日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #67

カロリーメイト ゼリーの交通広告 巨大な林檎の写真にロゴだけを添えた「皆まで言わない」表現の効果とは

前回の記事:
サントリー・クラフトボスが投げかける「真実か、フェイクか。」 重苦しい世の中の関心事を軽やかに取り入れて注目を集める手練れの技
 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第67回です。
 

巨大な林檎の写真に、見慣れたロゴだけ。日本では数少ない「語り過ぎない」広告表現


 日本の広告表現は、欧米のそれに比べて時に「語り過ぎ」な印象があります。以前、同じ映画のポスターの日米比較をしたレポートを読んだことがあるのですが、文字の量が明らかに日本版のほうが多い。日本はとにかく説明しようとして、米国は説明を極力抑えて印象に残そうとする。そう見比べてみると、日本版に対して「皆まで言うな」というフレーズを投げかけたくもなります。

 しかし日本では、どうしてもたくさん説明したがる傾向があります。私が広告クリエイティブの現場にいた時も、多くのブランド企業の方から「もっとしっかり説明を」「もっと分かりやすく」と求められた記憶が鮮明に残っています。

 一方、今回取り上げる「カロリーメイト ゼリー」の交通広告は、基本的に説明をしていません。消費者 / 生活者が見て、説明の多さに辟易し、思わず「皆まで言うな!」と言いたくなる要素がまったくありません。クローズアップの林檎の写真の上、ど真ん中に「BALANCED FOOD Calorie Mate JELLY」という商品ロゴがあるだけ。「おいおい、それにしても、少しは説明したら?」と、こちらから言ってあげたくなるようなつくりです。
   
著者撮影

 目線を右にずらすと、同じつくりで、商品ロゴの部分に商品パッケージが置いてある広告表現。両方並べてみても、説明を読むことによる納得は一切ありません。しかし、目を引きます。そして「林檎味でゼリータイプの新しいカロリーメイトが出たんだ」ということは十分に伝わるし、なんなら試しに食してみようかなという気にもさせます。
 

著者撮影

 制作スタッフの中心人物の方がSNSに書いていましたが、「カロリーメイトのゼリー??うわ、マズっそ!」という生理的拒否反応がけっこう多く、「左脳的説得も悲しいほど無力」なので、カロリーメイト初の「唾がわく広告」を目指したと言います。
 

大塚製薬 カロリーメイト「NEW APPLE」篇

 皆まで言わない、説明をまったくしない広告には、きちんとした意図があり、それはかなりの程度、成功していると思います。これだけ情報量が多い世の中では、送り手側の意図とは逆に、受け手側は説明過多のものをスルーしがちになります。送り手は効果的な情報発信・コミュニケーションをしているつもりでも、効果に繋がりにくくなってしまうのです。それにしても、この高度な「説明しない」表現を採用したクライアント側も、なかなか素晴らしいですね。

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