ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #35

金なし、物なし、人なし、健康なしの独立。トランスコスモスCMO佐藤俊介のハードな起業ものがたり

前回の記事:
「北欧、暮らしの道具店」が新規事業を社内ではなく、社外スタッフと始める深い理由
 エトヴォス 取締役COO田岡敬氏が第一線で活躍するビジネスパーソンから、その人がキャリアを切り開いてきた背景やイノベーションを生み出してきた思考法を探っていく連載企画。第16回は、トランスコスモス 取締役 上席常務執行役員兼CMOの佐藤俊介氏が登場する。

 佐藤氏は、インターネット広告会社のエスワンオー、ファッションブランドのサティスファクションギャランティード、ソーシャルメディアの解析ツールを提供するソーシャルギアなど、さまざまな企業を設立。現在は、ベンチャー企業と大企業、双方の経営に携わっている。そんな佐藤氏に、これまでのキャリアを振り返ってもらいながら、成功する起業のポイント、BtoB企業のCMOの役割などについて聞いた。
 

起業にも、インターネットにも興味さえなかった


田岡 佐藤さんは、これまで会社を複数設立されています。もともと起業家になろうと思っていたのですか。

佐藤 いえ、僕は学生時代、あまり自分の意思を持たないタイプでした。日本大学の建築学科に通っていましたが、そこも両親の意見に流されて入学していたので、いざ就職することになっても建築方面にいくのか迷っていたんです。

そんなとき、たまたま友人が広告の仕事が面白そうだと言っていたので、自分も広告業界を志望するようになったんです。
佐藤 俊介氏
トランスコスモス
取締役 上席常務執行役員兼CMO

2001年、日本大学理工学部建築学科卒業。2006年にエスワンオーを創業。2010年よりファッションブランドsatisfaction guaranteed設立のためシンガポールに事業拠点を移した。2011年、エスワンオーインタラクティブをオプトホールディングに売却。2016年、ソーシャルギアをトランスコスモスに売却し、取締役CMOに就任。2017年に俳優の山田孝之と一緒にミーアンドスターズを設立、代表取締役社長兼CEOに就任。

田岡 起業することは、まったくイメージしていなかったのですか。

佐藤 はい、明確なイメージはなかったです。あとインターネットにも興味がなくて、当時は電通に入りたいと思っていました。

田岡 最大手だからですか。
田岡敬氏
エトヴォス 取締役 COO(最高執行責任者)

リクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。

佐藤 なんかカッコ良かったんですよね(笑)。大学で建築デザインを勉強していたため、同じクリエイティブ領域ということで、コピーライターを志望しました。ただ、電通は筆記試験で落ちて、博報堂やADK、大広、読売広告社など、いわゆる大手の広告会社も受けましたが、全て落ちました。

次に、葵プロモーション(現AOI Pro.)や太陽企画などの広告制作会社も受けましたが、こちらも全部落ちて。

結局、4年生の秋になっても一社も決まらず、「広告 新卒」で検索して出てきたのが、通年採用をしていたインターネット広告会社だけでした。そして入社できたのが、当時ネット広告配信事業をしていて、初めて新卒採用を開始したバリュークリックでした。

田岡 当時のインターネット広告会社には、コピーライターの仕事はなかったですよね。

佐藤 はい、WEBデザイナーの仕事もなかったので営業職としての採用でした。しかも生意気だったので、周囲の人たちから嫌われてしまって。会長をはじめ社長、取締役、部長などにも煙たがれて、入社半年ぐらいは孤立していました。

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