TOP PLAYER INTERVIEW #101
丸亀製麺・新マーケティング本部長が追求する「二律両立」と「記憶に残る感動体験」の進化
2026/05/21
トリドールホールディングスが運営し、うどんチェーントップシェアを誇る「丸亀製麺」。すべての店で「手づくり・できたて」にこだわり、北海道産小麦100%、塩、水のみから麺職人たちがうどんを打つスタイルで支持を集める同社は、直近の2026年3月期通期決算でも売上収益・事業利益で過去最高を更新するなど、コロナ禍や物価高で打撃を受ける外食産業の中でも新たな価値創造と業績向上を続けている。
アジェンダノートでは、今年4月に同社の執行役員 兼 マーケティング本部長に就任したばかりの江田壮寿氏に取材。丸亀製麺が好調を続ける背景と課題、そして前任の南雲克明氏(現ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター)から引き継いだマーケティング組織をどう進化させ事業成長につなげるか、展望を聞いた。(江田氏は6月2-4日に沖縄で開催されるマーケティングアジェンダ2026にも登壇決定している。詳しくはこちら)
アジェンダノートでは、今年4月に同社の執行役員 兼 マーケティング本部長に就任したばかりの江田壮寿氏に取材。丸亀製麺が好調を続ける背景と課題、そして前任の南雲克明氏(現ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター)から引き継いだマーケティング組織をどう進化させ事業成長につなげるか、展望を聞いた。(江田氏は6月2-4日に沖縄で開催されるマーケティングアジェンダ2026にも登壇決定している。詳しくはこちら)
「マーケティング=経営」の認識を高いレベルで共有
ーー 江田さんは直近まで丸亀製麺のマーケティング副本部長を務めておられました。ご経歴を教えていただけますか。
広告代理店で約10年のキャリアを積んだ後、自動車メーカーや外資系コンサルティングファームを経て、2024年2月にトリドールホールディングスへ入社しました。マーケティング支援会社(広告代理店や外資系コンサルティングファーム)時代に培った外食・小売マーケティングの経験を事業会社側で生かせると考えたことに加え、丸亀製麺を屋台骨としたトリドールグループがチャレンジ精神を持った企業であり、個人的に私の家族も含めて特に丸亀製麺が好きなブランドであった点、さらに前任の南雲克明氏との縁があったことも理由です。入社後は、南雲氏が主に「丸亀うどん弁当」に代表されるような、中長期的な観点も含めた新事業・カテゴリーを創出する領域を担い、私は比較的、短期的な観点でのマーケティング戦略の立案や戦術の実行を、組織横断しながらアジャイルにリードしてきました。
丸亀製麺 執行役員 兼 マーケティング本部長
江田 壮寿 氏
博報堂、日産自動車、アクセンチュアなどでマーケティング支援会社と事業会社双方の立場から事業成長に携わり、両視座を併せ持ちながら、一貫してビジネスグロース起点の統合マーケティングを牽引。
2024年にトリドールホールディングスへ参画し、2026年より現職。“感動(KANDO)”を起点に、丸亀製麺の経営戦略および事業戦略立案から戦術実行まで一気通貫で統括・管掌。早稲田大学 大学院商学研究科 修士課程修了(経営管理修士MBA)。第44回日本アドバタイザーズ協会(JAA)広告論文 優秀賞、これまで手掛けたプロジェクトでは7つの国内外広告賞を受賞。座右の銘は『出会いが人を変え、感動が人を動かす』。
江田 壮寿 氏
博報堂、日産自動車、アクセンチュアなどでマーケティング支援会社と事業会社双方の立場から事業成長に携わり、両視座を併せ持ちながら、一貫してビジネスグロース起点の統合マーケティングを牽引。
2024年にトリドールホールディングスへ参画し、2026年より現職。“感動(KANDO)”を起点に、丸亀製麺の経営戦略および事業戦略立案から戦術実行まで一気通貫で統括・管掌。早稲田大学 大学院商学研究科 修士課程修了(経営管理修士MBA)。第44回日本アドバタイザーズ協会(JAA)広告論文 優秀賞、これまで手掛けたプロジェクトでは7つの国内外広告賞を受賞。座右の銘は『出会いが人を変え、感動が人を動かす』。
ーー 丸亀製麺は「丸亀うどーなつ」をはじめとしたキャッチーな新商品をヒットさせ、売上も過去最高を更新しています。これら直近の好調な業績に、マーケティングはどのように貢献されたのでしょうか。
