ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #26

「若いという理由だけで、人を安くみない」ヒットプロデューサー鈴木竜馬の人脈術

ライブから、エネルギーがもらえる


田岡  それだけいろいろなことができて、独立しようとは思われないのですか。

鈴木  もうできなくなりましたよね(笑)。

田岡  それは、なぜですか。

鈴木  うーん。でも、いつ会社を辞めてもいいとは、思っていますよ。田岡さんもご存知のように、僕は1993年にソニーミュージックに入社したけど、次の職も決まらないままに3、4年で辞めることになって、辛酸を舐めていますから。

だから、自分のポジションがいつなくなっても生きていけるように、という心構えはできています。でも、今の仕事は楽しいですし、僕は海外との仕事が好きなので、ワーナーの環境がちょうどいいんですよ。



田岡  竜馬さん、海外が大好きですもんね。

鈴木  はい。ちなみに、海外と仕事をした満足感を最初に味わわせてくれたのがきゃりーのワールドツアーでした。全てのツアーに同行したわけではないのですが、ワーナーミュージックの各国とミーティングを重ねて人脈を築けたことは財産になりました。同じグループにいても、各国の優秀なスタッフとミーティングする機会は意外と少ないんですよ。

田岡  今は1年間に何本くらいのライブを見ているのですか。

鈴木  数えていないですが、50本くらいでしょうか。

田岡  もっと多いのかと思いました、150本とか。

鈴木  いやいや、50本は週1本ですよ。それに、その中には新人発掘のためだけでなく例えば僕が責任者を務めている山下達郎さんのライブなども含まれます。達郎さんは、すべてをセルフプロデュースされるのですが、ライブは同じツアーだとしても何度見ても本当に最高です。

田岡  山下達郎さんのライブから学びもあるのですか。



鈴木  何よりもエネルギーをもらいますね。達郎さんはデビュー43年目になりますが、1ミリのミスもなく3時間半のショーをやり遂げている姿を見ると、すごく元気が出るのと同時に発破もかけられるし、そういう意味でパワーをいただきます。

ファンサービスも徹底していて、開演前には100枚くらいサインを書かれるし、公演後にも各地のメディアの方への挨拶も欠かさない。そういう姿を見ていると、こちらも頑張らないと、という気持ちにさせられますね。

田岡氏 対談を終えて
 音楽の流通やプロモーションがデジタル中心になってきたことで、アーティストが自らSNSなどでプロモーションし、流通までを手掛けるケースが出てきました。「音楽レーベルの存在意義がなくなるのでは?」という話もありますが、竜馬さんのお話をお伺いしていると、プロモーションや流通がデジタル化することにより、一人のスーパープロデューサーの力がよりレバレッジされ、少なくともプロデュース力がより重要になるんだな、と思いました。そのプロデューサーがレーベルに所属している必然性があるかは別問題ですが。

  人気アーティストを世に送り出し続けているだけあって、竜馬さんは自分の中に再現性のある方法論をお持ちで、やはりエンターテインメントコンテンツも当たるべくして当たっているんだな、と思いました。 また、竜馬さんのことを20年以上前から存じ上げていますが、いつもポジティブで男気のある人気者で、その人的ネットワークもデジタルコミュニケーション時代になって、より活きているように思います。

 年下とのコミュニケーションが重要だというお話がありましたが、私も仕事上でお付き合いする方の99%は年下になり、年下とのネットワークは日頃から意識しています。

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