CMO Frontline ―マーケティングトップの思考と挑戦に迫る― #02
レッドバロン「完成されたビジネスモデル」を未来へどうつなぐ? CMO関口憲義氏が挑む「N=100%」のマーケティング
CMO(最高マーケティング責任者)――。経営層の一員として全社のマーケティングを統括し、事業成長を牽引する存在として注目を集める一方、急速なテクノロジーの進化をはじめとする外部環境の変化を背景に、その役割は拡張・分散しつつある。グローバルでは、CMOという役職のあり方そのものを問い直す動きも出てきている。
本連載は、まさにその過渡期に立つCMOたちの「最前線」を追う。彼らが描く戦略、組織を導くリーダーシップ、そして多彩なキャリアを通じて磨かれた鋭い洞察は、企業やマーケットに何をもたらすのか。最前線で指揮を執るその姿は、先行き不透明な時代を行くマーケターにも指針を与えてくれるに違いない。
第2回は、バイク販売国内最大手のレッドバロンでCMOを務める関口憲義氏にインタビュー。1972年に創業し、非上場ながら国内300超の直営店を展開して総売上高884億円(2025年10月)を誇るレッドバロンは、昭和から続くビジネスモデルが現在も盤石であるという。その秘密は何なのか。電通出身でさまざまな業種のマーケティングに従事してきた関口氏のCMOとしての役割とは。「JUST FOR RIDERS」という創業者の魂を継承し、外部資本との提携も経て「第二成長期」を迎えるレッドバロンの「今」を聞いた。
本連載は、まさにその過渡期に立つCMOたちの「最前線」を追う。彼らが描く戦略、組織を導くリーダーシップ、そして多彩なキャリアを通じて磨かれた鋭い洞察は、企業やマーケットに何をもたらすのか。最前線で指揮を執るその姿は、先行き不透明な時代を行くマーケターにも指針を与えてくれるに違いない。
第2回は、バイク販売国内最大手のレッドバロンでCMOを務める関口憲義氏にインタビュー。1972年に創業し、非上場ながら国内300超の直営店を展開して総売上高884億円(2025年10月)を誇るレッドバロンは、昭和から続くビジネスモデルが現在も盤石であるという。その秘密は何なのか。電通出身でさまざまな業種のマーケティングに従事してきた関口氏のCMOとしての役割とは。「JUST FOR RIDERS」という創業者の魂を継承し、外部資本との提携も経て「第二成長期」を迎えるレッドバロンの「今」を聞いた。
昭和に構築されたビジネスモデルが現在も競争力を維持
―― 関口さんは電通、ボルボ・カー・ジャパン、損保ジャパンなど、異業種でマーケティングを経験され、レッドバロンに2025年4月にジョインされました。レッドバロンのマーケティングにはどんな特徴がありますか。
前提として、世界中を見渡してもバイク専業の小売という業態は少ないようです。明確なデータではありませんが、レッドバロンはバイク専業小売業として世界一の規模とも言われます。国内の中古バイク市場は個人間取引も多いなか、当社のシェアは流通全体の約3割と推定されています。これは創業者が培ったビジネスモデルとネットワークによるところが大きいです。高い利益率を維持したまま、現在はプライベート・エクイティ投資が入り、「第二成長期」と呼ぶべき時期を迎えています。
レッドバロンは小売業ですが、本質的には会員組織に近いのです。非常に強い顧客基盤に支えられたビジネスモデルは昭和期に構築されながら、令和の現代でも十分な競争力を維持しています。入社した際、その完成度の高さに驚いたものです。
レッドバロン 執行役員CMO マーケティング戦略部長
関口 憲義 氏
1988年、電通に入社。マーケティングの実務畑を歩み、大手自動車会社、大手電機メーカー、大手通信キャリア、外資系トイレタリー会社などのマーケティング・コンサルティング、ブランディング、新規事業戦略立案に関わる。2001年、海外研修員として米国へ。2003年5月、ノースカロライナ大学チャペルヒル校、キーナン=フラグラー・ビジネス・スクール(MBA)修了。2014年11月1日よりボルボ・カー・ジャパンに入社、シニア・マーケティング・ディレクター。2021年1月1日損害保険ジャパン入社、執行役員待遇マーケティング部長。2025年4月レッドバロン入社、現職。その他、長野県塩尻市 特任CMO、(財)大学生奨学財団 理事、情報経営イノベーション専門職大学客員教授(マーケティング)を務める。専門はマーケティング、ブランディング、CX / DX、CSR/CSV。
関口 憲義 氏
