我が社のマーケター育成方針 #02

コクヨはBtoCマーケティング強化のために「顧客視点への変換」を仕組み化【連載:我が社のマーケター育成方針】

前回の記事:
味の素冷凍食品は「型に命を吹き込み形にする」、質的データも重視【新連載:我が社のマーケター育成方針】
 テクノロジーの進展や市場環境の変化によって、マーケティングに期待される役割が急速に変化・拡張する中、事業成長に貢献できるマーケター人材をどのように育てるか、苦慮する企業は多い。

 アジェンダノートでは若手マーケター育成プログラム「Rising Academy powered by オプト」と連携し、受講生の派遣企業の責任者に取材。マーケター育成を重視する企業が、どのような方針で、どのような育成システムを採り、どのような成果や課題を感じているのかを聞いた。
 
【お話を伺った方】
コクヨ グローバルステーショナリー事業本部 マーケティング戦略推進本部 本部長
本村 香代子 氏

―― 貴社におけるマーケターの役割について教えてください。また、外部環境の変化を受けて、これからの時代に求められるマーケター像をどのようにお考えですか。

2025年に創業120年を迎えた当社のステーショナリー事業は、もともとはオフィス向け、つまりBtoB事業の割合が非常に高い会社でした。しかし、ここ数年で個人のお客さまに買っていただく比率が増したのに伴い、BtoC事業のマーケティングに本格的に注力しています。

中でも発売50年を超えた主力商品である「キャンパスノート」は、非常に高い認知度を誇る一方で、従来は「ノートが知られているだけ」という側面がありました。国内外で紙のノートの使用量が減少傾向にある中で、単なるノートの枠を超えた”まなびかた”そのものを支えるブランドへと進化するべく、昨年は<Campus>ブランドのリブランディングを実施しました。

そういった流れでマーケターに求められるのは、商品単体の施策にとどまらず、上位概念として一貫したブランド戦略を立て、商品企画やプロモーション、コミュニケーション、PRへとぶれずに落とし込み、「面」で価値を届ける役割です。Campusブランドは近年、中国やベトナムなどASEAN市場でも急速に認知が広がっているため、日本市場だけでなくグローバルでの共通点と違いを意識しながら、最適な戦略やコミュニケーションを組み立てられる能力が強く求められています。
  
新たなCampusブランドのキービジュアル(画像出典:コクヨ公式サイト)

―― 目指すべきマーケター像に近づくため、重要となるスキルは何でしょうか。また、それらを身につけるための仕組みはどのようになっていますか。

当社のBtoCマーケティングは従来、コミュニケーションの要素が占める割合が高く、お客さまと直接つながるファンマーケティングには比較的、力を入れてきました。ただ、マーケティングの役割がより拡張した今、最も重視されるのは、コミュニケーション領域に限らず常に「お客さま視点」に変換して思考する力です。メーカーは概して「〇%薄くできた」「〇グラム軽くできた」といったプロダクトアウトな思考になりがちですが、「それによってお客さまにどんなベネフィットがあるのか」を考え抜く姿勢が、これからは一層欠かせません。

近年は外部から参画したマーケティングのプロフェッショナルを中心に、マーケティングに関わる全部門を対象とした基礎的な研修も始まっており、こういった顧客視点の商品づくりの思考法やノウハウの育成・浸透が図られています。また、商品開発のプロセスに「顧客視点」が必須項目として組み込まれているため、商品コンセプトが高いレベルで顧客視点のベネフィットに変換できていなければ、そもそも商品開発会議を通過できません。研修とOJT、そしてプロセスへの組み込みを通じて、自ずとスキルを高めやすい環境になりつつあるのではないかと考えています。

―― そのスキルを評価するために、どのような評価制度を運用されていますか。

マーケターに特化した評価制度はありませんが、個人の能力アップを多角的に支援・評価する制度は全社的に運用されています。 具体的には、各人が上司と相談して「今年はこういう能力をここまで伸ばしたい」と定めた目標に対して、一人ひとりに合った成長機会を提供し、複眼的にモニタリングすることで、的確な支援・評価ができるよう取り組んでいます。

―― スキルを伸ばすために特に重視されていることや、マーケターに積んで欲しい経験、そして課題はありますか。

マーケターに限りませんが、当社では幅広い視野や経験を持つ人材の育成を非常に重視しており、その一環として2020年から「20%チャレンジ」という社内副業制度が活用されています。プロジェクト単位で他部署から人材を募集し、マッチングすると、定められた期間内は本来の業務時間の20%をそのプロジェクトに充てられる制度です。マーケティング部門でも、たとえば不足しがちなデジタル人材の補強として、法人向けEC事業に携わるグループ会社の社員にプロジェクトに参画してもらうといった協働が生まれています。

私自身もこの制度を使って法人向けの新規事業に参加したことがあるのですが、BtoCの文房具事業が比較的、仮説検証を重ねながら慎重に施策を立案・実行していくのに対して、法人の総務部門などがカウンターパートとなるオフィス家具事業では、たとえ確度が高くなくても、提案要素も含めて果敢に仕掛けていく傾向があると感じました。同じ会社にいながら異なる仕事への姿勢に触れられたことで、視野を広げ、柔軟なマインドを養う機会になったと振り返ります。

また、自律的なキャリア形成を促すため、全社的にジョブローテーションにも力を入れています。マーケターであれば、たとえば若い年次からリーダーシップを発揮する経験をしてもらったり、あるいは営業部門での感覚を養ってもらったりと、多様な視点と経験を持つ社員の育成を目指しています。

外部からの人材獲得やジョブローテーションが積極的に行われ、人材の流動性が高まることには様々なメリットがありますが、その一方で、育てた人材が短期間で旅立ってしまうことへの寂しさ・悩ましさは正直、あります。メンバーの出入りがあっても素早く業務を立ち上げられるよう、業務の標準化や受け入れ体制の整備は課題と言えるかもしれません。

―― ありがとうございました。

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