ドラクエ的マーケターキャリア調合術 ― スキルセット×マインドセット、それとちょっぴりの「運」 #05
いよいよ転職活動の面接へ!準備と当日のポイントを解説&実際の「提出書類」も公開
人材エージェントは、ビジネスパートナーだ
意中の企業がすでに決まっている場合もそうでない場合も、人材エージェントは市場の中で募集案件として出ている企業とあなたをつなぐマッチングの役割を担っています。その先の採用や転職後のフォローアップ、そしてその次の次の転職まで、エージェントとは“ビジネス”パートナーとして長い付き合いとなりますので、存分に活用され/し合いましょう。① 人材エージェントへのオリエンテーション(ブリーフィング)
エージェントに登録して最初に行うのが「面談」です。あなたを知ってもらい、文字通り「代理人」としてパフォーマンスを発揮してもらうには、あなた自身の情報を、しっかりプライオリティを付けながら理解してもらう必要があります。面談は、面接の予行演習としても非常に有効です。エージェントは「どうして転職したいのか」「これまでどんな経験をしたのか」「どんな貢献ができるのか」など、市場におけるあなたの価値を良い意味で判断してくれる相手です。質問されたことに対し、あなたが回答に窮することがあれば、それはよいアラートです。その部分はあなた自身の中で明確にできていない部分ですので、ぜひ面談を通じて補強しましょう。
面談後、自分についてどんなイメージを持ったかなど、アドバイスを求めるのも有効です。英語の面談の場合は、英語面接の良い練習相手にもなるでしょう。
エージェントに伝えるべき主要な情報は以下のとおりです。
転職の動機と求めるもの:
転職にあたって何が一番大事なのか、何をゴールとするか(転職の理由)をしっかり伝えましょう。逆に言えば、「これが満たされない限りは転職しない」という、自分の中の基準の確認にもなります。業種と職種:
「キャリア計画シート」でまとめた、希望する業種や職種、経験、ポジション、チーム編成なども具体的なイメージとして提供します。もしすでに具体的な企業が念頭にあれば、それも伝えることで、エージェントの頭の中にある「在庫案件」とのマッチング・サーチを助けることができます(紹介される案件数が増え、質も高まる)。待遇や給与:
現在の給与だけでなく、もちろん将来希望するレンジも伝えます。待遇については給与だけでなく、副次的な報酬(ボーナス、住宅手当、供与される備品等)など金銭価値に充当されるものがあればそれも伝えますが、その条件を重視するのかしないのか、も同時にしっかり伝えます(もしプライオリティが高いなら)。ちなみに筆者の場合、これまでの転職経験では、待遇という部分にプライオリティを置いて活動したことは実は一度もありませんでした。その部分に目を向ける余裕がなかった…ということなのかもしれませんが、このコラムの冒頭で記したように「何をやりたいか」が私にとって重要だったことがその理由です。
もちろんこれは人によって、また人生のステージによって様々ですし、「何かになる」ことが目的(マネジメントポジションの経験、権限と責任を伴う)になる場合も、待遇の条件を満たすことが重要になる場合も、もちろんあります。
② 企業への応募
エージェントへの登録と面談の後は、採用を検討している企業の案件紹介となります。面談の中で紹介される場合もありますし、面談したコンサルタントが担当する業種やクライアント以外を専門分野とする他のコンサルタントにもあなたの情報は共有されますので、そこから案件を紹介してもらう場合もあります。そもそも通常業務が忙しいでしょうし、応募するまでの準備も大変にはなりますが、応募したい企業とポジションに少しでも興味があれば、躊躇せずにひとまず応募することをお勧めします。自分が市場に売りに出ていることを伝えなければ何も始まりませんし、「運」をつかむための機会を広げることにもなります。
そして何より、面接は新しい修練の機会です。面接に応じてもらった企業の採用担当から様々な情報を引き出し、市場において外部からフィードバックをもらえる貴重な場です。感謝しながらこの機会を十分に活用しましょう。
③ 応募にあたっては必ず企画書を添付しよう
人材エージェントに応募することを伝えるだけでは、職務経歴書(レジュメ)とセールスシートが送付されるだけで、あなたが採用担当者の目に留まる可能性はまだ十分ではありません。面接へ進む書類選考の確率を上げる意味でも、面接でより具体的な業務の話に持ち込むためにも、そしてさらにマーケティングスキル向上の機会として、「企業分析と、応募企業への自分ならではの企画書」の作成と送付を強くお勧めします。
企業分析:
