TOP PLAYER INTERVIEW #102
青いガーナにビックリマンAI名刺。「クリエって行こうぜ」スローガンに加速するロッテの「付加価値」戦略
日本の菓子・アイス市場において圧倒的な存在感を放つロッテ。原材料費や物流費の高騰をはじめとする近年の厳しい環境下でも、付加価値の高い商品をヒットさせ、好調な業績を維持している。単なる価格転嫁や定番商品の延長線上ではなく、顧客の期待を超えた新たな価値を生み出し、選ばれ続けるブランドをつくる。その背景には、どのような組織体制とマーケティング戦略があるのか。
同社 マーケティング本部 第一ブランド戦略部 部長の古市丈二氏に同社のマーケティング改革から顧客・市場への理解を深める独自の手法、さらには部門のスローガン「クリエって行こうぜ」に基づく創造的な挑戦まで、ロッテのマーケティングを支える仕組みと実践の舞台裏を聞いた。
同社 マーケティング本部 第一ブランド戦略部 部長の古市丈二氏に同社のマーケティング改革から顧客・市場への理解を深める独自の手法、さらには部門のスローガン「クリエって行こうぜ」に基づく創造的な挑戦まで、ロッテのマーケティングを支える仕組みと実践の舞台裏を聞いた。
コラボで「付加価値」力を鍛える
―― まずは直近の好調な業績に関して、マーケティング組織が果たしている役割や、昨今の市場変化をどう捉えているかを教えてください。
前提として、当社は事業部制ではなく、生産本部や営業本部など機能別の組織体制になっています。その中でマーケティング本部の役割は、経営戦略部と連携して事業計画を策定し、既存商品のリブランディングや新商品の方向性を起案することにあります。深い生活者理解をベースに市場を読み取り、事業機会を探索して成長シナリオを描く。重視するのは「何を実現するか」というコンセプトを描き、各部門と対話しながら形にしていくことです。一方で、宣伝企画などHOWに近いところも担っています。
現在の市場については、物価高を背景に、消費者が購入するものを厳選する消費行動が広がる一方で、日常の中でちょっとした贅沢を楽しみたいという「デイリープレミアム」のニーズも高まっています。メーカーとしては、これまで以上にお客さまの期待を超えられる商品を生み出さないと、それが「付加価値」として認識されず、なかなか買っていただけない。その点、たとえば「プレミアムガーナ」は、こうした消費の変化を捉え、付加価値を生み出すマーケティングを実践できた成果の一つと言えると考えています。

