ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #34

「北欧、暮らしの道具店」が新規事業を社内ではなく、社外スタッフと始める深い理由

青木氏が考える自身と、クラシコムの未来


田岡 次の経営者を育てるという部分は、どのようにお考えなのですか。

青木 今のこの形はおそらく私一代。期せずして、次の代に持ち越せる価値があるとしたら、多少DNAは残っているとしても、今とは違う在り方になっていると思います。

田岡 青木さんがいなくなるとすると、誰かが青木さんの代わりになるのでしょうか。それとも、青木さんが残したものを複数人で分割するような形になるのでしょうか。

青木 それは分かりません。どちらにしても今とは違うものになるでしょうし、事業体として価値があれば存続し、なければなくなるだけです。

とはいえ、会社が大きくなれば、権限を委譲していく必要が出るので、時間をかけてチューニングして、それが今の相似形になる可能性もあれば、力及ばずにそこまでは到達できない可能性もあると思います。



田岡 では、青木さんは、どのように引退されるのですか。

青木 私としては、少なくともあと20年はやりたいですね。よく、企業寿命は30年と言うじゃないですか。すでに10年ちょっとやっているので。そうじゃないと、何となく目指しているところにはたどり着けないと思うんですよね。

田岡氏 対談を終えて
 青木さんは、戦略、採用、クリエイティブなどあらゆる面について深く考えていらっしゃるため、お話を伺うといつも目から鱗が落ち、はっとさせられます。

 その思考の源泉は、自分や自社を客観視し、他者や他社との関係性や相対性を俯瞰して見ることができる力にあるのかなと思います。アンチテーゼを考える、アナロジーで考える、お客さまのOBゾーンを意識して押し付けない関係を保つなど、そういった視点から出てきていると思います。
 
 その基となっているのが、ご自身がおっしゃっていた「自分がマイノリティである」という認識にあると思います。その意識は、まさに他者との相対性や関係性の中から出てきたものでしょう。そういった俯瞰力から、同じものを見ていても、同じ情報に触れていても、独自の視点をすぐに出せることが青木さんの強みです。

 青木さんは、カンファレスで登壇やメディアで対談をよくされていらっしゃいますが、その度にテーゼの提示を受けて、アンチテーゼを考えたり、それをアナロジーで捉えたりと、非常に効率の良いアイデア創出の場となっていらっしゃるのでしょう。

■参考記事:青木さん、その他のインタビュー記事
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