まずは応募しようとしている企業について、エージェントから提供してもらった応募職種と職務内容(Job Description)をよく読みこんだ上で、ビジネスまたはマーケティングの課題設定から始めます。自分で自分へオリエンし、一人コンサルを行うというシミュレーションに近いもので、当然「自分の思い込み」でしかない場合もあります。ただし、Job Descriptionにはある程度企業が現在置かれているポジションや今後どういう方向にフォーカスするのか、このポジションに求められることなどが明確に記載されていますので、そこから2~3点の課題に絞り込んで分析を行います。その企業のWebサイトやコミュニケーション(広告、PR、デジタル、店舗)などを実際に確認し、店頭の販売員に商品について尋ねてみたり、キャンペーンがあれば実際に申し込んだり、CRMのメンバーシッププログラムに登録したりしながら、競合と思われる企業も含めてその業種と市場規模など含めて大体の数字も頭に入れておきます。
企画書へ落とし込んで送付:
「課題」「それに対して考えられる施策」「企画例」という形で企画書をまとめます。あくまで自分自身での一人コンサルですので、信頼できる知人・先輩など、前回記したような外部ネットワークに相談してアドバイスをもらうのも一助です(繰り返しになりますが、相手の役に立つこと、も念頭に置いてお願いしましょう)。多数の企業に応募する場合は、ここまでの準備ができないことも多いです。複数企業へ活用可能な「一般的な企画書」をテンプレートとして予めつくっておくことも有効です。例えば「デジタルシフトが課題」という場合には、店舗・EC・デジタルなどの相関関係や、有効と思われる他社事例を記載することが考えられます。また、あくまで一例として、特定業種やブランドの事例検討、という企画書にして参考資料として送付するのも有効かもしれません。
いよいよ企業との面接!
晴れて書類選考が通過すれば、いよいよ面接となります。面接はもちろん緊張する場ですが、決して「採用される」ことをゴールと思わないように。むしろ、「自分が求めるものが与えられるのか」を確認する場と捉えてほしいと思います。面接の場では、これまで準備してきたことを用いつつ、コミュニケーションでは次に挙げるようないくつかのポイントも重要です。相手のニーズにまず応える
面接に臨むまでに様々な資料を送付しているとは思いますが、まずは今日の時間を与えてもらったことに感謝の意を述べ、相手が聞きたがっていること・知りたがっていることに応えましょう。これまでの経歴を簡単に教えてほしいのか、自分の特徴を知りたいのか、基本は面接相手から質問されることから始まると思いますので、「言いたいこと」よりも「知りたがっていること」にフォーカスしながら話を進めていきます。構造化と具体例で伝える
準備が十分に行えていて、情報もたくさん取得できている場合は、ついつい質問に答え「過ぎる」ケースがあります。ダラダラと話を続けないよう、よく言われるように「ポイントは3つ」「それぞれ要するにこういうこと」「例えばこんな風に」という形で簡潔にわかりやすくまとめて伝えることで、相手に時間を有効に活用してもらうサポートができます。また、職務経歴書に記載している事例等で具体的な資料(職務規定に違反した持ち出しなどはもちろんNGです。オープンに入手できる広告など)があればイメージが湧きやすいので、「お見せしてもよろしいでしょうか」と相手に確認をとった上で提示することも可能です。
課題の話に持ち込む
自分自身について知ってもらい、興味を持ってもらうことができれば、いよいよ本題の「課題解決」についてディスカッションを行いましょう。もし面接までに課題がうまくつかめなかった場合は、担当エージェントに「何を知りたがっているか」「どんな課題認識を持っているか」など質問をして、面接までに情報を戻してもらうよう依頼することもポイントです。課題の話になれば、事前に準備した「企画書」を提示しながら、そうした課題にはこのようなアプローチが可能、過去の経験からここがポイントだと思う、自分ならこんなアイデアで検討する、そのためには他チームや上司とこんな準備が必要……など、具体的な「こと」についてキャッチボールを行います。
あくまで、意識は相手の課題ファースト。それに対して自分がどう貢献できるか、という順番です。
採用担当者への質問
「何か質問はありますか」と尋ねられたら、ぜひ上司やチームの仕事に対するアプローチ姿勢、トップダウンなのかボトムアップなのかなど、自分自身がその企業やチームでどう活かされるのかをよく確認したいところです。必要があれば、他チームへのヒアリングを申し出るなど、相手との擦り合わせの場であることを忘れないでください。企業や採用担当者によって、様々な「ニーズ」があります。課題解決の「コト」にフォーカスする場合もありますし、それよりも人格・バックグラウンド・企業文化とのフィットといった「ヒト」がプライオリティとなるケースもあります。
いずれの場合も、相手のニーズに自分がどう貢献できるかを伝え、自分自身の設定したニーズに見合うのかを確認する。「採用されることがゴールではない」ことを意識しながら、面接の機会を最大限活用したいものです。
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