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国連難民高等弁務官事務所の広報日記 #06

山田洋次監督「国民的映画」にも難民支援?出演する後藤久美子さんが国連職員に 【UNHCR 守屋由紀】

映画会社から掛かってきた一本の電話

 昨年の夏、日本の有名な映画会社から一本の電話がありました。内容は「まだ詳しくはお話できないのですが、難民や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のことについて調べているのです。近いうちに色々と教えていただきたく、事務所にお伺いしたいのですが」ということです。

 UNHCR駐日事務所の広報には、メディアはもちろん、企業や学生、一般の方から、難民情勢や難民への支援、キャリアプランについてのお問い合わせが多く寄せられます。特に夏は、夏休みの宿題や文化祭へ向けた自由研究の題材として、高校生はもちろん、中学生や小学生などからも質問が届きます。しかし映画関係者からのお電話は、かなりレアな部類に入ります。

 UNHCRと映画と聞いても、関連性が少なさそうに思われるかもしれません。

 ただ、ちょっぴり自画自賛になってしまいますが、私たちは「UNHCR難民映画祭」を日本で13年も開催し続けており、ある程度のブランドが確立されています。その背景は、難民問題への関心が高まっていることと同時に映画業界にも難民や難民を取り巻く環境・社会を取り上げた珠玉の作品が多く発表されているからです。一方で、日本発の作品はまだまだ少数派なのが現実です。
 
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 さて、その電話の主を明かすと、松竹でした。私が一番にピンと来たのは、あの国民的映画『男はつらいよ!』シリーズです。私事ですが、我が家は熱烈な「寅さん」ファンで、全48作をDVDで保有し、幾度となく鑑賞し、テレビで再放送があれば、しつこく観ています。

 前回の連載でお伝えしたとおり、猫好きの我が家に、友人から譲り受けた茶トラのネコが家族の一員になった際は、ほぼ自動的に「トラ」と命名されました。昨年の夏、そのトラの妹猫が、かわいい子猫を産んだとの連絡を受け、新たに受け入れることにしました。

 その子猫に出会う前から、トラの妹の子どもだから、寅さんの甥っ子である満男よろしく、「ミツオ」と命名するところでしたが、獣医さんに健診と予防注射を受けに診てもらったところ、「この子は女の子ですよ」とのこと。結果、命名はちょっぴりひねって「サクラ」と名づけ、我が家のアイドルの座に君臨しています。

 さて、松竹さんとの打ち合わせの場で、ピンと来た勘があたっていたことがわかりました。わかったのは、2019年は『男はつらいよ!』シリーズ50周年の節目にあたり、山田洋次監督がメガホンを取って国民的映画の第50回目がつくられる。そしてその作品の重要な人物を、なんとUNHCRの職員という設定にしたいというご相談だったのです。

 キャー(笑)!

 UNHCRを題材にした文学作品には、作家の森絵都さんの直木賞受賞作品『風に舞いあがるビニールシート』があります。執筆されている際に取材協力、さらにはその作品がNHKでドラマ制作されることになったときも、撮影時にお手伝いをした(大変だったけど意義深い)経験もありました。

 テレビの力とは、ものすごいと実感したのは10%を超える視聴率だけではなく、放送してから数年経った後でも名刺交換する際に、「守屋さんは、あのドラマで片平なぎささんのモデルになった方ですね」と声をかけていただく影響力です。そう、あのドラマではUNHCR駐日事務所の広報官役を2時間ドラマのクイーン、片平なぎささんが演じられていました。

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