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富永さんは、どうして、そんなに「モテ人材」になれたんですか?

  日本コカ・コーラ、西友、ドミノ・ピザジャパンといった名だたる企業でマーケターとして活躍してきた富永朋信さんが7月16日、AIの研究・開発を行うPreferred Networks(プリファードネットワークス)の執行役員CMO(チーフマーケティングオフィサー)に就任した。これまで在籍していたイトーヨーカ堂では、顧問に就く。なぜAI事業を行う会社に移籍したのかという背景に迫りながら、どうすれば富永さんのようにさまざまな会社から必要とされる「モテ人材」になれるのか、話を聞いた。

「富永みたいなステップもありだな」と思ってもらえれば


Preferred Networks 執行役員CMO
富永朋信
日本コダック(現コダック)、日本コカ・コーラ、ソラーレホテルズアンドリゾーツ、西友、ドミノ・ピザ・ジャパン、イトーヨーカ堂などでマーケティング関連の職務を歴任。座右の銘はたくさんあるが、今のお気に入りは「過ぎたハンサム休むに似たり」「渾身のアイデアは全てを解決する」。

——大手リテール(小売業)からAI(人工知能)の会社へと転職した理由は、何でしょうか。

 そんなに戦略的に生きているわけではないですから、たまたまご縁があったというのが一番大きな理由なんです。Preferred Networks(以下、PFN)のCFO(最高財務責任者)が元・西友で友人なんですよ。彼から話を聞くたびに「面白そうな会社だなあ」と思って。

 私はリテールでの仕事が長いでしょ。リテールは、データの宝庫。いろいろとデータを活用したいと思っていたんだけど、リソースやスキルに課題があり難しいところもあって。それがエンジニア集団であるPFNなら、いろいろと出来そうで面白そうだと思ったんです。一般的な会社で「ものをつくる」こととは、別の経験が積めそうでしょ。

——PFNにおけるCMO(チーフマーケティングオフィサー)は、具体的に何をするのでしょうか。

 社員が250人ほどのベンチャー企業なので、できることは何でもやるという感じです。ビジネスのシーズを見つけてきて商品開発をしたり、認知を拡大させたり。

 あとは、若い会社なので、チームがうまく回るように潤滑油のような役割もいいかもしれません。「CMOの役割は、経営そのものだ」と言う人もいるでしょ。会社の中で血液が滞っているところを見つけて、うまく流れるようにしたり、栄養をとってきたり、成長に貢献できることは「何でもする」という感じです。

——では、今は社内のさまざまな部門の人と打ち合わせをしているという状況ですか。

 そうそう。自分でいろいろと見つけていっては、介入してみたいな。楽しいですよ。50歳を過ぎて、なかなかこういう仕事はできないよね。

——富永さんらしいチャレンジですね。

 自分がマーケターのキャリアのひとつのショーケースになれたらいいな、と思うんです。「CMOの次は、社長しかない」というのも面白くないじゃない。

 新しいマーケターの使い方を認知してもらって「富永みたいなステップもありだな」と思ってもらえれば、皆さんのキャリアの裾野が広がるんじゃないか、と。

——昨年は、日本マクドナルドのCMOだった足立光さんが「ポケモンGO」で知られるナイアンティックに入られました。今回は、富永さんがAI企業に移られたわけですが、若い世代よりもシニアなマーケターのほうが自由にキャリア選択しているように感じます。

 そうですね。その背後にある思想は、一緒かもしれないですね。足立さんの場合もオペレーションがある程度確立している巨大企業から、アイデアの出し所がたくさんある企業にいったわけです。

 自分の信じるところに向かうことができて、それが成功するも失敗するも自分次第。だから僕たちの転職の本質は、近いところにあると思うんです。



——大事なのは「自分の信じるところに向かうことができる」ということでしょうか。

 そう、年寄りじみた話に聞こえるかもしれないけれど、いろんな企業を経験すると、会社の規模やブランドで仕事を決めることに、あまり意味を感じなくなるんですよ。

 自分の好奇心が向いている方に、直感を信じて進む方が大事なんじゃないかな。

——科学的に再現性を求めるマーケターがキャリアにおいて、「直感を大事にする」というのも面白いです。

 直感は、大事ですよ。直感に反したことは得てして、後から後悔することになりがちですから。でも、完全に行き当たりばったりかと言うと、そうではなくて。リテールで働く中でビッグデータやAIに興味を持つようになって、その延長線上に今回のオプションが出てきたというのはありますよね。
 

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