成長企業から考える「マーケターの定義」 #01

博報堂という会社の人間として生きるのか?マーケターという職業人として生きるのか?【Indeed 水島剛】

博報堂を辞める、という決断の背景

 こんな感じで、同じ会社だけど色々と環境を変えながら目の前のことを一生懸命に取り組んで働いて、気が付いたら入社して10年が経っていました。当時、僕は34歳。少し上を見ると、ディレクターになるタイミング。会社側の人間になるタイミングが近づいていました。

 歴史ある大きな組織の中で会社側の人間になるということは、当たり前のことだけど、会社のために働くということ。広告代理業という生業からすると、クライアントのために働き、その先にいる生活者の生活を豊かにするために働く。僕らの仕事は「三方よし」を創る仕事。だけど、現実的には様々な局面において、優先順位が完全なる並列な「3方よし」ではなく、「博報堂よし」が前提としてあり、その先に他の「よし」がある。多分、会社側の人間になるということは、それを完全に受け入れることだと、少なくともその時は思ったのです。

 つまり、簡単に言うと、「博報堂という会社の人間として生きるのか?もしくはマーケターという職業人として生きるのか?」という問いに、入社10年目の僕は向き合っていたのです。

 結論は、後者を選ぶことになるのですが、博報堂には今でもとても感謝しています。

 マーケターが日々取り組んでいることは、共感の輪を拡げ、最大公約数を創っていく、もしくはWinを様々なステークホルダーに拡大していくような仕事です。なので、博報堂には、会社に所属していながらも、実は会社の外に身を置いて働いているような感覚の人が多く、心では会社を裏切っているような人こそが、ビジネス上のバリューを発揮する優秀な人である、というような矛盾をはらんでいるようなところがあります。

 つまり、博報堂よりもクライアント企業のWinを大事にする、もしくは生活者の幸せを大事にする、といったようなスタンスで働くということです。博報堂は、それが許されている、場合によっては推奨されている環境だったのですが、入社して10年目に関西支社にいたころの僕には、そのバランスが少し会社の売上重視に寄ってきているように見えたのも事実でした。

 そして、会社のビジネスと世の中から求められているマーケティングソリューションの間にも、少し距離が空いてきているような感覚もあり、自身が本当の意味で企業のマーケティング課題やビジネス課題を解決できるようになるためには、このタイミングで一度外に出てみることが必要だと思ったのです。

 働く場所として、2社目に選んだのはLINEでした。

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