新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #33

W杯決勝ハーフタイムショーも主催。シャキーラにガガ、BTS…世界のトップアーティストがこぞって協力するGlobal Citizenとは?

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 日本の音楽・映画・ゲーム・漫画・アニメなどのエンタメコンテンツが、世界で注目されることが多くなった昨今。本連載は、さまざまなエンタメ領域の舞台裏でヒットを生み出す旗手たちの思考を、創作プラットフォーム「note」のプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏が解き明かしていく。

 FIFAワールドカップ決勝(米国時間7月19日)のハーフタイムショーで、マドンナやシャキーラ、BTS、ジャスティン・ビーバーといったトップアーティストのパフォーマンスをプロデュースする「グローバル・シチズン(以下、GC)」をご存知だろうか。

 極度の貧困撲滅や環境保護を目的とした世界最大級のアドボカシー(啓発・政策提言)プラットフォーム。2008年に創設されたGCが、トップアーティストや国際機関、大企業などの協力を得てここまで大きな存在になれたのはなぜなのか。寄付文化の乏しいとされる日本でも新たなうねりを生み出せるのか−。日本初の音楽イベントを前に来日したGCの共同創設者Simon Moss氏にnote徳力基彦氏が聞いた。
 

若者とポップカルチャーの力で社会を変化させる


徳力 恥ずかしながら、私はこれまでグローバル・シチズン(以下、GC)を知りませんでしたが、ワールドカップ決勝で初めて行われるハーフタイムショーをプロデュースするのがGCと聞いて驚きました。まずは「Global Citizen」とは何なのか、その起源を教えていただけますか?

Simon  GCは世界の7億人以上が苦しむ「極度の貧困」を終わらせ、最も貧しい人々が苦しめられている「気候変動」に立ち向かうために、世界中の何百万人もの若者がコミットするムーブメント(運動)です。2008年に私を含む4人のオーストラリア人が立ち上げたアドボカシー(政策提言・啓発)組織で、一般的なNPOとは少し異なるモデルを採用しています。つまり、資金を集めて自分たちで使うのではなく、影響力を持つ優れたパートナーと連携し、彼らが資金を確保し、政策を変えるための手助けに使います。

このモデルを私たちは「ポップ&ポリシー」と呼びます。ポップはポップカルチャー、つまり音楽やスポーツ、アートなど。これらエンターテインメントの力を借りて、パートナーの団体や企業と連携することで、非常に大きなスケールで社会を変革することができるのです。
 
Global Citizen 共同創設者兼最高執行責任者(COO)
Simon Moss 氏

キャンペーンとコミュニティ教育の専門家。2030年までに極度の貧困を終結させるために世界市民が貢献できる道をつくることに全力を注ぐ。GCの共同創設者としてプラットフォームとフェスティバルの立ち上げ・成長を支え、組織が関わってきた100件以上のキャンペーンを統括してきた。メルボルン大学で開発学修士号を取得。

徳力 始まりの段階からポップカルチャーを巻き込んでいたとは、非常にユニークなモデルですね。

Simon  ユニークに見えるかもしれませんが、音楽やポップカルチャーを交えたアドボカシー自体は昔からあったものです。エンターテイナーやメディアと連携し、彼らを通じて発信することでどれだけ政策に影響を与えられるか、私たちは世界中の事例から学びました。オーストラリアで始め、世界に広がりつつあるこのムーブメントが、今回、日本でも本格的に始まり(※)、今後継続していくことを、私はとても楽しみにしています。

※編集部注※2026年6月18日にGC日本初の音楽イベント「Global Citizen Live: Tokyo」を都内で開催し、YOSHIKI 、&TEAM、AI、千葉雄喜らが出演。観客はチケット購入のほか、GCのアプリでグローバルヘルスや母子保健に関するコンテンツを視聴するなどしてアクションポイントを貯めると、無料チケットに応募することができた。チケット売上はFIFAワールドカップ2026と連動した「FIFA Global Citizen 教育基金」に寄付され、世界中で子どもの教育プログラムを提供する団体に提供される。

徳力 モデル自体は昔からあるというお話ですが、ではGCが世界的に成功してきたのはなぜでしょうか。

Simon  「実現できるはずの素晴らしい世界のビジョン」を、「大きな野望」と共に示してきたからだと思います。

たとえば日本の人々、特に若者は小学生の頃からSDGsについてよく知っていますよね。でも彼らは「どうやってそれを実現できるのか」「一市民としてどう関わればいいのか」と疑問を持っています。

私たちの成功要因は、「世界を変えるという大きな志」と、「普通の人でも頻繁にできる具体的な行動」を融合させたことにあります。世界の課題は往々にして難しすぎて、遠すぎますが、若者の間ではそうした課題を解決する行動への強い欲求、渇望のようなものがあります。そしてそれは、世界を心から憂える著名人やアーティストも同様です。

私たちが他団体と違うのは、「変化を起こしたい」と思う若者たちに、その具体的な方法として、スマホアプリでの署名や動画視聴といった無料でできる簡単な行動を示している点です。遠すぎて見えないゴールを、身近に実現できるようにする。そのために行動を呼びかけてくれるアーティストたちのサポートには本当に感謝していますし、誇りに思っています。

徳力 エンターテインメントにおけるチャリティーはこれまで、オプションの一つのように考えがちでしたが、CGの音楽イベントはそうではないのですね。根幹から社会課題への思いをアーティストとファンが共有している。
 
note noteプロデューサー/ブロガー
徳力 基彦 氏

NTTやアジャイルメディア・ネットワーク等を経て、現在はnoteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNS活用のサポートを行っている。個人でも、日経MJやYahooニュース!個人のコラム連載等、幅広い活動を行っており、著書に「普通の人のためのSNSの教科書」、「アルファブロガー」等がある。

Simon 私たちはイベントやキャンペーンを一種のエコシステムと捉えています。アーティストの中には「社会課題のために何かしたい」と考える人がいるけれど、自力で実現できる人は多くない。一方、ポップカルチャーを使わずに素晴らしい活動をするNGOや国際機関もたくさんありますが、いい活動でもなかなか知られないという課題がある。それに、日本政府のように、年に170億ドルもの莫大なお金を国際貢献に投資し、世界中の人々の命を救っている事実があるのに、それもやはり知られていないのが実情です。このような人や団体を連携させることを、私たちはconvening(招集力)と呼んでいますが、これに市民社会を加えた4者をつなぎながら、音楽やスポーツを通じて一緒に課題解決を目指していきます。

つまり私たちの活動は、専門知識を持つ政府やNGOのスタッフでなくても、アーティストのファンであったり、社会課題のために何かしたいと思ったりしている人が、自分の家からできる小さな行動で一緒に課題解決に参加できる仕組みをつくっている。そのことが差別化ポイントだと考えています。

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