デジタル広告で〝信頼〟を失わないために。~JICDAQと考える、マーケターが向き合うべき「広告品質」~ #02

なぜ経営層や管理層がデジタル広告の「掲載品質」を経営の重要課題と捉えなければならないのか【JICDAQ寄稿】

前回の記事:
デジタル広告の「落とし穴」 今、問うべき「広告の品質」とは【JICDAQ寄稿・新連載】
  日本の総広告費の過半数を超えたデジタル広告。ターゲティングがしやすい、効果が数字で把握できるなどメリットが多い反面、特に運用型広告は掲載品質の担保が難しく、アドフラウド(広告詐欺)やブランド毀損のリスクと表裏一体だ。生成AIの浸透によってますます複雑化するこうした課題に、マーケターはどう向き合うべきだろうか。

 本稿はデジタル広告関連事業者の認証付与を行うJICDAQ(ジックダック)事務局による寄稿連載の第2回。効率が重視されるデジタル広告は現場担当者や広告会社に委ねられがちだが、経営層・管理層までもがその「掲載品質」を経営上の重要課題と捉える必要があるのはなぜなのか。その理由と求められる条件を整理する。
 

「効率追求」「最適化」の背後に潜む重大なリスク


 現代のデジタルマーケティングにおいて、AIを活用した広告配信の最適化は、マーケティング業務の効率を劇的に向上させています。しかし、経営層が直視すべきは、「デジタル上の効率(短期KPI)」の向上が、必ずしも「事業全体の利益」の向上につながるとは限らないという〝不都合な真実〟です。

 JIAA(一般社団法人日本インタラクティブ広告協会)が発表した「2025年インターネット広告に関するユーザー意識調査(定量)」によれば、インターネット広告が「信頼できる」との回答はわずか21.6%に留まっています。さらに、「不適切な広告の掲載はメディアの信頼を損なう」と回答したユーザーは54.4%にのぼり、「不適切なメディアへの広告掲載はブランドの信頼を低下させる」という回答も39.3%を占めています。

 こうした生活者の厳しい視線がある中で、「安く・広く」を優先する配信は、意図しない掲載環境での露出を招き、結果として企業ブランドの価値を損ない、オフラインも含めた事業全体の利益を損なう恐れがあります。

 この「短期的なデジタル指標と事業全体の成果とのギャップ」を理解する上で、日本の商流の実態を忘れてはなりません。経済産業省が公表している最新の調査によれば、物販系分野のBtoC-EC化率は9.78%に留まり、最終的な購買行動の多くは依然としてリアルな接点で行われています。特に生活に密着した「食品、飲料、酒類」のEC化率は4.52%、「化粧品、医薬品」は8.82%と極めて低く、日常生活の大部分はオフラインの顧客体験に支えられています(参照:経済産業省 令和6年度電子商取引に関する市場調査)。

 一方で、ブランド認知や購買検討の形成にはデジタル広告も大きな影響を及ぼしています。だからこそ、短期的なデジタル指標の最適化だけを追求し、不適切な掲載環境によってブランド毀損を招くことは、オンライン・オフライン双方の事業成果を損なうリスクにつながります。
 

 

短期KPIの裏側に潜む〝見えないコスト〟


 経営層が注視すべきは、現場から報告される短期KPI(CPCやROAS等の成果管理指標)の背後で、将来の顧客獲得コストが見えないかたちで膨らんでいないかという点です。

 前回「デジタル広告の落とし穴 今、問うべき『広告の品質』とは」で解説した広告掲載の品質が十分に担保されていない状態での配信は、一時的な数値の裏側で「ブランドの毀損」という見えにくい負債を積み上げ、結果として企業ブランドの価値や中長期的な収益性に影響を及ぼす可能性があります。

 この点については、総務省「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」(以下、総務省ガイダンス)においても、「広告配信の成果指標としてのクリック単価(CPC)、コンバージョン数、広告費用対効果(ROAS)等の指標は、広告キャンペーンの即時的な成果を測定するためには適した指標であるが、同指標に基づいて短期的な成果のみを重視してしまうと、広告の配信品質やブランドの長期的な信頼性が損なわれる可能性がある。」「経営層・管理職層が広告配信の目的に応じて各指標を正しく理解した上で、指標の多様化や、デジタル広告の配信品質管理を行うためのルール整備、具体的な取組の選択を主導することが求められる。」と示されています。

 
 不適切な掲載環境によるブランド毀損は、ブランド想起や購入意向の低下を招き、結果として広告投資あたりの獲得効率を悪化させる可能性があります。その結果、同じ成果を得るためにより多くの広告費が必要となるなど、中長期的なマーケティング効率の低下につながることも考えられます。

 こうした一連の構造を踏まえると、広告掲載の品質確保は単なる「守り」の施策にとどまらず、ブランドの資産価値を維持・向上させ、持続的な収益性の確保に資する取り組みとして位置付けることが重要です。このように広告掲載の品質は、マーケティング施策の運用課題ではなく、中長期的な企業価値に影響する経営課題として捉える必要があります。
 

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