自由の毒味 #06

新年号・令和の時代、人は何を目的に働くのだろうか【加来 幸樹】

共感される理念・信念を掲げる


 有名なTEDプレゼンテーション「優れたリーダーはどうやって行動を促すか?」の中で、サイモン・シネックは「WHAT(何をやるのか?)」ではなく「WHY(なぜやるのか?)」の重要性を説きました。
 

 また、元P&G グローバル・マーケティング責任者のジム・ステンゲルは著書『GROW 本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えたトップ企業50』の中で、大義あるブランド目的を掲げる企業はそうでない企業に比べて高い成長を実現していることを明らかにしました。
 
ジム・ステンゲル氏
 このような理念・信念を掲げることの重要性は、あらゆる技術革新や価値観の多様化が進む時代の中でますます高まっていくはずです。なぜなら、高いスキルや実績を持つ希少価値の高い人材ほど、自身の様々な欲求、特にマズローの欲求で言うところの「欠乏の欲求」を満たしやすい環境が整っていくからです。

 彼らに残された欲求である「成長の欲求(自己実現の欲求)」に訴えるためには、共感される信念を掲げること、また、あたながその信念を心からの「自分の言葉」で語れるようになることが不可欠になります。
 

有益な資源を提供する


 ただし、どんなに大義ある理念・信念でも、掲げるだけでは人の気持ちを動かすことはできません。それらに基づく有益な資源を彼らに提供する必要があります。

 経営資源のわかりやすい分類としては「ヒト・モノ・カネ」がありますが、前述した通り「カネ」だけでの共感が難しくなっていきますので、より「ヒト」や「モノ」に関する価値提供が重要になってきます。

 例えば、「ヒト」に関する有益な価値としては「理念・信念を体現している魅力的な人と仕事ができること」が挙げられます。あなたが経営者であれば自分自身がそのように価値を感じられる「ヒト」になること。また、そうすることで魅力的な社員や関係人口を増やしていくことが求められます。

 さらに、「モノ」に関する有益な価値の種類としては、ワークスペースや具体的な案件、スキルアップのための参考資料など様々なものがあります。求めるパートナーの自己実現欲求を刺激する「モノ」への投資を惜しんでいては、彼らと仕事をすることは難しくなるかもしれません。

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