CATCH THE RISING STAR #41
メリーチョコレートの若手ヒットメーカーが突き詰める「自分が欲しくなるチョコ」
2026/05/15
- 商品開発,
企業におけるマーケティングの役割と重要性が増す一方、「マーケターの仕事はAIに奪われるのでは」とも囁かれる昨今。そんな変革期にマーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
次世代を担う「ライジングスター」にフォーカスし、彼らの多彩な思考や行動を探ることでマーケティングの近未来を照射するAGENDA Note.の本連載。41回目となる今回は、メリーチョコレートカムパニーで商品開発を担う井出真希子氏に取材。レトロ喫茶をイメージした「はじけるキャンディチョコレート。」や、今年初めて発売された「ビターロワ」など斬新なアイデアでバレンタイン商戦を盛り上げる若きヒットメーカーの発想の源に迫った。
次世代を担う「ライジングスター」にフォーカスし、彼らの多彩な思考や行動を探ることでマーケティングの近未来を照射するAGENDA Note.の本連載。41回目となる今回は、メリーチョコレートカムパニーで商品開発を担う井出真希子氏に取材。レトロ喫茶をイメージした「はじけるキャンディチョコレート。」や、今年初めて発売された「ビターロワ」など斬新なアイデアでバレンタイン商戦を盛り上げる若きヒットメーカーの発想の源に迫った。
―― 井出さんは2019年に中途入社されたそうですね。どのような経緯だったのでしょうか。
前職は金属加工業者で営業事務をしていました。製造業を支える仕事に誇りを持っていましたが、より自分の好きなものに近い仕事がしたい、BtoBではなくBtoCでお客さまの反応が見える仕事をしたいという気持ちが募り、転職を決意しました。子どもの頃から大好きだったチョコレートを製造・販売し、パリで開催されるサロン・デュ・ショコラで金賞を連続受賞するなど確かな技術力を持つメリーチョコレートで社員を募集していたので応募したのですが、じつは情報システム系の募集で…。未経験の私は落ちてしまったのですが、熱意が買われたのか、「ちょうど商品企画の枠があるから受け直してみませんか」と言ってもらえたのです。マーケティングも商品企画も未経験でしたが、あらためて応募し直し、晴れて入社できました。

メリーチョコレートカムパニー マーケティング本部 商品企画部 新商品開発課 課長
井出 真希子 氏
井出 真希子 氏
―― 入社して商品企画部に配属されてからは、どのような業務をされてきたのですか。
当社の商品は大きく、通年販売されるプロパー商品と、バレンタインの時期にオンラインショップや催事場などに並ぶバレンタインブランドと呼ばれる商品の2通りがあります。商品企画部の社員は基本的に両方を担当しており、私はプロパーではクッキーコレクションを、バレンタインブランドについては「はじけるキャンディチョコレート。」「ロゼーヌ」など複数のブランドを担当しています。2026年のバレンタインは自分で提案した新商品「ビターロワ」が新たなブランドとして社内コンペで採用され、こちらも担当しました。
バレンタインブランドは既存のブランドが非常に多いのですが、毎年、社内コンペで選ばれたものを新しいブランドとしてラインナップに加えたり、既存ブランドと入れ替えたりしています。商品企画部は全員が企画を出すことになっており、私は今回の「ビターロワ」を含めて、これまでに4回ほど採用されました。
―― ほぼ連戦連勝ですね。「ビターロワ」はどのような発想から企画し、どんなプロセスで採用されたのですか。
「ビターロワ」はビターチョコレートを専門にしたブランドです。ビターチョコが好きな人は結構多いですが、意外にも、市場全体を見渡してもビター専門のブランドというのはほとんどありません。ビター好きな人に訴求するのはもちろんのこと、男性に贈る際に迷うことなく選んでいただける。そんな発想からイメージを膨らませました。
マーケティング本部内の投票や上司による選定を経て、正式に候補として選ばれると、経営陣に向けた最後のプレゼンをする前に企画・デザイン・広報など各部のメンバーが加わってチームが組まれます。最初は「夜(よる)」というブランド名で提案したのですが、そのチームで最終的なコンセプトやブランド名を話し合った結果、「ビターチョコの王」を意味する「BITTER ROI(ビターロワ)」に決まりました。さまざまなビターチョコの味わいを楽しむことができ、会社などでの配布用を意識して価格は抑えつつ、シーリングスタンプをあしらった手紙風の高級感のあるデザインにしています。初登場のブランドとしてはなかなか好評だったという感触を得ています。
―― ヒット商品となった「はじけるキャンディチョコレート。」も井出さんの企画と伺いました。レトロブームを踏まえた商品であることは分かりますが、「ビターロワ」も含めて、井出さんの企画が採用されたり、当たったりするのはなぜだと思いますか? データなどを活用されているのでしょうか。
毎年のバレンタインの市場調査や、販売データを分析して次に生かすのは当然ですが、新商品の企画において最も信頼できるのは正直、「直感」だと思っています。私自身がものすごくチョコレートが好きで、自分が買うならどんなチョコがいいか、人にあげるなら何がいいか、そこを強く意識します。
「はじけるキャンディチョコレート。」の開発当時、「昭和レトロ」というコンセプトは上層部の理解を得るのに苦慮しました。企画開発では、食品以外の市場データも積極的に収集し、参考にしました。当時、文具を中心に昭和レトロへの注目が高まりつつありましたが、バレンタインでも人気を得られると確証できるデータは、残念ながら存在しませんでした。
