ドラクエ的マーケターキャリア調合術 ― スキルセット×マインドセット、それとちょっぴりの「運」 #06
キャリアを成功に導く「柔らか頭=GROWTH MINDSET」を手に入れよう【最終回 遠藤克之輔】
「GROWTH MINDSET」を6つのシチュエーションで理解
「GROWTH MINDSET」のスキルとして、6つのシチュエーションを考えてみます。
次のチャート図をご覧ください。このチャート図は、TRAIN UGLY(© 2019 /Train Ugly/A site for the learners)という企業が作成したオリジナルを、筆者が翻訳・加筆したものです。
「GROWTH MINDSET」が、物事を柔軟に捉え、学習の機会として活用して成長しようとする「柔らか頭」であるのに対し、自分をよく見せたい、努力は実を結ばない、失敗したくないと考える「FIXED MINDSET」は「コチコチ頭」ともいえます。
それぞれのシチュエーションでこの2つがどのように対照的な考え方をしているかを見ることで、「GROWTH MINDSET」の物事の捉え方がよく理解できると思います。
1 SKILLS+INTELLIGENCE(スキルや知識)
まずは「スキルや知識」。FIXEDは「自分の知識やスキルは今持っているものがすべて」と考えるのに対し、GROWTHは「知識はこれから習得するもので、スキルも発展させることができる」と考えます。GROWTHは「学びたい」という欲求がベースにあること、またそれぞれが過去(もしくは現在)と未来のどちらを向いているかという違いが分かりますね。
2 MAIN CONCERN(関心ごと、プライオリティ)
先述したように、自分が周りからどう見られているのか、結果やそれに対する評価が一番心配なFIXEDに対し、どうやったら次はもっと上手く成果を出せるか、どう学べるか、といったプロセスに最も関心があるのがGROWTHです。自分をよく見せようとする相対的な立ち位置と、そもそも自分がどうありたいかという絶対的な立ち位置の違いでもあります。
他人の成功を見てもそれを脅威には感じず、「どうやったらそんなことができるのか教えてほしい」という形で学びにつなげるのもGROWTHの特徴です。
3 EFFORT(努力や試み)
FIXEDは結果が良ければよい、周りから評価さえされればよいので、何かが上手くできなかったときに初めて努力します。GROWTHはそれとは対照的に、努力やトライは学ぶために必要不可欠なこと、すべてはここから始まるといっても過言ではないと考えています。何か新しいことにトライすることで学びを得て、そこからまた次の課題に取り組んで活かしていくサイクルが生まれます。
4 CHALLENGES(挑戦や改善)
これらを目の前にしたとき、GROWTHは喜んで受け止めます。自分の成長の機会であり、また学ぶ機会にもなるため、逆境においても粘り強く取り組み、決して諦めません。英語で「GRIT(グリット)」という言葉がありますが、強い意志や、いわゆる「ガッツ」「気概」「胆力」といったものも、GROWTHの特徴です。
一方のFIXEDは、失敗することを最も嫌がりますので、彼らにとって課題や挑戦は「一刻も早くそこから立ち去りたいもの」でしかありません。誰か他の人がやってくれればよい、自分の担当ではない、というオーナーシップの欠如にもつながる場合があります。
5 FEEDBACK(フィードバック・助言)
外資系企業、特にアメリカ系の企業の人事制度や評価制度に組み込まれているケースが多いのが、このフィードバックです。GROWTHは、周り(上司、部下、他チーム、場合によってはパートナー企業)からの助言に積極的に耳を傾けて自分の糧とする傾向が強いです。
FIXEDは、フィードバックを受けるとアレルギー反応を起こしてしまい、感情のコントロールを失ってしまうことさえあります。評価が大事なので、自分の実績を傷つけるもの、立場を危うくするものとネガティブに捉え、自分を正当化するために何とか反証・攻撃しなければと、防御モードになってしまうことも多いです。
フィードバックを評価制度に組み込むのは、使い方によっては非常にリスクが高いと言えます。ヒトではなくモノ・コトにフォーカスする、あくまで「GROWTH MINDSET」という考え方を全員が共有・理解する、プロセスの改善と学びという形で活用しないと、自分の評価のために他者を攻撃する道具にもなりかねません。マネジメントとしてこの考え方を活用する際には、十分留意して取り組む必要があります。
フィードバックは、あなた自身の話ではなく、あくまで業務についての話である。どうすれば目的をよりよく達成できるか、どうしたらもっと改善できるかを一緒に考えるためのものである。このように定義すれば、全員が学びと成長の機会として、フィードバックをポジティブに活用することができます。チーム内の透明性も、前提として確保する必要があります。
6 MISATAKE(失敗)
FIXEDは、これを最も嫌います。企業やチームがこの考え方に陥ると、そもそも失敗を避けることを最優先するため、減点主義、前例踏襲、過去の成功パターンやフレームワークから決して逸脱しない、マニュアルに頼る——といった行動様式が生まれてしまいます。
マニュアルやフレームワークは業務を仕組み化する・再現性や効率を上げる上では利点が多いですが、先行きが予測不可能な時代、テクノロジーの発展などを伴った新しい地平を開くためには、失敗は欠かせないものです。
GROWTHは、学びと成長の機会として失敗を活用します。以前、Googleなどの企業では失敗したプロジェクトがあったときに、都度チーム全員でそれを祝うパーティーを行うという話を聞いたことがあります。失敗してくれてありがとう、なぜならそこから皆が学べるから、他のプロジェクトの成功確率が上がるから、とポジティブに捉えて学ぶ機会とする、非常にユニークな捉え方ですね。