1988年、電通に入社。マーケティングの実務畑を歩み、大手自動車会社、大手電機メーカー、大手通信キャリア、外資系トイレタリー会社などのマーケティング・コンサルティング、ブランディング、新規事業戦略立案に関わる。2001年、海外研修員として米国へ。2003年5月、ノースカロライナ大学チャペルヒル校、キーナン=フラグラー・ビジネス・スクール(MBA)修了。2014年11月1日よりボルボ・カー・ジャパンに入社、シニア・マーケティング・ディレクター。2021年1月1日損害保険ジャパン入社、執行役員待遇マーケティング部長。2025年4月レッドバロン入社、現職。その他、長野県塩尻市 特任CMO、(財)大学生奨学財団 理事、情報経営イノベーション専門職大学客員教授(マーケティング)を務める。専門はマーケティング、ブランディング、CX / DX、CSR/CSV。
―― 強固な顧客基盤とビジネスモデルは、どのようにして培われたのでしょうか。
「バイク乗りが安心して、一生バイクを楽しみ続けることができるようにするのが仕事」という、創業者の強い意志の賜物だと思います。LTVを高めようして構築したというよりも、「JUST FOR RIDERS」の企業理念を突き詰めていった結果、自然と培われたものと言っていいでしょう。
たとえば、パーツの品揃えが象徴的です。希少性の高いバイクや、年数が経過したバイクは部品が欠品していたりして、修理が難しいケースが多いのですが、当社は68万点にのぼる修理パーツ、エンジンだけでも4000機を保有しています。ROAを考えると、一般に在庫はできるだけ軽くしたいものですが、当社はお客さまの利便性を優先して修理パーツの在庫を豊富にし、場合によってはゼロから制作したりすることもあります。その結果、「当社しか持っていないパーツ」が大量にある状態になり、「レッドバロンでしか修理できない」という状況が創出されます。
また、全国に300超ある店舗は、フランチャイズではなく全て直営です。しかも全店舗が認証工場としての整備機能を持っています。これも経営効率を考えれば、フランチャイズにしたほうが投資を抑えることができ、工場も近隣地域をまとめて一括にしたほうがいいのかもしれません。しかし、たとえばバイクの主な目的であるツーリングの際、山の中でお客さまのバイクが故障したら、とても困ってしまいますよね。当社は沖縄以外全国にお店があるので、平均到着時間30分で最寄りからスタッフが駆けつけることができます。直せるものはその場で修理し、難しければ店まで運び、お客さまには移動・宿泊費の一部をお渡しします。受け取りの際は自社流通網を使い、お客さまのご都合のいい店舗まで運送します。当社で任意保険に入っていただければ、これらのサービスがずっと無料で受けられます。
さらに「オイルリザーブシステム」も特徴的です。あらかじめ一定量のオイル料金を預けていただくことで、全国どこの店舗でもフレッシュなオイル交換ができ、使い切れなかった分は買い戻します。今で言うサブスクリプションですが、そんな言葉がない20年以上前から、レッドバロンはこうした仕組みを導入し、結果的に来店頻度を増やしてLTVを向上させてきました。数は多くありませんが、ツーリング先で立ち寄れる休憩スポットやサーキットも自社で運営しています。
このように「JUST FOR RIDERS」の理念のもと、他に真似できない、バイクライフ全てをカバーする環境をつくり出したことによって、9割を超えるリピート率を実現しています。
―― 国内のバイク専業であることに対して、国際情勢や人口減少からくる不安はないのでしょうか。
当然ながら、石油や輸入パーツといった面で世界情勢の影響は免れませんし、人口減少によって国内マーケットの成長性が鈍化していることは認識しています。一方で、バイクの免許保持者は人口の15%程度はおり、一定の需要をキープしています。当社は輸入高級車も扱っており、それはそれで熱量の高いユーザーに支えられていますが、バイクに乗るのはそういった人ばかりではありません。手頃な価格帯でも十分な機能性や趣味性を備えた数十年前のバイクが、今も元気に日本中を走っています。これは大手4社に代表される日本のバイクメーカーの素晴らしい功績です。小売業の我々が「日本の文化」などと言っていいかどうかは分かりませんが、日本のバイク乗りを支えるインフラではありたいと思っています。「うちがやらなきゃどこがやる」くらいの気概を持っています。
ちなみに、当社は基本的に値引きをしません。お客さまに価値のある商品、質の高い環境を整備してお届けするための方針です。「在庫=悪」ではなく、「在庫=これから買っていただける宝物」という考え方が根付いているのは、今の日本の小売業では珍しいことだと思います。




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