新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #33

W杯決勝ハーフタイムショーも主催。シャキーラにガガ、BTS…世界のトップアーティストがこぞって協力するGlobal Citizenとは?

 

コロナ禍にかかってきた3つの電話


徳力 マドンナにシャキーラ、BTS(後にジャスティン・ビーバーの出演も決定)など超人気アーティストが出演するFIFAワールドカップ決勝のハーフタイムショーについて、主催するGCのことやショーの背景を知らずに、単に「FIFAが人気アーティストを呼んで集客しようとしている」と考える人もいるかもしれません。FIFAとの連携の経緯について教えてください。
 
画像出典:FIFA公式サイト

Simon GCのすべてのイベントやキャンペーンは、まず「どのような社会的インパクトを生み出せるか」からスタートします。FIFAのGianni Infantino会長と初めて会ったのは、2023年にNYで開催したグローバル・シチズン・フェスティバル(社会課題へのアクションによってチケットを入手できるコンサート)で彼がスピーチしてくれた時でした。FIFAが世界にどんな貢献ができるか模索していた彼は、私たちに問いました。「世界中のすべての国がサッカーをしている。どうすればサッカーの力を社会的インパクトに変えられるだろうか?」と。

対話を重ね、私たちはFIFAと共に「グローバル・シチズン教育基金」という、社会課題解決のための新しい資金獲得のアイデアを生み出しました。世界中の子どもたちに質の高い教育とサッカーを届けるために1億ドルの調達を目指すプロジェクトです。FIFAワールドカップ2026ではチケット1枚ごとに1ドルが寄付され、集まった資金は世界中で草の根の教育プログラムを提供している団体に配分されます。また資金の一部はFIFAの「Football for Schools(※)」に提供され、サッカーを通じた子供たちの教育やライフスキルの習得に充てられます。嬉しいことに相当の寄付が集まり、既に申請のあった団体への資金提供も行われていて、助成先には日本の団体(SDGs・プロミス・ジャパン、UBUNTU FSプロモーション)もいます。

※編集部注※FIFAが2019年にユネスコと立ち上げた教育プログラム。サッカーを教育に組み込むことでライフスキルを育むなど、子どもたちをエンパワーメントすることを目的としている。日本サッカー協会(JFA)も2026年度から参画し、参画協会・連盟数は153にのぼる。(参照:日本サッカー協会 公式サイト)

徳力 スポーツイベントのハーフタイムショーというと巨額のお金が動く商業的なイメージが強いですが、すべてが教育資金に回されているとは驚きです。ちなみに、出演するアーティストのギャラはどのように?

Simon GCのすべてのイベントで、アーティスト自身は出演料を受け取っていません。全員が無償のボランティアとして、私たちのミッションに共感し、時間を提供、ステージでパフォーマンスをしてくれています。ただし、バックダンサーや制作など裏方で支えてくれているスタッフには必要なお支払いをしています。

私たちはこのやり方を数年続けていますが、アーティストの情熱には頭が下がります。ワールドカップの公式アンセム『Dai Dai』を歌うシャキーラは元々、彼女自身が学校を建てる活動を20年間にわたり続けています。私は2007年に初めて彼女に会いましたが、その時も彼女は南米に学校を建てたいと熱心に語っていました。今回も『Dai Dai』によって得られる利益はすべて基金に寄付されます。人々は彼女の新曲を聴くことで、この取り組みのストーリーの一部になれるのです。
 
動画出典:FIFA公式YouTube

ショーを演出するコールドプレイのボーカリスト、クリス・マーティンも、2015年にSDGsが国連総会で採択されて以来、私たちと一緒にボランティアで活動してくれています。昨年も一緒にアマゾンに行き、先住民族のコミュニティ支援と森林保護のために10億ドルを集めるキャンペーンを行いました。10年前にはインドで屋外排泄を無くし、衛生環境を整えるトイレ設置プロジェクトにも同行してくれました。彼は「GCとコラボレーションすれば、個人でやるよりも巨大なインパクトを生み出せる」と信じてくれているからこそ、世界中どこへでも一緒に行ってくれるのです。

日本でもGC初のイベント「Global Citizen Live :Tokyo」でYOSHIKI、&TEAM、AI、千葉 雄喜など日本の素晴らしいアーティストたちがボランティアで出演してくれます。今後、さらに素晴らしいコラボレーションが始められることにワクワクしています。
 
「Global Citizen Live :Tokyo」における&TEAMのパフォーマンス(画像:Getty Images for Global Citizen)

会場(東京国際フォーラム)を埋め尽くす観客(画像:Getty Images for Global Citizen)

徳力 アーティストが個人で社会貢献活動をしている例はありますが、やはりGCのネットワークを利用することで、社会インパクトを最大化できるのでしょうか。

Simon 象徴的な出来事を話しましょう。コロナのパンデミックが起きた時、ある週末にGCに3本の電話がかかってきました。1本目はWHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長。「みんなが家にいなければならなくなる。なぜ今、グローバルな連帯が必要なのか、人々に理解してもらうために力を貸してほしい」というものでした。

2本目はクリス・マーティンからです。「おい、家から出られないなんてクレイジーだ。人々が孤独を感じないように、インターネットで何かできないか?ブログでも書こうか?」

3本目は国連の副事務総長のアミナ・モハメド。「医療従事者や人々を支援するために、みんなを繋ぎ合わせることはできないか?」と相談されました。

私たちはすぐ動き、最初はインスタグラムでアーティストが自宅からスマホで出演するライブシリーズを始め、やがて枠が空いたテレビ放送を活用して「One World: Together At Home」というバーチャルコンサートをWHOと共同で開催しました。レディ・ガガらアーティストは企業の浮いた広告費をコロナ対策に寄付することも呼びかけてくれ、結果的にこのシリーズでは1億2790万ドルものコロナ対策資金を集めたのです。2020年3月15日に活動が始まり、4月18日に全世界に「One World: Together At Home」が配信・放送されるまでは、私の人生で最も忙しく、最もハードに働いた時期でした。
 
動画出典:Global Citizen 公式YouTubeサイト

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