マーケターキャリア協会 特別座談会
マーケターが幸せなキャリアを歩むために必要なことは何か?【鈴木健、富永朋信、中村全信、中野博文 座談会】
マーケティングをしていることは、幸せなこと?
中野 「マーケティングで、幸せになろうよ」というメッセージは、とても強くて人を惹きつけると思います。そのマーケティングという仕事の魅力をより多くの人に理解してもらうためには、何が必要だと考えますか。
富永 一番は、鈴木さんや私のようなベテランがいかにも大御所然とするのではなく、“子どものように楽しんでいる姿”を見せていくことが大切だと思っています。
あとは、うまくいった施策の背後には、実はマーケティングの仕組みが動いていたんだ、ということを解き明かして発信していくことも必要でしょう。マーケティングは、誰でも簡単にできると思われがちですが、人によって適性もありますし、基本的なことをきちんと理解しないと正しく機能させることはできません。
鈴木 富永さんが言う、「マーケティングの楽しさ」を伝えていくということに私も賛成ですね。やはりマーケティングをしていて楽しいと思う瞬間は、まだ誰もやったことがない仕掛けを思いついて実行して、思い通りの成果が得られたときです。
最近、楽しかったのは、ニューバランスが協賛した「名古屋ウィメンズマラソン2019」。マーケティングチームだけでなく、営業や店舗スタッフも加わり、どうすればランナーに喜んでもらえるのかを突き詰めて考えて、その結果として多くの人が集まって、商品も売れました。会社全体の気持ちがひとつになるようにリードするのも、マーケティングの役割ですよね。
幸せなキャリアに必要なのは、やりがい?給与?ポジション?
中野 マーケターの「幸せなキャリア」を分解していくと、例えば、やりがいや給与、ポジションなど、さまざまな要素があると思います。最も大事なのは何でしょうか。
富永 そうですね。例えば、自動運転の車が2種類あったとします。一つは目的地を伝えれば、自動的にそこに連れて行ってくれるもの。もう一つは、右に曲がる、スピードを出すといった操作は、人間が直観的なインターフェースでできるというもの。この場合、合理的で便利なのは前者ですよね。でも、私がどちらを好むかといえば、ドライバーに裁量がある後者です。
何が言いたいかと言うと、人は合理的なことよりも自分の意志でたくさんのことが決められる方に気持ち良さを感じるのです。これは、マーケターに限った話ではありませんが、自分のことは自分で決められると思った瞬間に、人はすごく自由になれます。なので、報酬やポジションといったことよりも、私はそちらの方が人生の大きな“ドライバー”になり得ると思うんです。
鈴木 何が人を幸せにしてくれるのか、ということですよね。今回、MCAの設立へのリアクションを見ていると、協会の名前に「キャリア」という言葉が入っていることもあって、転職支援を連想した人が多くいたようです。
私たちとしては、そういうつもりは全くなかったのだけれど、もし仕事に悩みがあって転職しなければ、マーケターが幸せになれないのであれば、その支援を考えてもいいのではないかと思います。
MCAの活動が凝り固まっているわけではないので、今後もアンケートをとるなど、マーケティングを取り巻く状況を客観的に把握しながら、私たちが考えていることと社会が求めていることのギャップを見つけていくことが大事ではないでしょうか。