「元書店員マーケター」オススメの一冊 #05

マーケターが正しく「ファクト(真の課題)」を把握するために【書評・逸見 光次郎】

マーケターは本当に「ファクト(事実)」を見ているか?

 特徴的な事柄は、悪い内容であればあるほどクローズアップされがちである。そして、誰もが注目してしまう。

 本書でも様々な事例を紐解きながら、いかに実際に起きているたくさんの良いことはニュースになっても関心を惹かず、全体から見れば数少ない悪いことの方にニュースバリューがあって、人々の関心を強く惹きつけ、その後に強い印象も残していくことを繰り返し語っている。

 ビジネスにおける課題とは、たくさんの仕事の中の特異点であるはずだ。その中でも解決すれば、全体に好影響を与える「真の課題」こそが重要である。しかしながら、社内の関心を惹きやすく、解決策が見出しやすい“わかりやすい課題”ほど、会議の題材に取り上げられていないだろうか。

 「あれは難しいからさ」「今までだって取り組んできたけど、成果が出なかったから」など言い訳をしながら、真の課題こそ見過ごしていないだろうか。評価されにくいことほど、また、パッと人の関心を惹かないことほど、取り組みにくくなる。

 その中で、顧客と商品・サービス、現場と本社、ITと運用と全社をヨコ通しで見つめる立場にあるマーケターは、現場で起きている、より具体的な事実と本社で俯瞰して分かる事実の双方をきちんと見つめて分析し、考えて真の課題に取り組んでいるだろうか。

 この本は、なぜそういう誤った知識や事実認識に陥るのか、一つひとつ丁寧に説明している。著者は医師として、人の生命と向き合うという究極の環境の中での体験すら、自らが判断を誤った事例を明示している。

 この本を読んだマーケターの誰もが「真のファクト」「真の課題」とは何かを正しく捉えられるようになることを望んでいる。
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