米田恵美子琉 市場創造の「すすめ方」 #05

P&Gイノベーションファクトリーが最重視する「客観的多様性」【米田恵美子】

現状打破のために、あえて異物を投入する

 P&Gイノベーションファクトリーでは、「現状打破」を目的にわざと異物を投じて、その反応や意見を得ることから始めました。投じられる異物は、消費者からの意見や他のカテゴリーの担当者の意見にはじまり、全く違う業種の成功例や失敗例やトレンドなどでした。

 自分たちが捉えている「現状」を、外の人たちはどのように見るのか。また、自分たちが囚われている「現状」の外側では何が起きているのか。そうした客観的な視点を取り入れるために、あえて異物を投じて「現状の見え方」を揺さぶります。それによって自分たちが気づいていなかった制限を外し、可能性のDiverge(広げる)が狙いです。

 イノベーション創造はDiverge(広げる)から始まるのですが、多くのケースで阻止する大敵は、現状への強い「保身」です。外から客観的な視点や意見、アイデアを紹介しても、客観的な視野を広げようと試みても、「自分のビジネスには関係がない」「それは違うな」「こんな何もわかっていないヤツらの話を聞いても時間の無駄だ」など、自分と違う意見や考えに耳を貸すことができないメンバーは必ずいるものです。特に地位が高く、決定権を持つ人ほど、今までの自分の考え方と違う意見やアイデアに対して批判的な人が多いという点も厄介です。

 しかしそういう頑な人たちも、新しい考え方やアイデアを受け入れる隙や瞬間があり、そのような時はチーム全体のイノベーションへの熱量が高まったものです。

 反対に、常に好奇心をもって、違うものの見方や考え方に対して前のめりで聞き入り、それらに感嘆するメンバーもいて、そういう人たちが出すアイデアはキラキラ光る「イノベーションの卵」になりました。




 私自身が一番感銘を受けて、また影響を受けたのは、感度の高いユーザーからの意見やアイデアでした。集まってくださったユーザーの中には、商品やカテゴリーに対する意見だけではなく、テレビCMのストーリーボードや店舗販促のコンセプトなどもつくってもらったのですが、感度の高いユーザーの方々は、そんな無茶ぶりにも真剣に取り組んで、素晴らしいアイデアを出してくださいました。

 もちろんユーザーの案をそのまま使うわけではありません。そのアイデアが生まれた背景を聞き込んで理解することで、潜在的なニーズが見え、「現状」に風穴があいて可能性が広がるヒントとなるのです。

 こういった試みも、「クリエィティブが本業でもない人に、テレビCMや店舗販促などのアイデアが出せるわけがない」という思い込みから、せっかくの「Diverge(広げる)」のチャンスを見過ごす人もいれば、「すごい!」「面白い!」「新しい!」と刺激を受けてアイデアにつなげられる人もいました。

 本業のクリエイターがユーザーのアイデアに刺激を受けて、素晴らしいコンセプトやコピーに生かしてくださったことも何度かありました。それらのアイデアは、ユーザーの潜在意識に響くため、長くビジネス成長に貢献してくれています。

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