THE BACK STAGE~あの施策の舞台裏~

ポケモンはじめ怒涛のプロモーション施策の舞台裏を直撃 Jリーグ「シーズン移行」が目指す〝進化〟とは【新連載】

 価値観の多様化や情報の洪水の中で、人々の記憶に残る体験やメッセージをつくり、届ける難易度はかつてなく高まっている。そんな中でも鮮烈なインパクトを残し、話題をさらったマーケティング施策は、どのような狙いをもって企画され、どのように実現されたのか。アジェンダノートでは、注目施策の知られざる内側を解き明かす新連載「THE BACK STAGE~あの施策の舞台裏~」をスタートする。

 今回紹介するのはJリーグ(日本プロサッカーリーグ)の施策。「歴史的転換点」となるシーズン移行(2月開幕から8月開幕へ移行)に向けて、全60クラブへの「パートナーポケモン」設定をはじめとする史上最大級のプロモーションを仕掛けたJリーグの執行役員(マーケティング事業担当)(兼)マーケティング事業本部 本部長の鈴木章吾氏を直撃。怒涛の施策展開に込められた意図と、プロジェクトのリアルな舞台裏に迫る。
 

「1クラブ1ポケモン」の真意


 2026年7月5日から6日にかけて、Jリーグがポケモンとのコラボを発表し、全60クラブの「パートナーポケモン」を明らかにすると、SNS上には予想や考察があふれ、関連するX公式アカウントは2日間で計4600万回以上閲覧された。

 パートナーポケモンの選定には「納得」「ぴったり」といった声が挙がる一方、「なんであのポケモンではないのか」などという声も。個別の選定理由は明かされていないが、2025年にJリーグのマーケティング本部長に就任し、2シーズン連続の最多入場者数更新に導いた鈴木章吾氏によると、ポケモン側とのディスカッションとやり取りは約2ヵ月に及び、各クラブの地域性や個性を考慮したポケモンが割り当てられた。

「満場一致で納得いただくのは難しいかもしれませんが、適当に考えたポケモンは一匹もいません。考察を含めて楽しんでいただければ幸いです」
 
日本プロサッカーリーグ(Jリーグ) 執行役員(マーケティング事業担当)
(兼)マーケティング事業本部 本部長
鈴木 章吾 氏

 日本生活協同組合連合会、キリンホールディングス、野村総合研究所にて、一貫してtoCマーケティング領域に従事。2022年にJリーグに入社。現職ではJリーグのプロモーション、集客CRM、MD/ライセンス事業、デジタルマーケティングプラットフォームなど、toCに関わる領域全般を統括。

 あらゆる反応を覚悟して「1クラブ1ポケモン」にこだわったのには、理由がある。『ポケットモンスター 赤・緑』の発売から30年の節目を迎えたポケモンは今年、Jリーグ以外でもさまざまなタイアップキャンペーンを展開している。埋没しないためにも、42都道府県に根差した各クラブに1匹ずつポケモンを選定することで、各クラブの個性やJリーグブランドが持つ「面」の広さを印象づける狙いがあった。ポケモン側にとっても、1000匹以上いるポケモンのバリエーション豊かさを改めて発信するメリットがあったとみられる。
 

「100万人」に込めたメッセージ


 さらに「1クラブ1ポケモン」の背中を押したのが、シーズン移行に先立ち、今年2月から行われた「明治安田Jリーグ百年構想リーグ」の成功体験だ。サッカー漫画『キャプテン翼』『ブルーロック』『アオアシ』が出版社の枠を超えてコラボし、クラブごとに異なるカラーのブランケットを試合会場で配布したところ、大きなUGCと集客効果を生み出した。

 クラブごとに特色をつけたIPの活用は、従来とは違うファンベースに深く広く刺さるアプローチを可能にする。今回も新シーズン開幕後、各クラブはそれぞれのパートナーポケモンとタイアップした特別試合『ポケモンJリーグフェス』を行い、来場者100万人に環境配慮型のオリジナルエコバック「EVO BAG」を配布するほか、オリジナルグッズ販売、各種イベントを通して盛り上げる。また、『ポケモン GO』を楽しめる「ポケストップ」も、各スタジアムに設置する。
   
環境配慮型のエコバック(〝進化〟を意味するEVO BAG)を来場者に配布する。(写真提供:Jリーグ)

「100万人への配布キャンペーンは『この開幕期に年間ベストの来場者数を達成しましょう』という、各クラブへのメッセージでもあります。シーズン移行後の8月~9月に〝第一の山〟を持ってきて、リーグ全体としてシーズン移行のスタートダッシュを決めたいと考えています」

 クラブに発破をかける一方、厳格な規定があるエコバックの製造や輸送、さらには繊細な取り扱いが要求されるIP関連のクリエイティブ作成といった実務は一括してJリーグが担い、統一性と効率性を担保する。SNSの投稿時間なども全クラブで足並みを揃え、Jリーグとして一貫したコミュニケーションをとるよう徹底している。

 こうまでして強く発信したいのは、Jリーグの〝進化〟だ。進化した姿のポケモンで揃えた各クラブのパートナーポケモンは、シーズン移行という歴史的転換点を経て〝進化〟を遂げようとするJリーグの力強い決意表明でもある。

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