成長企業から考える「マーケターの定義」 #02
「戦略と戦術」のラダー構造を上下に行き来できる人材こそ、マーケターである
構造の上下を行き来できる人材になることが大切
重要なのは、このラダー構造を意識した上で、上下を行き来することだと思います。そうすることで、マーケティングを生業とする人のキャリアが、経営やクリエーターに拡大していくことになるし、経営課題をクリエイティブの力で解決するアプローチが取れる人材も増えていくことになると思います。最近、CMOやデザイン経営という言葉をよく耳にするようになっていますが、CMOを担う、もしくはデザイン経営を実行できる人材は、このラダーを上下した経験を持つ人なのだと思います。
そして、ラダーを上下する経験は、必ずしもひとつの会社の中に用意されていないので、その場合は転職することも必要になってくると思います。ひとつの会社でずっと働いている人がCMOになるというケースはあまり多くないので、色々な環境で働くことがラダーを上下していく際に重要なのかもしれません。重要なのは、自身の経験値として今どの領域が強く、どの方向に上下していくべきなのかを見極めることだと思うのです。
さて今回、マーケティングは、戦略と対の概念である戦術とのラダー構造であるためアプローチできる領域が広く概念が大きくなっている、ということを書きました。最後に、この内容に関連して、「マーケティング業務に携わっている人」と「マーケターの違い」について、僕なりの考えを述べたいと思います。
マーケターという言葉を自分なりに定義してみよう
マーケティングという広い概念をそのまま当てはめると、マーケティング業務に携わっている人は無数にいます。彼らを全員マーケターと呼べば、例えば私が働くIndeedの社員はほとんどマーケターになります。営業やクライアントのIndeedの運用サポートを行うメンバーは、企業の採用マーケティングをサポートするマーケティングコンサルタントであり、マーケターと言えます。でも、例えばコピーライターは、マーケティング活動に携わっているけど、マーケターというよりクリエイターであると思うし、デジタル広告の運用の効率化を図るためのデータ分析だけを担っている人も、マーケターと呼ぶには少し違和感があります。
僕は、戦略と戦術のラダーを上下に行き来して、マーケティング発想でアプローチできる領域を拡大している人こそが、マーケターだと思っています。たとえ、現在所属している部署が営業であろうと商品開発であろうと、戦略と戦術のラダー構造を意識し、マーケティング発想を持って日々の業務に取り組んでいる人はマーケターであり、マーケティング部に所属していても、上記に当てはまらない人はマーケティング業務に携わっているサラリーマンや職人であると思うのです。
これは、マーケターであることがいいとか、そうでないことが悪いということが言いたいわけでは全然なくて、広すぎるマーケティングという概念と、マーケターという言葉を自分なりに定義することがキャリアを積む上で重要だと思って書いてみたということです。
僕は、「マーケターとは役割ではなく職業である」ということを信じています。そして職業人であるならば、理想の姿を追い求めてその専門性を常に高める努力が必要で、その努力の方向性は、ある程度構造化された全体感の中で意識していくことが重要だと思うのです。
今回も、少し長くなってしまいましたが、執筆が楽しかったです。次回も何か描きたいテーマが見つかったら書こうと思います。それでは、また。
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