マーケティングで社会課題を解決できるか #02
プライベートな行為を慣れない環境で。医療機関での精液検査の「負」と向き合う
専門医師や関連学会の巻き込み
「Seem」は医療機器ではなく、あくまで個人で使用する簡易チェックツールですが、その測定結果はやはり重要な意味を持ちます。万が一、測定が正しく行われなかった場合、不要な受診につながったり、逆に受診の抑制になったりする恐れがあります。そこで、測定の精度を検証するため、男性不妊専門医の協力のもと大学病院で臨床試験を実施しました。また、その後のテストマーケティングでのユーザーアンケートでは、「Seem」の使用後に医療機関を受診したと回答した人が全体の3割以上に上り、男性の医療機関受診に繋がることが確認できました。日本生殖医学会からも「『Seem』が目標としている男性が主体的に参加する新しい妊活文化の実現に、大きく期待しています」と評価していただいています。
ヘルスケア領域の新規事業では、専門家や関連学会と連携しながら事業を展開していかないと、結果的にできあがったものがユーザーの不利益につながってしまうこともあります。事業のスケールやスピードはもちろん大切ですが、それ以上に正しいサービスを問題なく提供できるのかという点を重視しないといけません。
ユーザーのメリットを第一に考える
リクルートで展開する事業はクライアントとカスタマーを結びつけ、新しい機会を創出するメディアがメインでした。当然、そこではいかに価値のある「情報」を多く集めるかが事業拡大の鍵となります。ヘルスケアの領域でも情報は大きな価値を持ちますが、同時に他の領域よりもセンシティブな情報が増えていきます。「Seem」では、ユーザーメリットを第一に考え、ユーザーの個人情報は一切取得しないと決めています。もちろん、使用にあたってリクルートIDの登録も必要ありません。
事業者側としては、後々で価値に繋がりそうな情報は集めておきたいと考えがちですが、ユーザーのメリットを第一優先にし、誠意をもってビジネス設計を行うことがヘルスケアの領域では大切です。
しかし、事業を立ち上げるためには「良いサービス」であることだけでなく、ビジネスとして投資する価値を見出さないといけません。第三回では、「Seem」が妊活市場に提供する価値やリクルートで事業化を検討した際の進め方をご紹介します。
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