「元書店員マーケター」オススメの一冊 #06
名著『ザ・ゴール』は、マーケティングに役立つ視点を提供してくれる一冊【書評・逸見 光次郎】
2019/05/01
- 書評,
ゴールシリーズの中で、著者が最も進める一冊
続刊『ザ・ゴール2』は、TOCの思考プロセス、つまり具体的な課題の明示化と解決手段の模索法について書かれている。
続く『チェンジ・ザ・ルール』ではIT導入の際に起こる問題を取り上げ、『クリティカルチェーン』ではプロジェクトの進め方について、『ザ・チョイス』では娘との会話の中で博士の各理論をやさしく解説している。さらに『ザ・クリスタルボール』では、まさに店舗・小売業の効率と利益がテーマだ。
こうした一連の著作の中でも、筆者が最も勧めたいのは『ザ・ゴール コミック版』である。日本の事例に置き換えて語られているだけではなく、小説ではイメージしきれなかった思考プロセスなどが具体的に図示されているからだ。
マンガ家に直接話を聞いたが、やはり図示する作業が一番大変でゴールドラットコンサルティングのメンバー含めて、何度も議論しながら筆を走らせたそうだ。
日本におけるマーケティングは、従来は調査部門だったり、分析部隊だったり、営業・販売の中の一要素だったり、海外に比べると、表舞台に出ることは少なかったように思う。しかし現在、マーケターは企業全体の視点で海外市場も含めてより広く消費者(顧客)を理解しようと努め、企業と消費者がともに成長する未来を模索することが求められている。
ゴールシリーズに描かれているのは、特別な内容ではなく、企業にとっては当たり前のことだ。ドラッカーはじめ他のビジネス書でも語られている内容とも重なる部分も多い。ただし、当たり前のことほど、ビジネスの中では軽視され、取り組むのが難しいとも語られている。マーケターの方々には、その制約を打ち破って、より日本を元気にして欲しいと切に願う。
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