先進企業のキーパーソンが見通す マーケティング「これからの10年」 #05Sponsored

マーケターに求められるのは「ブランドの生き方」を選ぶ思考力【BICP 菅恭一氏】

前回の記事:
マーケター最大の差別化要因は「感性」に【Spotify 田村千秋氏】
 テクノロジーの進化や市場構造の変化に伴い、マーケティングのあり方は次の10年でどう変わっていくのか。本連載「先進企業のキーパーソンが見通す マーケティング『これからの10年』」では、業界を牽引するマーケティング支援企業のキーパーソンたちにインタビュー。

 直面する業界の潮流や進化する支援のあり方、10年後に求められる「マーケター像」、そして今「始めるべきこと・やめるべきこと」について、実践的な知見や未来への見通しを聞いた。
 
ベストインクラスプロデューサーズ 代表取締役社長
菅 恭一 氏

総合広告代理店にてデジタルマーケティング組織の立ち上げとマネジメントを経験した後、2015年4月、デジタル時代のマーケティングプロデューサー集団、株式会社ベストインクラスプロデューサーズの創業に参画。「マーケティングの力で、人生を楽しめる人を増やす」をビジョンに掲げ、VMV策定、人間理解、価値設計、市場定義、顧客体験設計など、各プロセスにおける再現性のある方法論を用いながら、クライアントサイドに立った伴走型支援を行っている。マーケティング分野のカンファレンスやセミナーにも多数登壇。著書に『マーケティングフレームワークの功罪』(日経BP)。
 

AI時代の「答えと意志づくり」を支援


― これからの10年、マーケティング領域において特に注目すべきと考える変化や潮流は何でしょうか。また、その中でマーケターが直面すると思われる課題についてもお聞かせください。

これからの10年、マーケティングにおける最も大きな変化は「正解が一つではない時代」が本格的に到来することだと考えています。世界では政治、経済、地政学、環境問題など、さまざまな変化が同時に進み、人々の価値観や生活はこれまで以上に多様化していきます。日本でも暗黙的に共有されてきた価値観が揺らぎ、企業やブランドは「誰にでも好かれる存在」を目指すだけでは競争力を維持できなくなるでしょう。

私は、マーケティングとは企業やブランドの「生き方」を選ぶ思考だと考えています。どのような理念を掲げ、誰にどのような価値を提案し、社会にどのような存在としてあり続けるのか。その自社らしい意志を明らかにすることが、これまで以上に重要になります。

その中でマーケターが直面する課題は、「与えられた問いに答えを出すこと」から「自ら問いを立て答えをつくること」への転換です。揺らぐ市場や顧客の変化を洞察し、自社ならではの旗を立て、誰に選ばれる存在になるのかを決める。その意志決定には、時に勇気も必要です。変化の大きな時代だからこそ、マーケティングは売り方を考える技術ではなく、企業やブランドの生き方を選び続ける思考として、その重要性を一層高めていくと考えています。

― その変化・潮流を見据え、どのようなプロダクト・ソリューションでクライアント企業を支えていかれますか。これまでの支援のあり方との違いがあれば、そこにも言及ください。

正解が一つではない時代だからこそ、私たちは「答えを提供する会社」ではなく「答えと意志づくりを支援する会社」でありたいと考えています。そのために一貫して大切にするのが、クライアント企業を主走者とした3つの伴走型支援です。

一つ目は、生活者の価値観や行動の変化から、まだ顕在化していない欲求や市場機会を見出す市場戦略支援です。BICPの独自の価値設計フレームワーク「価値設計の7BOX」を用いて、FutureSignという新しい生活者の価値観の「兆し」を起点としたインサイトの発見と、新たな価値創造を支援しています。

二つ目は、企業ブランドのプロポジション策定とインターナルブランディングです。生活者のインサイトを起点に、企業が「どのような存在でありたいか」というアイデンティティを言語化し、中期経営計画や人事戦略とつなげる支援を行います。

三つ目は人材育成です。AI化が進むからこそ人間にしかできない思考力が一層重要になります。実プロジェクトに学習目標を組み込むPBL(Project Based Learning)や、店舗スタッフなど非マーケティング職を対象としたブランド体現研修など、独自メソッドで考える力やブランド体現力を鍛えるお手伝いをします。

― 10年後、最も活躍しているマーケターはどのような人物だと思われますか。現在のマーケターとの違い、求められる能力や価値観、AIとの役割分担についてお聞かせください。

10年後も活躍するマーケターはAIを最も使いこなす人ではなく、人間としての思考力や教養を磨き続けている人だと考えています。AIによって分析や資料・クリエイティブ制作などのスピードと精度は飛躍的に進化し、誰もが高水準のアウトプットを得られる時代になるにつれ、マーケターとしての違いは「何をつくれるか」ではなく「何を考え、何を選ぶか」に移っていきます。

この「選ぶ力」の前提となるのは、自分らしい判断基準です。その基準は経験だけでなく、歴史や芸術といった人文知に触れ、人間や社会への理解を深めることで育まれます。マーケティングは人間理解から始まる仕事です。それは現在や未来だけでなく、人間がどのように生きてきたのかを学ぶことが、本質的な洞察力や問題設定力につながり、自らの意志で選ぶ力を支えます。不確実な時代だからこそ、未来だけではなく過去を見ることも重要に感じます。

AIは能力を拡張してくれる優れたパートナーですが、問いを立てること、答えを選ぶことは人間の存在意義です。その判断基準と意志を持ち、生き方を選べるマーケターこそが、これからの時代に最も大きな価値を生み出していくのではないでしょうか。

― 10年後も競争力を持ち続けるために、ブランド企業が「始めるべきこと」と「やめるべきこと」を一つずつ挙げるとしたら何でしょうか。

始めるべきことは、勇気を持って、自分たちの生き方を選ぶことです。これからの時代は価値観がますます揺らぎ、万人に受け入れられることを目指すほど、ブランドの輪郭は曖昧になります。「私たちは何を目的に存在しているのか」という意志を明確にし、その目的のために愚直に価値を磨き続けることが重要になります。

一方でやめるべきことは、すべての人に好かれようとすることです。マーケティングは生活者に向き合う仕事ですが、迎合する仕事ではありません。生活者や顧客を見すぎて事業を追うあまり、「らしさ」から離れていきそうな場面にしばしば出くわします。アイデンティティに誇りを持って顧客との信頼を築くことが、結果として価値と市場を広げていくと考えています。

BICPでは丁寧にヒアリングをしながら、「自分たちが何者であるか」を考えるワークショップ形式のブランド定義プロセスや、「らしさ」に対する従業員の熱量づくりに力を入れています。ブランドは空中戦でできるものではなく、顧客との接点、真実の瞬間から生み出されるからです。経営から非マーケティング職も含む現場まで、ブランドの意志づくりと体現のご支援をこれからも追求していきます。


※写真はナノベーション10周年記念パーティ「Nanovation GALA 2026」にて撮影

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