新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #28
『チェンソーマン』手がけるMAPPAが、激変するアニメ業界の中で選択した「戦い方」
2026/04/23
日本の音楽・映画・ゲーム・漫画・アニメなどのエンタメコンテンツが、世界でも注目されることが多くなった昨今。本連載は、さまざまなエンタメ領域の舞台裏で、ヒットを生む旗手たちの思考をnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏が解き明かしていく。
今回インタビューしたのは、『チェンソーマン』『呪術廻戦』『進撃の巨人 The Final Season』TVアニメ「らんま1/2」といった国民的マンガのアニメ化作品をはじめ、大人気アニメを次々と手がけるアニメーションスタジオMAPPA(マッパ)の代表である大塚学氏。
2025年、従来の製作委員会方式を採らず、MAPPAの100%単独出資で制作し、全世界興行収入297.8億円と大ヒットを記録した劇場版『チェンソーマン レゼ篇』。そして2026年1月、世界最大級の動画配信サービスNetflixとの戦略的パートナーシップの締結ーーMAPPAの前例のない独自戦略は業界でも大きな話題となり、今後の動きへの注目も高まっている。
前編では、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』にフォーカスし、100%単独出資という意思決定の背景と、その体制と覚悟によって実現した様々な挑戦の軌跡、それらを通じて掴んだ手応えについて大塚氏に聞いた。
今回インタビューしたのは、『チェンソーマン』『呪術廻戦』『進撃の巨人 The Final Season』TVアニメ「らんま1/2」といった国民的マンガのアニメ化作品をはじめ、大人気アニメを次々と手がけるアニメーションスタジオMAPPA(マッパ)の代表である大塚学氏。
2025年、従来の製作委員会方式を採らず、MAPPAの100%単独出資で制作し、全世界興行収入297.8億円と大ヒットを記録した劇場版『チェンソーマン レゼ篇』。そして2026年1月、世界最大級の動画配信サービスNetflixとの戦略的パートナーシップの締結ーーMAPPAの前例のない独自戦略は業界でも大きな話題となり、今後の動きへの注目も高まっている。
前編では、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』にフォーカスし、100%単独出資という意思決定の背景と、その体制と覚悟によって実現した様々な挑戦の軌跡、それらを通じて掴んだ手応えについて大塚氏に聞いた。
アニメ『チェンソーマン』100%単独出資は、業界構造の変化を見据えた一手
徳力 2025年は、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が本当に大ヒットしましたね。全世界の興行収入が297.8億円を突破したと聞きました。
大塚 はい。ありがたいことに、300億円近くまで伸びました。
徳力 『チェンソーマン』は、MAPPAが100%単独出資でTVシリーズスタートされましたが、映画化は当初からイメージされていたのでしょうか。
大塚 いえ、最初から決めていたわけではありません。TVシリーズが終わった直後くらいに、「次はどういう展開にしようか」と考えたときに出てきた選択肢のひとつでした。
徳力 TVシリーズの放送開始は2022年10月でしたよね。当時、業界のいろいろな方に話を聞くと、「MAPPA、ギャンブルするなあ」といった懐疑的な声も少なくなかったように思います。TVシリーズがスタートしてからも「映画的な演出が重視されていて、原作の良さが生かされていない」「グッズの売れ行きが良くない」といった見方もありました。それだけに、今回映画が大ヒットしたことで、てっきり映画化は最初から計画に入っていたのだと思っていました。違ったんですね。
大塚 MAPPAとしては、100%単独出資に“ギャンブル”という感覚はありませんでした。Netflixをはじめとする配信プラットフォームの台頭という業界構造の変化を捉えた上で、制作スタジオとしてそこにどう向き合うかを考えたときに、戦い方のひとつとして選択肢に上がってきた、という感覚です。
加えて、そうした判断が可能な構造が、スタジオを取り巻く環境の中で、ちょうど生まれ始めていた。そんな背景があっての選択でした。
MAPPA 代表取締役社長
大塚 学 氏
1982年生まれ。アニメスタジオ STUDIO4℃で制作進行を経験後、2011年にMAPPA設立に参加し、2016年に社長に就任。プロデューサーとしても、『残響のテロル』『ユーリ!!! on ICE』『BANANA FISH』『ゾンビランドサガ』などを手がけるほか、『呪術廻戦』『チェンソーマン』では制作統括を務め、数々の話題作・ヒット作に携わる。
大塚 学 氏
1982年生まれ。アニメスタジオ STUDIO4℃で制作進行を経験後、2011年にMAPPA設立に参加し、2016年に社長に就任。プロデューサーとしても、『残響のテロル』『ユーリ!!! on ICE』『BANANA FISH』『ゾンビランドサガ』などを手がけるほか、『呪術廻戦』『チェンソーマン』では制作統括を務め、数々の話題作・ヒット作に携わる。
徳力 日本では単独出資が珍しかったので大きな話題になりましたが、世界的に見れば、自社でコンテンツを持つ前提で制作するのは一般的ですよね。大塚さんとしては、かなりロジカルに将来を見据えた上で、まずテレビTVシリーズへの単独出資に踏み切った、ということなんですね。
