TOP PLAYER INTERVIEW #06
大企業でイノベーションがうまくいかない理由【ネスレ本社バイスプレジデントが語る変革の流儀】
ヨーロッパの革新的なブランドやエージェンシーを訪問し、最新のケーススタディやマーケティング戦略を体験するツアー「EUROPE TOUR2019」が2月17日から23日まで開催される(主催:近畿日本ツーリスト、企画協力:ナノベーション)。
それに向けて、訪問先であるネスレ本社でデジタル領域のイノベーションを担当するピート・ブラックショウ氏に、同社がイノベーションに力を入れる理由から日本のマーケターへのメッセージまで話を聞いた。
それに向けて、訪問先であるネスレ本社でデジタル領域のイノベーションを担当するピート・ブラックショウ氏に、同社がイノベーションに力を入れる理由から日本のマーケターへのメッセージまで話を聞いた。
ネスレのデジタルイノベーションチームの役割とは
——ネスレ本社(スイス)にデジタルイノベーション&サービズ部門を設立した狙いについて教えてください。
まず始めにお伝えしたいのは、デジタルイノベーションは特別な存在ではなく、これまでも常にネスレに存在していたということです。それらを、さらに強化するため2017年、デジタルイノベーション&サービズ部門を設立しました。
その目的は「The New and Next(次の新しいビジネスモデル)」の創出です。そして、その仕事を私は「Operationalization(オペレーション主義)」と明確に区別しました。オペレーションは、現状に対してより良いエグゼキューションとデリバリーを考える仕事であって、イノベーションとは異なるからです。
私はウェアラブルデバイスやAR(仮想現実)、ボイス(音声)、インターネット・オブ・シングス(IoT)、センサーなど2、3年後の近未来に起きる変化について考えています。これらは、まだビジネスとしてスケールしていませんが、今後は成長していく領域だと考えています。
——デジタルイノベーション&サービズ部門で、ピートさんはどのような役割を担っているのでしょうか。
私自身は、次の4つの領域に責任を持っています。膨大な量ですが、全てエキサイティングで、とても楽しんでいますね。
1.エトレプレナーリーダシッププログラム
社内の優秀な人材をグローバル本社に集めて、8カ月の研修を行います。トレーニングを通してインスパイアし、各国に戻すという「デジタルアクセラレーションチームプログラム」です。2.シリコンバレーイノベーションアウトポスト
25人のメンバーをマネージメントしています。彼らは、ブランドの「サービスレイヤー」にフォーカスを当てて、とても速いスピードでプロトタイピングを生み出しています。3. オープンイノベーションワールド
社外とのプロジェクトになります。面白いイノベーターのアイデアを社外から集めてくるアウトソーシンシングプロジェクトです。4. 主要なデジタルパートナーとの仕事
新興のテクノロジーや、新しい可能性を常に追求していく役割です。——デジタルイノベーション&サービズ部門で一年ほど活動してきた中で、どのような変化がネスレに起きていますか。
ひとつの変化は、プログラムへの参加者が社会のコンテキスト(文脈)に対して緊迫感を持ち、その感覚が鋭くなってきたことです。小さな企業が大企業からシェアを奪っている事実を目の当たりにして、競争のプレッシャーをリアルに実感しています。
今日の世界は、新しいツールがコンシェルジュのように、ユーザーの質問に答えたり、ガイダンスしたりすることで高い価値を生みます。その実現のために強力なAI(人工知能)が必要です。そして組織も基礎構造から組み立てなければいけません。これらは大企業にとってチャレンジングなことで、我々がいま取り組んでいることです。