ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #32

巨大プラットフォーマーに依存しないために、「北欧、暮らしの道具店」が見いだした唯一の道

クラシコムでマンガもスタート!? IP戦略に迫る


青木 さらに別の効果も得られます。顧客とのコミュニケーションや購買を通じて「関係性」だけが資産として蓄積されても現在利用しているプラットフォームにロックインされてしまう可能性が高い。例えばコミュニケーションプラットフォームであるSNSや、販売プラットフォームであるショッピングモールなどで関係性を蓄積してもそれを他のプラットフォームに持って出ることは極めて難しいことです。

しかし魅力的なIPを持ち、それが本当にお客さまから支持されるようになれば、他のプラットフォームに持って出ても顧客が付いてきてくれることが期待できます。同じコンテンツでもコミュニケーション的なものやインフォメーション的なものに比べるとIPとしての価値が認められるコンテンツは、それぐらい強い力があると感じています。

現代のインターネットに本当の自由は存在せず、必ず何かしらのプラットフォームに依存する必要があります。その状況で、今までのように顧客と関係性だけを蓄積していたのでは、プラットフォームにロックインされたままです。



田岡 なるほど、IPに手を伸ばそうとしているのは、プラットフォームに依存しないためでもあるのですね。

青木 そうです。まだ、新しいテーゼという段階には至りませんが、「自律的に生き残るためにはIPを持つしかない」というのが私なりの解です。

実はマンガもつくっているんですよ。映画でIPづくりをするよりも、マンガや小説の方が、最初のヒットは小さいかもしれないけれどPDCAが回しやすいんです。一次著作権に近いところで試行錯誤する方が小さく試せるので。

田岡 出版社にとってマンガのビジネスが良いのは、制作コストが低く、かつ自社メディアである雑誌での掲載ゆえリスクが小さいこと。そして、コストとリスクが小さいところで実験して、当たるとテレビや映画、グッズ化など、徐々にリスクが大きいところに展開できるんですよね。

青木 そうなんですよ。先日、マンガ家さんを探すために50歳手前になって初めてオリジナル漫画の即売会に足を運びました。

田岡 青木さんが直接、マンガ家に声をかけたんですか。



青木 はい、面白そうな人に「こういう会社でこんな取り組みをしているんだけど、一緒にやるとしたら、どうですかね」という感じで。

その中でこの人と一緒につくってみたいというマンガ家さんが見つかったんです。偶然ですが、その方はもともと「北欧、暮らしの道具店」が好きで、作品もブランドイメージに合っていました。

田岡 「北欧、暮らしの道具店」でデビューですか。

青木 その準備をしています。

田岡 おもしろいですね。ライトユーザーにとっては、動画よりもマンガの方が入りやすいですよね。

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