日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #65

AI時代にこそ際立つ「生身の人間の心の機微」 三井住友銀行 Oliveの「皆がなんとなく思っていること」を巧みに描いたCM

 

「皆がなんとなく思っていること」に着目した、英国百貨店の2013年クリスマスの話題作


「通帳の人」を見ていて思い出したのは、英国の百貨店・ハーベイニコルスが2013年のクリスマスシーズンに実施して話題を呼んだテレビCM&広告キャンペーン「Sorry, I spent it on myself(ゴメンね、自分のために使っちゃった)」です。この広告キャンペーンは、カンヌライオンズ2014で、プロモ&アクティベーション部門グランプリをはじめ4つのグランプリを受賞して、超話題作となりました。

 4本シリーズのように描かれるテレビCMでは、年頃の娘が父親にクリスマスプレゼントを渡すシーンから始まります。娘からプレゼントをもらって嬉しそうな父親。さっそく開けてみると、出てきたのは、豪華に包装された「輪ゴム」。パッケージには、“Sorry, I spent it on myself(ゴメンね、自分のために使っちゃった)”と記載されています。「えっ?輪ゴム??」と戸惑う父親。悪びれた様子もなく微笑み続ける娘の足元がアップになると、そこには高価そうなハイヒールが。つまり、これが「自分のために使っちゃった=買ったモノ」なのですね。
 

A Harvey Nichols Christmas 2013 Sorry, I Spent It On Myself

 孫から祖母への贈り物は、紙を綴じるクリップ。ラブラブなカップルの男性に贈られるのは爪楊枝。爪楊枝を恋人に贈った女性の手元には、高価なバッグが大事そうに置かれています。

「言語化されていないが消費者が心の中で思っていること」を広告業界では、コンシューマー・インサイトとか単にインサイトと呼びます。

 これは英国での広告キャンペーンです。たぶん日本よりもクリスマスプレゼントを贈り合う習慣はヘビーで、贈る側からすると「プレゼントにばかりお金がかかって、自分の欲しいものを買うお金がなくなる」といったインサイトが強く存在するのでしょう。なんとなく想像はつきます。

 ハーベイニコルスは、その「皆がなんとなく思っていること」に着目。クリップや爪楊枝などの数百円以下のお安い品物を、とてもお洒落なデザインでコレクション化したわけです。さらにCMでは、家族や恋人の間でプレゼントを贈るシーンの、微妙な会話劇として描いて、強烈に記憶に残りました。
 

Sorry, I Spent It On Myself ケースフィルム

 AIでかなりのことができてしまう時代だからこそ、ご自身が担当するコミュニケーション課題においても、「口には出さないけれど、皆が思っていること」に着目し、「人と人とのやり取りの面白さ」を中心に伝え方を設計してみるのも良いかもしれませんね。
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