大塚 そうですね。加えて、その前にひとつ良い経験をしていたことも大きかったです。Cygamesが、ソーシャルゲーム『神撃のバハムート』のアニメ化をMAPPAに依頼してくださったときのことです。もともと高品質なゲームというコンテンツの土台があったとはいえ、単独出資でのアニメ化を実現する様を目の当たりにして、純粋に「すごいな」と感じたのを覚えています。
それが2014年のことでした。Netflixの日本上陸が2015年ですから、業界構造の変化に本格的な危機感を覚える以前から、単独出資体制の持つ力には興味を持っていたと言えます。とはいえ、ビジネスとしてその構造が地に足のついた形になったのは、ずっと後のことです。あれは、いわばソーシャルゲーム“ブーム”によって起こった、他業界での出来事だったわけで、それを自分たちアニメスタジオの立場からどう実現するかまでは、当時はまだ見えていませんでした。ただ、こういうやり方があるんだと知ることができたのは大きかったですね。
徳力 最終的に映画化を決めた理由は何だったのでしょうか。
note noteプロデューサー/ブロガー
徳力 基彦 氏
NTTやアジャイルメディア・ネットワーク等を経て、現在はnoteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNS活用のサポートを行っている。個人でも、日経MJやYahooニュース!個人のコラム連載等、幅広い活動を行っており、著書に「普通の人のためのSNSの教科書」、「アルファブロガー」等がある。
徳力 基彦 氏
NTTやアジャイルメディア・ネットワーク等を経て、現在はnoteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNS活用のサポートを行っている。個人でも、日経MJやYahooニュース!個人のコラム連載等、幅広い活動を行っており、著書に「普通の人のためのSNSの教科書」、「アルファブロガー」等がある。
大塚 TVシリーズでは、現場のクリエイター陣も本当に頑張ってくれて、きちんと良い結果が出ている部分もありました。ただ、スタジオとして、原作のポテンシャルを最大限に発揮できたアニメ化だったかというと、課題は残ったという感覚があったんです。
クリエイティブの強度がどうこうという話ではなくて、企画の段階から、「この『チェンソーマン』という作品を、どう世の中に届けるのが一番いいのか」を、シリーズ終了後にもう一度考え直してみようと思いました。
そのときに、「レゼ篇」というエピソード(編集部注:原作コミック第5~6巻で描かれた人気エピソード。主人公・デンジと謎の少女・レゼの切ない恋と、疾走感あふれるバトルアクションが描かれる)があって、それは映画としてのまとまりが良いものだった。このエピソードに最も可能性を感じられるフォーマットで挑戦してみたいと考えて生まれたのが、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』です。
徳力 映画としてあまりにもきれいにまとまっているので、レゼ篇の映画化ありきで、TVシリーズのシーズン1をあの場所で切っていたのだとすら思っていました。そういう経緯があったんですね。
大塚 ここでもう一度、『チェンソーマン』という作品の価値を最大化する勝負をしよう、と考えました。
グローバルでの「最速」公開に踏み切った理由
徳力 劇場版の海外展開が非常にスピーディだったことにも驚きました。
大塚 TVシリーズのグローバル配信は、当時の歴代最高記録の視聴回数を叩き出していました。この実績もあって、『チェンソーマン』は国内以上にグローバルで支持される作品だという感覚がありました。
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』本予告
徳力 その手応えがあったからこその判断だったのですね。日本のアニメ映画で、あれだけ短期間にグローバル展開するのはかなり珍しいと思うんです。『鬼滅の刃』という前例(編集部注:劇場版『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』は、全世界興行収入が6億5400万ドル=約948億円を記録し、2025年公開の映画で世界5位にランクインする大ヒットを記録した)はあったとはいえ、一般的には日本でヒットしてから海外展開する流れが多いですよね。でも、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は最初からグローバル展開していました。
たしか『鬼滅の刃』は、2025年7月に日本で公開されて、2ヵ月後の9月にグローバルで上映開始でしたよね。一方、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は9月19日に日本で公開して、翌10月24日には全米公開。本当に驚きました。
大塚 韓国や台湾を含むアジア圏に関しては、日本での公開から1週間後には公開していましたからね(笑)。本当は全世界同時公開に挑戦したかったのですが、そこまで余裕をもって完成させるのはなかなか難しくて……。原作元の集英社とも相談しながら、今回は「最速」に挑戦しました。




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