それでも私たちは、メリーオリジナルの「はじける」食感が特徴のチョコレートに、昭和レトロな喫茶店のメニューを要素に取り入れることで、ターゲット層の心に響く商品になると確信し、社内提案を行いました。実際に昭和を生きてきた方々からは、クリームソーダのような喫茶店メニューを題材にしたコンセプトやデザインは、「古臭い」と映ってしまったようです。「もう少しポップにしてはどうか」という逆提案を受け、企画を再検討したものの、やはり原案の方が可愛らしく、心をときめかせる魅力があるという結論に至りました。
チームとして「私たちのターゲット層には、絶対に原案の方が売れます」と強くアピールし、最終的に原案を押し通しました。私自身がターゲット層と重なっていたことも、この説得力を増した要因だと感じています。
結果、「はじけるキャンディチョコレート。」は発売当初からSNSなどで話題になり、早い段階で完売となりました。SNSをチェックすると、レトロな文具を愛する「文具女子」界隈に響いていることも分かったので、翌年からは老舗の文具メーカーと組んだコラボも展開しました。その後も順調に売上を伸ばし、発売から4年で売上は10倍に成長しています。
データの裏付けのない未開拓市場においても、ブームを創出することこそ商品企画の使命であると、この経験を通じて確信を深めました。
―― 近年はチョコの原材料費や価格の高騰も話題になっています。ヒットメーカーの井出さんとしては業界の課題をどう捉えていますか。また、近年のバレンタインの傾向も教えてください。
「カカオショック」と言われるように、チョコレートの原料であるカカオの高騰はメーカーとしても注視しているところです。個人的な考えですが、これまでの安価なチョコレートが本当に適正な価格だったのか、生産者の方々にきちんと還元されているのかについて、これからも長くチョコレートを楽しんでいくためには、考えていかねばならないと思っています。
近年のバレンタインは報道等もされているように、「自分へのご褒美」として買われる方が増えています。従来のバレンタインは2月にギフトとして買うのが主流でしたが、熱意のある方は1月にバレンタインフェアがスタートしたその日に購入されます。2月になると人気商品は品薄・品切れになってしまうのが近年の傾向です。そのため、私たちも販売期間のうち初動を非常に重視して、早く売れるのは何か、逆に残ってしまうものは何か、細かく分析しています。その上で、次のバレンタインの企画に生きる直感につなげています。
―― 毎年のように企画が採用されるとプレッシャーもかかりそうです。どのように企画力を培っているのでしょうか。
負けず嫌いなので、「今年も採用されたい」という思いは強く持っています。トレンドをキャッチするために色々なお店を見るなどアンテナを張るようにしていますが、特に影響を受けるのは音楽かもしれません。好きなバンドの曲を聴いていて、自分では思いつかないような歌詞や世界観に触れると、妄想が広がります。じつは「ビターロワ」も、あるバンドの曲の歌詞からインスピレーションを受けています。
―― 最後に目標をお聞かせください。
メリーチョコレートはバレンタインにはメディア等でも取り上げていただく機会が多く、会社としても非常に力を入れているのですが、一方で、バレンタインばかりに依存するのではなく、通年販売のプロパー商品も盛り上げたいという思いがあります。個人的な考えですが、将来的にはリブランディングも必要になってくるかもしれません。
まだ詳しくはお話しできませんが、実際、私も携わるプロジェクトが動いていて、メリーチョコレート自体が今、過渡期にあります。今後、バレンタインだけでない新しい姿をお見せできると思うので、楽しみにしていただきたいです。
―― 本日はありがとうございました。
【上司の視点】「伝えたい想いの強さ」が価値届ける
メリーチョコレートカムパニー マーケティング本部 商品企画部 部長
長与 潤 氏
長与 潤 氏
井出さんは入社以来、商品設計を中心に取り組んでいただいておりますが、担当商品において各セクションメンバーで構成する商品ブランドチームのリーダーも兼任していただいております。複数のメンバーが存在する中で同じ方向性に導くことは容易ではありませんが、このまとめ役としての「目標達成に向けた意志の強さ」には常に感心させられます。
ひとつの商品には中身や仕様、デザイン、演出など、さまざまな商品価値を表現する要素が存在します。それらをターゲットに合わせた「一本の線」とするために俯瞰で物事を判断し、時にはメンバーへの軌道修正を促し、導き出した答えは自信を持ってプレゼンしてくれます。
その方向性に対し、上長から異なる意見が出た場合も、「それは目標達成に沿わない手段である」とチームで判断した場合、お互い納得するまで話し合うことに妥協しません。その姿勢が他のメンバーからの信頼につながり、チームの団結力を強くしております。
ギフト業界のお客さまニーズは年々変化しており、その時代の望むモノを提供できない限り、お客さまの支持は得られません。そのような環境の中、どれだけ商品価値を伝えられるかは、作り手の「お客さまに伝えたい想いの強さ」で決まるのではないでしょうか。その「想いの強さ」を持つ井出さんには、これからも「ギフト」でお客さまの心を豊かにするお手伝いをしていただきたいです。
ヒット商品「はじけるキャンディチョコレート。」と共に。「昭和レトロ」のコンセプトも文具とのコラボも最初は反対された。「絶対に当たります、と熱意で押し通しました(笑)」




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