ロッテ マーケティング本部 第一ブランド戦略部 部長
古市 丈二 氏
ロッテに入社し営業企画を経験した後、マーケティング本部でキシリトール等のブランドマネージャーやガム・チョコレートのカテゴリーマネージャーを経験。その後、部門長として新商品企画チーム、グローバルマーケティングの責任者を歴任し、2019年から菓子・アイスの商品企画ブランドマネジメントに携わる。現在、チョコレート、ビスケット、アイスクリームの商品企画に加えて宣伝企画を担当し、トータルブランドマネジメントを担当。日本マーケティング学会常任理事、日本能率協会 マーケティング総合大会副委員長、ACCマーケティングエフェクティブネス部門審査委員。
古市 丈二 氏
ロッテに入社し営業企画を経験した後、マーケティング本部でキシリトール等のブランドマネージャーやガム・チョコレートのカテゴリーマネージャーを経験。その後、部門長として新商品企画チーム、グローバルマーケティングの責任者を歴任し、2019年から菓子・アイスの商品企画ブランドマネジメントに携わる。現在、チョコレート、ビスケット、アイスクリームの商品企画に加えて宣伝企画を担当し、トータルブランドマネジメントを担当。日本マーケティング学会常任理事、日本能率協会 マーケティング総合大会副委員長、ACCマーケティングエフェクティブネス部門審査委員。
特にここ5年ほどは、顧客価値の解像度を徹底的に高めることを意識しています。もちろん、消費者調査は以前からかなり力を入れてやってきたのですが、調査してデータを得ることと、マーケター自身が消費者を深く理解することとは別物です。近年は調査会社のモデレーターを介さずにブランドマーケター自身がデプスインタビューを行うこともあり、数字だけではとらえきれない価値観や行動の背景まで掘り下げ、顧客理解を深めることに力を入れています。
ただし、顧客価値を理解しただけでは十分ではありません。それを商品やコミュニケーションといったHOWに転換するには、さらに別の力が必要です。他社事例を学んだり、他社製品とのコラボレーションをテーマにした研修を行ったりして、抽象と具体を行き来して考える力を磨いています。
―― 研修でも他社とコラボレーションするのですか。
研修でも行いますし、実際の業務でも、他社とのコラボは頻繁に行っています。たとえば「チョコパイ」は近年、パティシエやタルト専門店と組み、新たな商品や味わいのバリエーションを増やしています。
振り返れば、外部の知見を取り入れる姿勢は、ロッテの伝統と言えるかもしれません。1964年に「ガーナミルクチョコレート」を発売した当時、当社は日本のチョコレート市場では圧倒的に後発だったため、本場ヨーロッパから技師を招聘するなどして、自社にない技術やノウハウを積極的に取り入れながら商品を磨いてきました
こうした姿勢は、先行きが予測困難な現代において、目的から逆算して計画を立てる「コーゼーション」に対して、すでに持っている資源を生かして試行錯誤しながら価値を生み出す「エフェクチュエーション」が重視されつつある文脈とも重なるかもしれません。日本マーケティング学会会長の西川英彦先生が提唱される「軽いコラボ」、社会学的には「弱い紐帯」などと呼ばれる潮流です。
「チョコパイ」の場合はコラボを繰り返したことで、「こんな商品を出されたら、自分たちの商売あがったりです」と職人さんに言っていただけるほど品質が向上しました。「軽いコラボ」や「弱い紐帯」によって自社にない知見をどう取り入れ、付加価値につなげられるかは、これからますます重要になると思います。
「ガーナ」はなぜ“赤”を捨てたのか
――大きな成果を上げている「プレミアムガーナ」は、どのような考え方から生まれたブランドなのでしょうか。
コロナ禍にデイリープレミアムのニーズが高まったことを受け、「日常で楽しめる専門店クオリティ」をコンセプトに2021年に立ち上げたのが「プレミアムガーナ」です。大きな挑戦のひとつが、ブランドカラーである「赤」を使わないこと。社内でも議論がありましたが、通常価格の2倍ほどするプレミアムガーナを買っていただくには、「いつもの美味しさ」を象徴する赤色がかえって新しい価値を伝える際の足かせになる可能性が、いくつかのリサーチデータから示唆されたのです。
ブランドを象徴する〝記号〟である赤を捨て、さらにデザインや商品展開にも固定的な型を設けず、ファッションのように他社コラボや季節性を取り入れたことで、消費者の関心や欲求が流動的に移り変わり、その時々の出会いや感情によって購買が生まれる「リキッド消費」と呼ばれる傾向にも合致したのだと思います。
特に2025年のバレンタインシーズンに初めて行ったピエール・エルメとのコラボでは、赤の反対をいく青のパッケージの「アンフィニマン ヴァニーユ」がSNSで話題になり、コンビニ商品としては異例の発売2週目以降に供給が追いつかなくなるほどのバズを生みました。

2025年の反響を受け、2026年のバレンタインにも味わいをより進化させて登場した生チョコレート〈アンフィニマン ヴァニーユ〉画像出典:ロッテプレスリリース(2026年1月)
この話題化は正直なところ、我々が意図して生み出したものではありませんでしたが、プレミアムガーナというブランドを一段上のステージへと押し上げてくれたと思います。新ブランドの初期フェーズとしては非常に大きな成果が得られ、認知も高まってきました。そこで、徐々に蓄積型のブランディングに移行していこうと、木村拓哉さん出演のCMを公開するなどして、新たなステージを歩み始めています。
ロッテ プレミアムガーナ TVCM「一粒の濃厚物語 濃厚ショコラ」篇(動画出典:ロッテ公式YouTube)




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