変革のカギを握るCxOの挑戦 #22

「ミッションを策定しない」と決めた天才エンジニア、独自の視点で築いた組織カルチャー【WED 代表取締役 山内奏人氏】

前回の記事:
15歳起業で注目を集めたレシート買い取りONE 山内奏人氏、22歳のいま考える経営戦略
 小林製薬 執行役員 CDOの石戸亮氏がマーケティング・DX・CX領域で活躍するエグゼクティブにインタビューし、その人が実績を出している裏側にある考え方を解き明かしていく連載。

 第11回は、2016年、15歳の時にWED(当時:ウォルト)を創業し、「10代の天才プログラマー」や「高校生起業家」として注目を集めた同社 代表取締役 山内奏人氏が登場する。前編では、同社のメインプロダクトお金がもらえる お買い物アプリ「ONE」 や起業のエピソード、現代のマーケティングの捉え方などについて紹介した。後編では、ビジョンやミッションを策定しない理由や創業からの7年を振り返って苦労したこと、組織のカルチャーづくりについて詳しく聞いた。
 

ビジョンやミッションではなく、「宣言」を策定


石戸 15歳のときに、創業したWEDの組織づくりにおいて意識されていることはありますか。

山内 当社は、ミッションやビジョンを策定していません。ただ、我々が本当につくりたいプロダクトを誇りを持ってつくり続けていこうという姿勢を大切にしています。

それに際して、宣言という形で言葉にしているのは「さわって楽しいものを作る。さわって楽しくないものは作らない。」です。「さわって楽しい」という言葉は、ユーザーや消費者に触って楽しんでもらうという意味もありますが、我々がつくっていて楽しいということも含まれています。これは、ぼくが起業する前から、プログラミングやプロダクト開発を通して取り組んできた姿勢を表しています。
 
WED 代表取締役
山内 奏人 氏

 2001年東京都出身。 10歳から独学でプログラミングを始め、2012年に「中高生国際Rubyプログラミング コンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞。 2016年に現・WED株式会社を創業。 2018年にお金がもらえるお買い物 アプリ「ONE」をリリースし、同年Forbes 30 Under 30 Asia 2018に二部門選出される。

石戸 そうなんですね。WEDの宣言というのは、ミッションやビジョンとどのように異なるのでしょうか。

山内 創業してWEDの「内側にあること」や「外側に向けたこと」など、さまざまなレイヤーがあることに気づいたんです。それを、ひとつのミッションやビジョンという形で伝えるのは、一点集中とは異なる我々の経営スタイルに合わないという感覚がありました。

最も内側にあるのは「あたりまえを超える」という言葉です。これは、ぼくたちの態度として、あたりまえを超えたプロダクトをきちんと出していこうということを意味します。ユーザーに対してもそれを届けたいという気持ちは当然ありますが、ユーザーからすれば、ぼくらの想いは知ったことではないんです。

そのため、それをもう少し外向けの言葉に置き換えたのが、先ほどの「さわって楽しいものを作る。さわって楽しくないものは作らない。」という宣言です。宣言にすることで、ぼくたちのことを深く知らない方々にとってもわかりやすく、自分ごと化できると思うんです。

石戸 なるほど、それは面白いですね。セオリーとしてミッションやビジョンを決めるのではなく、WEDの想いを表現するのに内側と外側で適切な言葉を選んだということですね。

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