「元書店員マーケター」オススメの一冊 #07

元成城石井 大久保社長の新著『AI流通革命3.0』はマーケターの上司こそ読んでほしい

小売業が飛躍するための4つの返信と、ひとつの普遍


 第7章は、そうした内容を「AIが小売業が飛躍する、四つの変身と一つの不変」として整理している。

 四つの変身としては、

1.小売業がデータ活用業に変身する 
2.小売業が商品開発業に変身する 
3.小売業が物流業に変身する 
4.小売業が流通のリーダーに変身する 

 そして不変のものとして

5.小売業が「人間産業」であることは変わらない 

 を挙げている。AIによって作業を軽減して生み出された時間で、ライブ感やエンターテインメント性を感じられる“人間的な店舗”になるのだとしている。

 そのために「小売業の発展は、人材育成にかかっている」として、今までの本部の指示に従うだけの優秀な作業員から、人間らしさを持ってお客さまにコトを提供できる人材になる必要性を紹介する。

 その上で「データが分析できる人」「想像力を持ってお客様のニーズに合った商品を開発できる人」「商品の良さをアピールして売場で計画的に売り込むことができる人」を育てることが重要だと考えを紹介するのだ。



 こうした内容を書いている本は、他にもあると思う。その中で、なぜこの本をマーケターの上司に、そして経営陣に読ませた方が良いと思うのか。その理由は、2つある。

 ひとつは、構成だ。最初に、AIによってこれから何が起きるのか、その次に今までの歴史を踏まえた上でインターネットや流通はどう変わるのかを書いている。途中様々なケースを挙げながら、最後には「小売業が今やっておくべき10か条」として考え方から具体的なアクションまで、一連の流れで伝えていることだ。

 もうひとつは、先にも触れた大久保さんならではの経営と現場の経験によって、わかりやすく語られていることだ。

 この2つの理由により、年齢が上の世代でも、我がこと、我が視点と重ね合わせながら読むことができる。

 大久保さんを先達として仰ぐ筆者にとっては、この本の中で語られている一言一句にうなずいてしまった。それだけ説得力を持ちながらも読みやすく仕上がっている。ぜひ上司がわかってくれないと嘆く前に、自ら読み、そして自信をもって上司に、経営者にこの本を勧めてもらい、組織や戦略を変えていくきっかけにしてもらえればと思う。
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