TOP PLAYER INTERVIEW #101

丸亀製麺・新マーケティング本部長が追求する「二律両立」と「記憶に残る感動体験」の進化

 

「記憶に残る体験価値」を設計する


ーーマーケティング本部のメンバーはどのように構成されていますか。

多種多様なバックグラウンドとケイパビリティを持つメンバーで構成されるマーケティング本部内では、私のようにマーケティング・コミュニケーション領域で経験を積んだ人材が多いですが、店舗営業から異動してきたメンバーもいます。彼らは店舗の実務や現場感覚に精通し、マーケターだけでは見落としがちな視点を補完してくれます。机上の議論にとどまらず「実際に現場でやるならどうか」という観点で議論できるため、施策のリアリティが格段に高まります。期間限定で発売している「丸亀うどんメシ」(2026年6月上旬まで販売予定)のキャンペーンでも、マーケティング本部のメンバーが特別に仕立てたPOPUPストア「丸亀うどんメシ 本能解放食堂」(丸亀製麺 神田小川町店)の店舗に立っています。現場で得られる気づきが、今後もさまざまなコミュニケーションに生かされると期待しています。
 
新商品「丸亀うどんメシ」に特化した期間限定POPUPストア(現在は終了) 画像提供:丸亀製麺

―― トリドールホールディングスは今年4月に組織改編し、マーケティング機能は傘下の事業会社直轄になったと聞いています。その背景と、勢いを増す海外展開への関与について教えてください。

先ほどお話ししたように、全社的に「マーケティングとは商売であり経営」の考えを持っているため、各ブランドと組織が成長した今、事業会社ごとにより独自性のあるマーケティングを強めていく狙いがあります。特に主要セグメントである丸亀製麺に関しては、海外を含めてよりスケールとスピード感を持って推進していくことが期待されています。

丸亀製麺のグローバル戦略については、社長の山口がリードしながら、我々も必要に応じて国内のナレッジ、ケイパビリティを生かしてマーケティング戦略立案や戦術実行のサポートを行っています。特に、「手づくり・できたて」のこだわりや「オープンキッチン」のライブ感といった「どこに行っても同じ感動体験ができる」というコアを削ぎ落とされないよう、ブランドの観点から取り組んでいます。

ーーうどんチェーンとして圧倒的なシェアを持ち、トリドールグループ全体の売上の約8割を担うなど、外食産業で強い存在感を放つ丸亀製麺ですが、コスト増などさまざまな懸念もある中で、さらなる成長に向けた課題をどのように捉えていらっしゃいますか。

3Cの観点で見ると、まずCustomer、すなわち市場環境においては、外食に限らずコスト高騰が進む中、価格で選ばれることの難しさは増しています。だからこそ重要なのは、「なぜこの価格なのか」と「それでも選ばれる理由は何か」を明確にすることです。私は秋元康氏の名言でもあるように「記憶に残る幕の内弁当はない」と考えています。均一な価値ではなく、いかにエッジの効いた「記憶に残る体験価値」として設計できているかが問われていると思います。

丸亀製麺の商品・接客・空間・オペレーションといったQSC観点も含めた独自の要素を一体として体験設計しながら、核となる価値を際立たせる。それを記憶に残る体験として届け、たとえば、お子さまなら「あの時のうどん屋さんにまた行きたい」と思っていただく。そんな、家族の会話の中で「また、丸亀製麺に行こうね」となっていただける「原体験」をつくっていくのが、私たちが大切にしている目標です。
 

2つ目はCompetitor、競合環境です。うどんに限らず競合環境は、外食に加え小売・コンビニまで広がり、コモディティ化が進んでいます。冷凍食品を含め、食の選択肢は多様化し、その質は全体的に向上しています。一方で原材料費の高騰などの結果、いざ値上げを判断しなければならない局面で、価格コンシャス層が一定数いる中、本来の強みとは異なる土壌に引きずり込まれるリスクも認識しています。「安さ」は必ずしも価値ではありません。我々は「食の感動で、この星を満たせ。」のスローガンに立ち戻り、「食のエンターテインメント」「外食は最も身近なレジャー」としての圧倒的な体験価値を磨き上げることで、選ばれる理由をつくっていきたいと考えています。

3つ目はCompany、自社の視点です。丸亀製麺は国内外で約1200店舗以上の規模(2026年3月末時点)となり、うどんカテゴリーの中では一定のブランド想起を獲得していますが、それ以外の食のカテゴリーを含めるとまだまだ伸び代があります。最も避けたいのは「無関心」、好きでも嫌いでもなく、食の選択肢に入らなくなることです。だからこそ、新カテゴリー商品を含めて「丸亀製麺って面白いことやっているね」と絶えず思っていただくポジティブな情報発信と、店舗での感動体験を通じて来店頻度を高め、ファンを育てていくことが今後の大きなテーマと考えています。

ーー 新体制を率いていくにあたって変えたいこと、挑戦したいことはありますか?

変化し続けることを常に意識しています。よく引用するのがダーウィンの「最も強いものが生き残るのではなく、最も変化に適応できるものが生き残る」という言葉です。業界内でトップのポジションにあるからこそ、なおさら変化し続けなければならないと感じていますし、本部内でもそのように話しています。

新しい商品やマーケティング戦略を検討する際は、最初から制約を設けないことを大切にしています。「店舗オペレーションは可能か」といった観点から入るのではなく、まずは制限なくアイデアと会話を広げる。社内調整や前提条件から入ってしまうと、どうしても発想が丸くなってしまいがちです。失敗を恐れずに仮説を立て、データで検証していく。それが最終的な成功体験につながっていくと確信しています。

丸亀製麺のマーケティングには、良い意味で属人性を生かし、自由に考えや仮説を広げながらエッジのあるアイデアを生み出していく文化があります。この仕事の進め方を、今後は言語化・可視化し、仕組みとして再現できる形にしていくことも重要だと考えています。「個」の力に依存するだけでなく、個体「群」(≒組織)として再現性を持たせていく。そんな「二律両立」の基盤づくりにも注力していきたいです。

―― 本日はありがとうございました。


 
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