「元書店員マーケター」オススメの一冊 #07

元成城石井 大久保社長の新著『AI流通革命3.0』はマーケターの上司こそ読んでほしい

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名著『ザ・ゴール』は、マーケティングに役立つ視点を提供してくれる一冊【書評・逸見 光次郎】

小売の現場と経営、コンサルの視点を持つ良書


 この本をお勧めする理由は、ただ一つ。マーケターが自分の上司に読ませてほしい内容だからだ。

 もちろん自分でも読んでほしい。書籍で紹介される各事例は、マーケターにとって興味深い内容なはずだ。ただ、おそらくその考え方は「こんなことは、わかっている」というものも多いだろう。

 しかし上司、さらにその上の経営陣にとっては、すでに“わかっている内容”では決してないと思う。たとえ、かろうじて“わかっている”部分があっても、それが“できる”という領域までつながっていない。

 この書籍『AI流通革命3.0 ビッグデータの活用で小売はもっと儲かるテキストリンク』の著者は、小売とコンサルティングに精通した大久保恒夫さんである。
 
『AI流通革命3.0』ビジネス社 大久保恒夫・著

 早稲田大学を卒業した後にイトーヨーカ堂に入社し、売場チーフと商品開発を経験。その後は、プライスウォーターハウスにてコンサルティングスキルを身に付けた後、ドラッグイレブン、成城石井、セブン&アイ・フードシステムズの社長を歴任。小売の現場や経営に加えて、コンサルタントのように事業課題を整理して解決する能力を持ち、この本にもその知見が十分に発揮されている。

 労働集約型産業である小売業は、AI(人工知能)によって人の仕事がなくなる職種だと巷では言われている。大久保さんは、それを真っ向から否定する。逆にAIによってデータをきちんと活用することで小売業は、変われると主張している。筆者もこの意見に強く同意する。

 たとえば店舗は、顧客の行動・購買情報とともに従業員の行動や業務特性もデータ化し、AIによって最適なパターンを見出すことができる。AIの不完全な部分を店舗での商品展開テストなどを組み合わせて、情報を積み重ねることで学習の精度を上げていくこともできる。AIか人かという二者択一を迫るのではなく、AIと人が協力しあっていくことの重要性を様々なケースを挙げて繰り返しわかりやすく説明している。

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