私がトリドールに入社してまず感じたのは、「マーケティングは経営そのもの」と捉える認識が高いレベルで共有されていることです。創業者の粟田貴也をはじめ、丸亀製麺 代表取締役社長の山口寛、前任の南雲氏など、経営陣の理解の深さによるものだと感じています。
当社では「売上目標を必ず達成し続ける」という短期的な成果と、中長期の企業価値の成長を両輪で推進する考え方を徹底しています。そのためにフェア商品のプロモーションとブランディングを要として、さらに「丸亀シェイクうどん」や「丸亀うどーなつ」といった新カテゴリー商品にも取り組んでいます。
これらは既存顧客の満足度向上だけでなく、新規顧客との接点創出(CEP:カテゴリーエントリーポイント)にも寄与しています。来店をきっかけにコア商品であるうどんを体験いただき、リピートにつなげる。この循環を生み出し、回し続けることが、我々のマーケティング戦略の核だと考えます。
全社に根付く「二律両立」
ーーコスト増や世界情勢の不安定さがあり、外食産業を取り巻く環境は厳しさを増しています。その中で丸亀製麺はなぜ、値上げをしながらも選ばれ続けるのでしょうか。独自の戦略ポイントについて教えてください。
トリドールグループでは、「食の感動で、この星を満たせ。」をスローガンに掲げており、この考え方は丸亀製麺を含め約20に及ぶ全ブランド、全従業員に深く浸透しています。「感動」を何より大切にするのは、創業者・粟田の価値観に根ざしたものであり、他社との大きな違いです。商品の機能性だけでなく、エモーショナルな部分を重視しており、社内では「食のエンターテインメント」や「外食は最も身近なレジャー」といった言葉で、方向性が共有されています。
さらに特徴的なのが、二律背反ならぬ「二律両立」という考え方です。一方を選んで一方を諦めるトレードオフではなく、相反する要素をどうすれば両立できるか、常識を超えたトレードオンを考え続ける。この姿勢が日々のマーケティングやコミュニケーションにおける意思決定の軸になっています。
ーー「二律両立」という考え方について具体的に教えてください。
二律両立はさまざまな局面で意識されています。象徴的なのが、「手間暇かけてこだわって展開する」と同時に、「スピーディーに効率的に展開する」ことの両立です。丸亀製麺では、目の前で調理するオープンキッチンや、手間をかけたクラフト性といった体験価値を大切にしています。その一方で、裏側ではDXやシステム導入を進め、スピードやオペレーションの効率化も追求しています。お客さまに見える部分では人の手による価値を徹底しながら、見えない部分で最適化を進めている点が特徴です。
もうひとつの軸としているのが、「そこでしかできない体験」を、「世界中でできる体験」にしていくことの両立です。丸亀製麺は現在、国内約890店舗、海外約15ヵ国・地域に300店舗以上を展開(2026年3月末時点)していますが、グローバル展開を進める中で、どの店舗でも一定の品質と体験を担保しつつ、丸亀製麺ならではのオンリーな感動体験も追求しています。いわば、チェーン店でありながらチェーン店らしくない、そんな体験価値の実現を目指しています。
ーー 普遍性と個性の二律両立を実現するうえで、マーケティング戦略・戦術をどのように策定し、実行しているのでしょうか。
丸亀製麺は、4つの本部が一体となって機能しています。具体的には、マーケティング本部、営業本部、従業員の幸せ・体験(ハピネス・EX)、お客さまの感動(カンドウ)を企画・推進するハピカン企画本部、そしてブランド体験(BX)と顧客体験価値(CX)向上に特化した未来創造本部(2026年4月新設)です。社長の山口の統括のもと、それぞれに執行役員と本部長がおり、経営戦略(全社・事業)、商品戦略、マーケティング戦略、営業戦略など、4本部が同じテーブルで直接議論する構成になっているのが大きな強みです。経営理念に基づき、事業の方向性を定め、具体的な商品・サービスへ落とし込み、オペレーション設計、顧客体験・従業員体験デザイン、マーケティング・コミュニケーション展開、営業・販売に至るまで、一気通貫で価値づくりを実現しています。
コアな戦略部分を決めたら、戦術レイヤーは各専門部署でリードしていきます。この体制によるスピード感とアジャイルさが我々の強みです。




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