも力を入れないと今後のさらなる成長は望めない。そこで、今はオフラインにかなり力を入れていて、オンラインとオフラインの売上を半々にしたいと思っています。

 売上規模としては、まず500億円を達成し、日本を代表する消費財ベンチャー企業になりたいと考えています。その達成は2035年までにと考えていましたが、もう少し早めてもいいかもしれません。いろいろな大企業を見ていると、500億円を超えると、できることが大幅に増え、そこから2000~3000億円までの成長が非常に早いので、まずは500億円、最終的には数千億円の売上をつくっていく企業へと成長していきたいと思っています。
  

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