新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #33

W杯決勝ハーフタイムショーも主催。シャキーラにガガ、BTS…世界のトップアーティストがこぞって協力するGlobal Citizenとは?

 

日本の社員から生まれたチャレンジ。若者や企業は何ができるか?


徳力 GCの活動は日本ではまだほとんど知られていません。日本の若者とはどのように連携して、彼らにどのようなアクションを期待しますか?

Simon 私がこれまでに出会った日本の人々、特に若い世代は、既に「グローバル・シチズン(世界市民)」的な価値観を持っています。彼らは自分のコミュニティを大切にし、周りの人のことを深く思いやっています。多くの国が内向きになり、世界に対して一歩引いた態度をとろうとする中で、日本政府や企業、日本のカルチャー、そして市民は、むしろ世界に踏み出そうとしているように見えます。私たちはその背中を押したいのです。

日本が世界で果たす役割について、国際社会ではいささか過小評価されていると感じます。GCは今後5~10年間で、日本の若者が世界に与えるインパクトを可視化し、彼らと世界をつなぐ架け橋になりたいと思っています。若者たちにとって、署名や寄付をした後、一体何が起こるのか、自分はどんなインパクトをもたらせるのか分かることが重要です。GCは今後もアプリやイベントを通じて、若者たちに「本当にこんな変化が可能なんだ」というストーリーを示し、さらなる行動を促していきます。

徳力 私もGCのアプリをダウンロードしてみましたが、面白いですね。社会問題に関するコンテンツを見たり、アーティストの呼びかけに応じてSNSで発信できたり、署名したりといった簡単なアクションでポイントが貯まり、コンサートやイベントへのチケット抽選に参加できるなどの特典が得られる。たしかにこれなら、動画を楽しんだりアーティストを応援したりしながら、手軽に社会活動に参加できそうです。

一方で私を含めて多くの日本人は、寄付はお金持ちの文化という意識があります。若い人は世界のために何かしたいという意識が強いかもしれませんが、日本は欧米に比べて寄付文化が発達していません。日本で活動を根づかせることができるでしょうか。

Simon 米国では「コンサートのチケットをあげるから、みんなで公園やビーチのゴミ拾いをしよう」と呼びかけますが、日本ではその必要はありません。日本の人は報酬を与えられなくても自主的に街をきれいにするスピリットや価値観を既に持っているからです。日本の文化には、素晴らしいイノベーションの芽が溢れています。

一方で日本の若者たちは、先ほども言いましたが自分たちの政府がODAなどを通して、世界をリードする規模で国際貢献している事実をあまり知りません。そのお金は命を救うワクチンや、最も脆弱な地域を気候変動から守ること、紛争地域へ食料を届けることなどに使われています。

日本政府でも財政の優先順位についてシビアな議論がされていると思いますが、私は日本の若い人々に、自分たちの国が世界で行っていることを正しく知り、誇りに思ってほしいのです。たとえば、政策共創プラットフォームを提供するPoliPoliのような、若者が政府や政治家と直接対話できる場をつくっている団体の活動はエキサイティングだと思います。そういった活動を盛り上げるのを手伝いたいですし、日本人が目指す未来を見つけ、その実現に取り組める場をつくっていきたいです。

もちろん、米国のように請願書を大量に書き、政府に電話をかけまくるということは、日本の人はあまりしないでしょう。日本の価値観を理解しつつ、共通する部分でどういう変化を一緒に生み出していけるのか、楽しみにしています。
 

徳力 最後に、日本の企業にはどのようなパートナーシップを期待しますか?

Simon 3つアプローチが考えられます。まずは技術力を介してイノベーションを生み出し、それをビジネスとして世界の社会課題解決に提供していくこと。これは何も特別ではなく、伝統ある企業をはじめ、日本では昔からそういった価値観で実践されてきたことを、もっと活性化させていくイメージです。

2つ目はメディアとの連携です。日本には1億2000万人以上の日本語を話す素晴らしいコミュニティがあります。企業はメディアと協力して「今世界で何が起きているのか、何が起こり得るのか」「何に希望を持てるか、何を心配すべきか」といったストーリーを発信していただきたいです。そのことが、若者にとって自分が情熱を持てる分野、働きたい分野を見つける手がかりになるでしょう。

3つ目はGCのイベントや活動のスポンサーとして応援してくれることです。GCは各企業の掲げるゴールや事業内容と合致する形で連携していきます。

たとえば、米国に本社のあるメットライフはGCとパートナーシップを締結し、グローバル・シチズン教育基金への創設資金を提供するなど、さまざまな形で支援してくれています。一般の人々が基金に参加しやすいように、リフティングする動画にハッシュタグを付けてSNS投稿するとメットライフから5ドルが基金に寄付(最大10万ドル)されるソーシャルメディアチャレンジ「#Footworks For Futures」も始まりました。これは日本法人であるメットライフ生命の社員数人が起案したプロジェクトで、世界中にチャレンジが広がっています。新しい資金調達のアイデアがパートナー企業の社員から生まれるというのも、とても嬉しいです。今後はこういった日本発のストーリーや、資金を受け取った日本の団体の活動風景もアプリのコンテンツとして発信していきたいです。
 
動画出典:Global Citizen公式YouTube

政府もNPOも社会課題解決のための資金確保に悩む中、子どもたちのより良い未来のために、どうやって意欲ある企業やアーティストから新しい資金を集め、必要なところに分配できるかが問われています。私たちの組織運営や活動資金は、GCの思想に深く共感してくださる企業や財団、そして一部の裕福な個人の方々からの支援のミックスによって成り立っています。だからこそ私たちは、一般の人々が無料で参加でき、小さな行動で世界を変えることができるプラットフォームであり続けられるのです。

徳力 ありがとうございます。日本での活動がうまくいくことを願います。

【対談後記】
今回、Global Citizenの活動についていろいろとお聞きする中で、衝撃を受けたのは、私たちがシンプルにアーティストの音楽を楽しんだり、ライブのチケットを手に入れたりするための行動をするだけでも、世界の貧困を減らすための団体の活動の支援につながるという構造でした。

どうしても「寄付」というと、生活にゆとりのある人がおこなうという印象が強く、一般人にはあまり縁がない印象を持ち続けてきてしまったのですが、音楽やスポーツのパワーを、世界をよくするためのエネルギーに転換するGlobal Citizenの取り組みは本当に興味深いです。

また今回もう一つ驚いたのは、Simonさんが日本政府の国際貢献の活動を高く評価していたことです。 日本人からすると、日本が世界の貧困を減らすために貢献しているイメージは正直あまりなかったのですが、実は日本にいながらでもできることがさまざまにあることを教えていただき、反省する結果になりました。

今後Global Citizenが日本での活動を強化していくということなので、日本企業との新しいコラボレーションが多数生み出されることを期待したいです。(徳力基彦)
 
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