マーケティングで社会課題を解決できるか #01

男性の100人に1人は精子がいない。リクルートで精子のビジネスを始めたわけ

リクルートで精子のビジネスを始めたわけ

 私は2011年に大学を卒業し、新卒でモバイル系のコンテンツプロバイダーに入社しました。

 そこで配属されたのは「ルナルナ」という生理日の管理を行うための女性向けヘルスケアサービスの部署。「ルナルナ」は当時から多くのユーザーに使用されており、コンシューマー向けでマネタイズに大きく成功した数少ないヘルスケアサービスでした。

 女性向けサービスだったこともあり、部署のメンバーは私以外全員が女性。ルナルナでヘルスケアサービスの企画を学び、同時に妊活・不妊といった生殖領域のリアルや課題を肌で感じました。

 その後、ヘルスケアの領域で社会課題を解決できるサービスを自分で立ち上げたいと考えた際に、事業拡大のポイントになると思ったのが「ヘルスケアに興味の無い人との接点の大きさ」でした。

 先述した通り、ヘルスケアに興味がある人は多くありません。ヘルスケア系のサービスを使ってもらうためには、ヘルスケアと親和性の高い領域のサービスと一緒にコミュニケーションを取ることが効率が良いと考え、美容や飲食、旅行の領域で大規模にサービスを展開しているリクルートライフスタイルへの入社を決めました。

 入社後に配属となったのは、新規事業の開発を行う「ビジネス開発グループ」という部署。グループのミッションは「リクルートの既存領域にとらわれない、社会課題を解決するための新しいサービスの創造」でした。そこで、前職での経験から「妊活における男性の不在」という課題を解決したいと考え「Seem」の開発に着手しました。

 「Seem」の開発はリクルートでなければできないというものではありません。「精子のセルフチェックができるツール」であれば、スタートアップで開発することもできます。

 しかし、Seemの開発自体は目的ではなく、課題解決のための手段の一つです。私が本当に実現したいことは、「妊活は男女ふたりで取り組むもの」という新しい文化の定着です。

 「Seem」は妊活という領域全体にとっても「ツール」として機能させたいと考えています。

  リクルートは外食・美容・旅行などのライフスタイルだけでなく、就職や結婚、学習などの領域でも、良くも悪くも「新しい文化」をつくってきた企業だと思います。60年近い歴史の中で、当事者意識を持って世の中の課題と向き合い、既存の価値観にとらわれない新しいソリューションを提供し続けてきました。

 自分のアイディアを高解像度・高品質で形にし、多くの方に使っていただき、いつかそれが当たり前になる。
その実現のために、私はリクルートを活用するという選択肢を選んだのです。

 次回は、「妊活における男性の不在」という社会課題からスタートして「Seem」というプロダクトにたどり着くまでの事業検討の流れや、リクルートという大企業でまったく新しい領域の新規事業としてリリースするまでの挑戦についてご紹介します。
 
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