ブランドが生まれるとき 激変する時代に選ばれ続けるための価値創造 #01
ゼブラはなぜ59400円の「THE ZEBRA」に挑戦するのか? 「常に最高で最新」コンセプトに、高級筆記具市場へ
2026/08/03
- 商品開発,
市場の成熟や生活者ニーズの多様化が進む現代において、新たなブランドを立ち上げること自体はもちろん、さらに消費者に選ばれ続けるのは容易なことではない。しかし、その時代にあって激変する市場の隙間を見つけ出し、新たな価値を創造するマーケターたちがいる。
本連載では、今注目すべき新ブランドのキーパーソンに、その誕生の舞台裏を直撃。変化の時代を生き抜くマーケターたちの思考プロセスや、戦略実行のリアルに迫る。
初回は、1本5万円超という超高価格帯で高級筆記具市場に挑み、工芸品のような造形美と技術力で文具界に衝撃を与えている新ボールペンブランド「THE ZEBRA」。その誕生の背景と今後の戦略について、ゼブラ プロダクト&マーケティング本部 本部長の平將人氏に聞いた。
本連載では、今注目すべき新ブランドのキーパーソンに、その誕生の舞台裏を直撃。変化の時代を生き抜くマーケターたちの思考プロセスや、戦略実行のリアルに迫る。
初回は、1本5万円超という超高価格帯で高級筆記具市場に挑み、工芸品のような造形美と技術力で文具界に衝撃を与えている新ボールペンブランド「THE ZEBRA」。その誕生の背景と今後の戦略について、ゼブラ プロダクト&マーケティング本部 本部長の平將人氏に聞いた。
【今回のブランド】

「最高の一本」をつくりたい
――ゼブラは今年3月、1本59400円(税込)のボールペンを発売しました。マスを主戦場としてきた御社がこの価格帯に参入したことに、驚いた人も多かったのではないでしょうか。なぜ、ゼブラは高級ボールペン市場へ参入したのですか。
「THE ZEBRA」は当社において最も高価格帯の商品です。これまで最も高価格だった「シャーボX」が税抜1万2000円ほどでしたので、それをはるかに超える商品となります。社内でも、これまでにないスケールのプロジェクトでした。
実は当社は、以前から高級筆記具市場に挑戦したいと考えていました。
日本のボールペンメーカーは、マス市場で戦う中で長年にわたり技術革新を積み重ねてきました。書き味やインク、機構など、日本ならではの細やかな技術力については、世界でも高い水準にある自負があります。一方で高級筆記具市場では、PARKERやMONTBLANCといった海外ブランドが圧倒的に強く、日本の技術力がきちんと評価されているとは言い難い。そのことに以前から日本の筆記具メーカーの一員として、忸怩たる思いを持っていたのです。

ゼブラ プロダクト&マーケティング本部 本部長
平 將人 氏
平 將人 氏
日本の技術を結集して最高のペンを出したい。アイデアのタネは以前からいろいろと出ていました。ただ、高級筆記用具の市場は決して大きくはありません。売れるかどうか分からない。ビジネスとして成立するかがネックになり、実現できずにいましたが、ついに挑戦に踏み切れたのは、前社長の石川真一、そして2022年に就任した現社長の石川太郎の強い意思でした。事業性はもちろん重要ですが、それ以上に、日本のボールペンメーカーとして「最高の一本」をつくりたいという思いを彼ら自身も持っていましたし、社内の願いを汲み取ってくれたと思います。「THE ZEBRA」の開発は、日本のボールペン技術を結集し、その価値をどうやって既存の高級市場の中に提案できるか、その問いに挑戦するプロジェクトでした。
――具体的にはどのようにターゲットやコンセプトを設定していったのですか。
主に40~50代くらいの男性を想定しています。特に「クワイエットラグジュアリー」、つまりロゴや装飾による分かりやすいラグジュアリー感ではなく、本質的な品質や上質さを重視する価値観を持った方々です。ぱっと見では違いが分からなくても、実際に使うことで良さが伝わる。そういった価値を求める方々に選んでいただくために設定したのが、「常に最高で最新である」というコンセプトです。
ボールペンは技術革新のスピードが非常に速いです。10年経てば、より書きやすいインクや機構が登場します。つまり、ボールペンは「いずれ古くなる」のです。我々はその点が、高級ボールペン市場が広がりにくい理由のひとつではないかと考えます。だからこそ「ずっと最新であり続ける高級ボールペン」を目指したのです。
「THE ZEBRA」では、新しい技術が生まれた際にはそれに対応したリフィル(替え芯)を開発し、ユーザー登録いただいた方に1本無償提供する仕組みにしました。これによって高級ボールペンでありながら、常に最新の書き味を維持することができます。そのためのユーザー登録制度をつくったのも、マスプロダクトを軸としてきた当社としては初めての試みになります。
――商品には、どのような技術が採用されているのでしょうか。
たとえば、今回リフィルには「エイジング加工」という技術を採用しています。一般的にボールペンは、使い始めよりもある程度使い込んだ後の方がペン先が馴染み、書き味が良くなる傾向があります。「THE ZEBRA」ではその「馴染んだ状態」を、あらかじめ加工によって再現しています。この加工はコストも時間もかかるため、量産品ではなかなか採用できません。
また、本体下部にはインク残量が見える窓を設けています。これは、かつてゼブラが「みえるみえる」というキャッチコピーで展開し、ヒットした透明軸ボールペンの発想を受け継いだものです。通常、高級ボールペンは金属で覆われており、中を見ることはできませんが、あえて「見せる」設計を採用して実用性を高めています。




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